ABMでコンテンツが成果につながらない根本原因
コンテンツマーケティングとABMの組み合わせの答えは明確で、ABMでコンテンツを活用するには、ターゲット企業の課題・検討段階に合わせたパーソナライズ設計と、それを一貫して実行する仕組みが必要であり、この2つを整備することで商談化率・成約率を高められます。
ABM(アカウントベースドマーケティング) とは、特定のターゲット企業を「1つの市場」として捉え、パーソナライズされたアプローチを集中投入するBtoBマーケティング戦略です。2025年の調査によると、日本のBtoB企業でABM認知度は42.0%に達しており、ABM実施企業のうちターゲット特化コンテンツ作成を行っている企業は58.4%と報告されています。
しかし、ABMを導入してもコンテンツが「刺さらない」という悩みを抱える企業は少なくありません。この背景には、パーソナライズ設計の不備と、一貫した実行の仕組みが欠けていることがあります。
この記事で分かること
- ABMにおけるコンテンツの役割と従来のコンテンツマーケティングとの違い
- 従来コンテンツをそのまま使う失敗パターンとその回避方法
- ターゲット企業の検討段階に応じたコンテンツ設計方法と対応表
- ABMコンテンツの一貫性を保つ仕組みとチェックリスト
ABMとコンテンツマーケティングの関係|基本を整理する
ABMは特定のターゲット企業に集中してアプローチする戦略であり、コンテンツマーケティングはその重要な実行手段の一つです。両者を組み合わせることで、ターゲット企業の意思決定者に直接響くコンテンツを届けることができます。
リードベースドマーケティングは、不特定多数の見込み客に広くアプローチする従来型マーケティング手法で、ABMの対比概念として理解されています。リードベースドマーケティングでは「量」を重視しますが、ABMではLTV(顧客生涯価値) が高い特定のアカウント(ターゲット企業・組織)に対して「質」を重視したアプローチを行います。
グローバル市場では、ABM市場規模は2025年に10億3,000万米ドル、2030年には18億3,000万米ドルに達する見込みとされています(ただしグローバル市場予測であり、日本市場に特化したデータではありません)。
ABMにおけるコンテンツの役割とは
ABMにおけるコンテンツは、従来のリード獲得向けコンテンツとは異なる役割を担います。パーソナライズドコンテンツとは、ターゲット企業の課題・関心事に合わせてカスタマイズされたコンテンツであり、ABMの中核施策です。
従来のコンテンツマーケティングでは、広く見込み客を集めるために「業界全体に共通する課題」を扱うことが一般的です。一方、ABMでは「この企業が抱えている特定の課題」に焦点を当て、その企業の意思決定者が「自分のための情報だ」と感じるコンテンツを提供します。
この違いを理解せずに、従来のコンテンツをそのままABMに転用すると、成果につながりにくくなります。
従来コンテンツをそのまま使う失敗パターン
ABMを導入したにもかかわらず成果が出ない企業に共通する失敗パターンは、従来のリード獲得向けコンテンツをそのままターゲット企業に配信してしまうことです。これでは「パーソナライズされていない一般的な情報」と受け取られ、反応が得られません。
この失敗パターンに陥る原因として、以下のようなケースがあります。
- ABMツールを導入したが、配信するコンテンツは従来と同じまま
- ターゲット企業のリストは作成したが、各企業の課題を把握していない
- 「ABM向け」と銘打っているが、実態は業界別テンプレートの使い回し
- コンテンツ制作のリソースが足りず、既存コンテンツで代用している
2025年の調査によると、ABM実施企業のうち成果を実感している企業は76.4%(非常に32.6%+やや43.8%)と報告されています(ただし自己申告ベースの調査であり、客観的な成果測定ではありません)。逆に言えば、一定数の企業は成果を実感できていないということです。
成果を実感できていない企業の多くは、このような「パーソナライズの欠如」が原因であることが多いと考えられます。ABMで成果を出すには、ターゲット企業ごとにコンテンツを設計し直す姿勢が必要です。
ABM向けコンテンツの設計方法
ABM向けコンテンツを設計するには、ターゲット企業の検討段階に応じて適切なコンテンツタイプを選択することが重要です。
2025年の調査によると、ABM実施企業のうち業界特化ウェビナー・セミナー開催は51.7%、役職者向けウェビナー・セミナー開催は41.6%の企業が実施しています。これらのコンテンツは、ターゲット企業に「自分向けの情報だ」と感じさせやすいという特徴があります。
以下の対応表を参考に、ターゲット企業の検討段階に応じたコンテンツを設計してください。
【比較表】ターゲット企業の検討段階×コンテンツタイプ対応表
| 検討段階 | 目的 | 推奨コンテンツタイプ | ポイント |
|---|---|---|---|
| 認知 | 課題の気づきを与える | 業界レポート、トレンド解説記事 | ターゲット業界に特化した内容にする |
| 興味 | 解決策の方向性を示す | 業界特化ウェビナー、ホワイトペーパー | 具体的な課題解決の切り口を提示 |
| 検討 | 自社ソリューションの価値を伝える | 導入事例、ケーススタディ、役職者向けウェビナー | 同業界・同規模の事例を優先 |
| 決定 | 導入への最終後押し | ROI試算資料、個別提案書、デモ動画 | ターゲット企業固有の状況に合わせてカスタマイズ |
この対応表を活用する際は、ターゲット企業がどの検討段階にいるかを把握することが前提となります。MAツールやSFAと連携して、企業ごとの行動履歴を追跡することで、適切な段階判定が可能になります。
ABMコンテンツの一貫性を保つ仕組み作り
パーソナライズしたコンテンツを一度作って終わりではなく、一貫して実行し続けるための仕組みが必要です。仕組み化により、担当者が変わっても品質を維持でき、効果測定と改善のサイクルを回せるようになります。
2025年の調査によると、ABMの具体的成果として、ブランド価値・信頼性獲得54.4%、案件単価・受注金額の上昇51.5%、複数部署や関連会社の開拓51.5%が挙げられています(ただし自己申告ベースの数値であり、客観的な効果測定ではありません)。
これらの成果を得るためには、以下のような仕組みを整備することが推奨されます。
- ターゲット企業リストと各企業の課題を一元管理するデータベース
- 検討段階に応じたコンテンツ配信のルール化
- MAツールとSFAの連携による効果測定(訪問・ダウンロード・開封率等)
- コンテンツ制作のテンプレートとチェックリスト
以下のチェックリストを使って、自社のABMコンテンツ戦略を点検してください。
【チェックリスト】ABM向けコンテンツ設計チェックリスト
- ターゲット企業リストを作成し、優先順位を付けている
- 各ターゲット企業の業界・規模・課題を把握している
- ターゲット企業の意思決定者・影響者を特定している
- 各企業の検討段階(認知・興味・検討・決定)を把握している
- 検討段階に応じたコンテンツタイプを選定している
- コンテンツはターゲット企業の課題に合わせてカスタマイズしている
- 業界特化のウェビナーやホワイトペーパーを用意している
- 同業界・同規模の導入事例を準備している
- MAツールでコンテンツの効果(閲覧・ダウンロード・反応)を測定している
- SFAと連携して営業活動との整合性を確認している
- コンテンツ制作のテンプレートを整備している
- 定期的にコンテンツの効果を振り返り、改善している
- 全記事・コンテンツで「誰に・何を・なぜ」が一貫している
- チーム内でターゲット企業の情報を共有する仕組みがある
- 新しいターゲット企業が追加された際のコンテンツ設計フローがある
まとめ|パーソナライズと仕組み化がABMコンテンツ成功の鍵
ABMにおけるコンテンツマーケティングで成果を出すためのポイントを整理します。
まず、従来のリード獲得向けコンテンツをそのままABMに転用することは避けるべきです。ターゲット企業に「自分のための情報だ」と感じてもらうためには、各企業の課題・検討段階に合わせたパーソナライズが不可欠です。
次に、パーソナライズしたコンテンツを一貫して実行するための仕組みを整備することが重要です。ターゲット企業の情報を一元管理し、検討段階に応じたコンテンツ配信をルール化し、効果測定と改善のサイクルを回せる体制を構築しましょう。
本記事で紹介した対応表とチェックリストを活用して、自社のABMコンテンツ戦略を設計・点検してみてください。
ABMでコンテンツを活用するには、ターゲット企業の課題・検討段階に合わせたパーソナライズ設計と、それを一貫して実行する仕組みが必要であり、この2つを整備することで商談化率・成約率を高められます。
