記事作成で著作権トラブルを避けるために知っておくべきこと
記事作成時の著作権トラブルを避けるには、引用の4要件(出所明示・主従関係・必然性・改変禁止)を理解し、公開前に著作権チェックを行う体制を整えることが必要です。「少しだけなら大丈夫」「出典を書けば何でも引用できる」といった誤解から、知らないうちに著作権侵害を犯してしまうケースは少なくありません。
この記事で分かること
- 著作権・著作物の基本と、記事で扱う素材が著作物に該当するかの判断基準
- 適法な引用の要件と、出所明示の正しい書き方
- 引用・参照・リンクの使い分け判断基準
- 記事公開前に使える著作権チェックリスト
コンテンツマーケティングにおいて、他社の情報を引用・参照する機会は多くあります。日本のコンテンツのインターネット上海賊版被害額は、推計によると2022年で約2兆円に達しているとされています(2019年比約5倍、ゲーム・音楽・出版・映像を含む全コンテンツの推計値)。意図せず著作権侵害を起こさないためにも、正しい知識とチェック体制の構築が重要です。
著作権・著作物の基本を理解する
記事作成時に著作権を意識するためには、まず「何が著作物にあたるか」を理解する必要があります。著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したもので、文芸、学術、美術又は音楽の分野に属するものを指します(著作権法第2条)。
著作権は、著作物を創作した時点で自動的に発生します。登録や申請は不要です。著作権者は、その著作物を独占的に利用できる権利を持ちます。
複製権とは、著作物を印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製する権利です。記事作成で他社のコンテンツをコピー&ペーストする行為は、この複製権に関わります。
また、著作者人格権は、公表権・氏名表示権・同一性保持権からなる、著作者の人格的利益を保護する権利です。この権利は譲渡できないため、著作権を購入しても著作者人格権は元の著作者に残ります。著作物を改変して利用する場合は、同一性保持権に注意が必要です。
著作物に該当するもの・しないもの
記事作成で使う素材が著作物に該当するかどうかの判断は、「創作性があるか」がポイントになります。
著作物に該当するもの
- 文章・記事・ブログ記事
- 写真・イラスト・図表・グラフ(創作性のあるもの)
- 動画・音声コンテンツ
- プレゼンテーション資料
- Webサイトのデザイン・レイアウト(創作性のあるもの)
著作物に該当しないもの
- 単なるデータ・事実・統計数値
- アイデア・概念・理論
- ありふれた表現・定型文
- 法令・通達・判決文
- 時事の報道(事実の伝達にとどまるもの)
例えば、「2024年の国内SaaS市場規模は1兆円」という事実自体は著作物ではありませんが、その事実を独自の切り口で分析・解説した記事は著作物となります。
適法な引用の要件|これを満たさないと著作権侵害になる
適法な引用には5つの要件があります。公表された著作物であること、公正な慣行に合致すること、目的上正当な範囲内であること、明瞭な区別がなされていること、そして主従関係が明確であることです。これらの要件を一つでも満たさない場合、著作権侵害となる可能性があります。
引用(著作権法第32条) とは、公表された著作物を公正な慣行に合致し、報道・批評・研究等の目的上正当な範囲内で利用することを指します。
よくある誤解を否定しておきます。「少しだけなら大丈夫」「出典を書けば何でも引用できる」という考え方は誤りです。引用の正当性は量だけでは決まらず、要件を満たしているかどうかで判断されます。出典を明記しても、主従関係や必然性がなければ適法な引用とは認められません。
引用の実務目安として、引用部分は全体の10〜20%程度が推奨されるとされています。ただし、これは法的拘束力のない目安であり、重要なのは量よりも引用の要件を満たしているかどうかです。
出所明示の正しい書き方
出所明示は著作権法第48条で定められた法的義務です。引用を行う場合は、必ず出典を明記する必要があります。
出所明示に含めるべき情報
- 著作者名(著者名・執筆者名)
- 著作物のタイトル
- 出版社・Webサイト名
- URL(Webコンテンツの場合)
- 公開日・アクセス日(Webコンテンツの場合)
記載例
「〇〇について、△△氏は『□□□□□』と述べている」 出典:△△太郎『○○の教科書』(○○出版、2024年)p.45
「〇〇について、△△氏は『□□□□□』と述べている」 出典:△△太郎「○○について」『Webメディア名』(2024年1月1日公開) https://example.com/article/
主従関係と必然性の判断基準
引用における「主従関係」とは、自分の文章が「主」であり、引用部分が「従」であるという関係のことです。引用部分が記事の大部分を占めてしまうと、主従関係が逆転し、適法な引用とは認められません。
主従関係が適切な例
BtoBマーケティングにおけるコンテンツの重要性について、○○氏は「□□□□」と指摘している。この見解に基づくと、当社の取り組みでは以下の点を改善すべきだと考えられます。(自分の分析が続く)
主従関係が不適切な例
○○氏によると「□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□」とのことです。また「△△△△△△△△△△△△△△」とも述べています。(引用だけで終わり、自分の見解がない)
「必然性」とは、引用しなければ説明できない、あるいは引用することで議論の説得力が高まるという関係性のことです。「参考になりそうだから」という理由だけでは、引用の必然性があるとは言えません。
引用・参照・リンクの使い分け判断基準
引用・参照・リンクは、それぞれ著作権リスクが異なります。目的に応じて適切に使い分けることで、著作権リスクを最小化できます。
【比較表】引用・参照・リンクの使い分け判断表
| 方法 | 定義 | 著作権リスク | 使用場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 引用 | 原文をそのまま掲載する | 高 | 専門家の見解を正確に伝えたい時、批評・論評の対象とする時 | 引用の5要件を全て満たす必要がある |
| 参照 | 内容を自分の言葉で要約する | 中 | 情報を参考にして自分の文章を書く時 | 出典明記が望ましい、表現が類似しすぎないよう注意 |
| リンク | URLで元ページに誘導する | 低 | 詳細は元ページで確認してもらいたい時 | リンク先の内容に責任は持てないが、不正サイトへの誘導は避ける |
| 一次情報の記載 | 自社データや独自調査を使用 | なし | 自社の知見・経験を伝える時 | 最も著作権リスクが低い方法 |
判断のポイント
- 正確な表現が必要な場合 → 引用
- 概要を伝えれば十分な場合 → 参照または要約
- 詳細は読者に判断してもらいたい場合 → リンク
- 可能な限り → 一次情報(自社データ・独自調査)を活用
記事公開前の著作権チェックフロー
記事を公開する前に、著作権侵害のリスクがないかを確認する仕組みを整備することが重要です。以下のチェックリストを活用して、公開前の確認を習慣化しましょう。
【チェックリスト】記事公開前の著作権チェックリスト
- 使用している画像・イラストの権利を確認した(フリー素材の利用規約含む)
- 引用部分が全体の10〜20%以内に収まっている(目安)
- 引用部分は引用符・枠線・引用タグ等で視覚的に区別されている
- 全ての引用に出所明示(著作者名・タイトル・URL等)がある
- 自分の文章が「主」、引用部分が「従」の関係になっている
- 引用する必然性がある(なぜその引用が必要か説明できる)
- 引用元の文章を改変していない(要約の場合は引用ではなく参照扱い)
- 引用元は公表された著作物である(非公開・社外秘の情報を使用していない)
- AI生成コンテンツを使用している場合、既存著作物との類似性を確認した
- 判断に迷う箇所について、権利者への事前許諾を検討した
- 社内の承認フローを経て公開する体制が整っている
依拠性とは、著作権侵害の要件の一つで、既存の著作物に基づいて創作したかどうかの判断基準です。AI生成コンテンツを利用する場合は、AIが学習データに含まれる既存著作物に依拠している可能性があるため、類似性のチェックが必要です。
なお、2026年4月1日施行予定の未管理著作物裁定制度により、権利者不明の昔の写真・イラスト・書籍を最大3年間利用可能になる見込みです。施行後は文化庁への申請で利用許諾を得られるようになりますが、現時点では制度の詳細を確認の上、活用を検討してください。
画像・イラスト利用時の注意点
記事で画像やイラストを使用する機会は多くありますが、著作権侵害が発生しやすい領域でもあります。
フリー素材サイト利用時の確認事項
- 商用利用が可能か
- クレジット表記が必要か
- 加工・編集が許可されているか
- 利用規約の変更に注意(ダウンロード時の規約を保存しておく)
権利者不明の画像への対応
権利者が不明な古い写真やイラストについては、前述の未管理著作物裁定制度(2026年4月施行予定)の活用が見込まれます。現時点では、権利者への許諾確認を優先するか、代替のフリー素材を使用することをお勧めします。
まとめ:著作権チェックを仕組み化して安全にコンテンツを公開する
本記事では、記事作成時の著作権注意点について、引用の要件から公開前チェックリストまで解説しました。
著作権トラブルを避けるポイントは以下の通りです。
- 著作物の定義を理解する:創作性のある表現は著作物、データや事実は著作物ではない
- 引用の5要件を満たす:公表された著作物、公正な慣行、正当な範囲、明瞭な区別、主従関係
- 出所明示は法的義務:著作者名・タイトル・URL等を必ず記載
- 引用・参照・リンクを使い分ける:目的に応じて適切な方法を選択
- 公開前チェックを習慣化する:チェックリストを活用して確認を仕組み化
記事作成時の著作権トラブルを避けるには、引用の4要件(出所明示・主従関係・必然性・改変禁止)を理解し、公開前に著作権チェックを行う体制を整えることが必要です。判断に迷う場合は、権利者への事前許諾を求めることが最も確実なリスク回避策となります。本記事のチェックリストと判断表を活用し、安全にコンテンツを公開していきましょう。
