なぜ記事の効果測定は「PV・検索順位だけ」では不十分なのか
実は、記事の成果測定は、PV・検索順位だけでなく、戦略(誰に・何を・なぜ)との整合性と商談化・受注への貢献を指標に設定し、一貫した基準で評価する仕組みを持つことが重要です。
「記事を定期的に公開してPVは増えているのに、なかなか商談や受注につながらない」——こうした悩みを抱えているBtoB企業のマーケティング担当者は少なくありません。2025年の調査によると、BtoB企業の48.6%が「リードの質で理想通りの獲得ができていない」と回答しており、2024年比で7.6ポイント増加しています。
記事コンテンツへの投資が増える一方で、その効果を正しく測定できていない企業が増えているのが現状です。PVや検索順位が上がっていても、それが本当にビジネス成果につながっているかどうかは別の話です。
この記事で分かること
- 記事効果測定に使う主要指標(KGI・KPI)の基本と選び方
- プロセス指標と成果指標の違いと、なぜ成果指標が重要なのか
- 商談化・受注につなげる「戦略連動型」効果測定の設計方法
- 明日から実践できる成果測定のステップとチェックリスト
記事効果測定に使う主要指標(KGI・KPI)の基本
記事の効果測定を正しく行うには、まず指標の種類と役割を理解することが出発点です。ここでは、BtoB記事の効果測定で押さえておくべき基本的な指標を整理します。
KGI(重要目標達成指標) とは、Key Goal Indicatorの略で、事業の最終目標を定量化した指標です。受注数や売上など、経営目標を起点に設定します。記事の効果測定においては「記事経由で獲得した受注数」「記事経由の売上額」などがKGIに該当します。
KPI(重要業績評価指標) とは、Key Performance Indicatorの略で、KGI達成に向けた中間指標です。リード数、商談化率、CVRなどを設定します。KGIを達成するために、どの中間地点をどの程度クリアする必要があるかを明確にする役割を持ちます。
CVR(コンバージョン率) とは、Conversion Rateの略で、サイト訪問者のうち、資料請求や問い合わせなど目標行動に至った割合を指します。記事の効果測定では、記事閲覧者のうち何%がコンバージョンに至ったかを見る指標として使われます。
MQL(マーケティング適格リード) とは、Marketing Qualified Leadの略で、マーケティング活動で獲得した見込み客のうち、営業対象として適格と判断されたリードを指します。記事経由で獲得したリードのうち、実際に営業がアプローチすべき質の高いリードがどれだけあるかを測る指標です。
これらの指標を理解したうえで重要なのは、KGIから逆算してKPIを設定するという考え方です。たとえば、「年間受注100件」というKGIがあるなら、自社の受注率から逆算して「商談数○件」「MQL数○件」といったKPIを設定します。
プロセス指標と成果指標の違い
指標は大きく「プロセス指標」と「成果指標」の2種類に分けられます。
プロセス指標とは、成果に至るまでの途中経過を測る指標です。PV(ページビュー)、セッション数、検索順位、滞在時間、直帰率などが該当します。記事が読まれているか、見つけられているかを把握するための指標です。
成果指標とは、ビジネス成果に直結する指標です。リード獲得数、MQL数、商談化率、受注数、受注金額などが該当します。記事がビジネスにどれだけ貢献しているかを測る指標です。
この区分を理解することが、効果測定の精度を上げる第一歩となります。
プロセス指標と成果指標の比較と選び方
適切な効果測定を行うには、プロセス指標と成果指標の違いを理解し、それぞれを目的に応じて使い分けることが重要です。
よくある失敗パターンとして、PV・検索順位・セッション数などのプロセス指標だけを追い、「アクセスは増えているから効果が出ている」と判断してしまうケースがあります。この考え方では、商談や受注につながらない記事を量産し続ける結果になりやすいのです。
調査によると、BtoBマーケティング施策のROIで「受注金額」まで追跡する企業は30.2%のみであり、70%以上がExcel等の表計算で測定しているという結果が報告されています。多くの企業がプロセス指標にとどまり、成果指標まで追跡できていない現状がうかがえます。
【比較表】記事効果測定の指標比較表(プロセス指標vs成果指標)
| 分類 | 指標名 | 測定内容 | 用途 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| プロセス指標 | PV(ページビュー) | 記事の閲覧回数 | 記事の露出・認知度を把握 | 数が多くても成果とは限らない |
| プロセス指標 | 検索順位 | 特定キーワードでの順位 | SEO施策の進捗確認 | 順位が上がっても流入・成果とは別 |
| プロセス指標 | セッション数 | サイト訪問回数 | サイト全体の集客力を把握 | 質の高い訪問かは不明 |
| プロセス指標 | 滞在時間 | 記事の閲覧時間 | 記事の読了度を推測 | 長いから良いとは限らない |
| プロセス指標 | 直帰率 | 1ページで離脱した割合 | 記事の導線設計を評価 | 情報が完結していれば高くても問題ない |
| 成果指標 | CVR(コンバージョン率) | 訪問者のうちCV達成した割合 | 記事の誘導力を評価 | 母数(PV)が少ないと変動しやすい |
| 成果指標 | リード獲得数 | 資料請求・問い合わせ数 | 記事の商談創出貢献を把握 | 質の評価は別途必要 |
| 成果指標 | MQL数 | 営業適格と判断されたリード数 | 質の高いリード獲得を評価 | 定義の明確化が前提 |
| 成果指標 | 商談化率 | リードから商談に至った割合 | 営業連携の効果を評価 | 営業プロセスの影響も受ける |
| 成果指標 | 受注数・受注金額 | 記事経由の成約件数・金額 | 最終的なビジネス貢献を評価 | アトリビューションの設計が必要 |
この比較表を参考に、自社の目的に合った指標を選定してください。プロセス指標だけでなく、成果指標を必ず含めることがポイントです。
LTV(顧客生涯価値) とは、Lifetime Valueの略で、一人の顧客が取引開始から終了までにもたらす総利益を指します。BtoBでは取引期間が長期にわたることが多く、単発の受注金額だけでなくLTVを意識した効果測定も重要です。
指標選定の判断基準
指標を選ぶ際は、事業フェーズや目的によって優先すべき指標が変わります。
認知拡大フェーズでは、まずPVやセッション数などのプロセス指標で記事の露出状況を把握します。ただし、これだけで「効果が出ている」と判断しないことが重要です。
リード獲得フェーズでは、CVRやリード獲得数を重視します。PVが増えてもCVにつながっていなければ、記事の内容や導線に課題がある可能性があります。
商談・受注フェーズでは、MQL数、商談化率、受注数・受注金額を追跡します。最終的なビジネス成果に直結する指標であり、ここまで追跡できて初めて記事の真の効果が測定できます。
商談化・受注につなげる効果測定の設計方法
効果測定を「戦略連動型」で設計することが、記事から商談・受注を生み出す鍵です。ここでは、具体的な設計方法を解説します。
調査によると、リードの質で理想通り獲得できていない主な理由として「施策がターゲットに刺さっていない」が38.5%、「コンテンツの質が低い」が28.8%(2024年比11.7ポイント増)と報告されています。つまり、記事を作る前の戦略設計と、その戦略に基づいた効果測定ができていないことが、成果が出ない根本原因です。
戦略連動型の効果測定とは、「誰に(ターゲット)」「何を(提供価値)」「なぜ(課題解決)」という記事戦略と、効果測定の指標を連動させる方法です。
具体的には、以下のステップで設計します。
ステップ1:KGIを明確にする
記事施策で達成したい最終目標を数値で設定します。「記事経由での年間受注○件」「記事経由の売上○円」など、ビジネス成果に直結する目標です。
ステップ2:KGIから逆算してKPIを設定する
自社の過去実績や業界平均を参考に、KGI達成に必要なKPIを逆算します。受注率、商談化率、CVRなどを使って、「受注○件を達成するには商談○件、そのためにはMQL○件、CVR○%で必要なPVは○」という形で積み上げます。
ステップ3:戦略との整合性を評価する指標を設定する
単に数値を追うだけでなく、「狙ったターゲットからのリードか」「意図した課題を持つリードか」といった質の評価指標も設定します。MQLの定義を明確にし、「自社のターゲットペルソナに合致するか」を判定基準に含めます。
ファネル全体を追跡する体制づくり
効果測定を正しく行うには、記事閲覧から受注までの一連の流れ(ファネル)を追跡できる体制が必要です。
調査によると、BtoBマーケティング施策のROIで「受注金額」まで追跡する企業は30.2%のみであり、70%以上がExcel等の表計算で測定しています。Excel管理では、記事閲覧→リード獲得→商談化→受注という流れの中で、どの記事がどの成果に貢献したかを追跡することが困難です。
体制づくりのポイントは以下の通りです。
- アクセス解析ツールでPV・CVRを測定する
- MAツール(マーケティングオートメーション)でリードの行動履歴を追跡する
- CRM(顧客管理システム)で商談・受注までの情報を管理する
- 上記を連携させ、「どの記事からのリードがどの商談・受注につながったか」を一貫して追跡できるようにする
まずは追跡すべき指標と、その測定方法を明確にすることが先決です。ツール導入は手段であり、目的ではありません。
記事の成果測定を実践するステップと確認項目
実際に成果測定を始めるための具体的なステップとチェックリストを紹介します。明日から実践できる内容です。
実践ステップ1:現状の指標を棚卸しする
現在どのような指標を測定しているか、その指標で「何が分かるか」「何が分からないか」を整理します。
実践ステップ2:KGI・KPIを設定する
事業目標から逆算して、記事施策のKGIとKPIを設定します。
実践ステップ3:測定・追跡の仕組みを整える
設定した指標を測定できるよう、ツールや管理方法を整備します。
実践ステップ4:定期的にレビューする
週次・月次・四半期のサイクルでレビューを行い、改善につなげます。
【チェックリスト】記事成果測定チェックリスト
- KGI(最終目標)が数値で明確に設定されている
- KPIがKGIから逆算して設定されている
- プロセス指標だけでなく成果指標が含まれている
- MQLの定義(どのようなリードを営業適格とするか)が明確である
- 記事ごとのPV・CVRを測定できる仕組みがある
- リード獲得からの流入経路(どの記事から来たか)を追跡できる
- 商談化・受注までの追跡ができる(または追跡計画がある)
- 週次レビューで短期的な進捗を確認している
- 月次レビューでKPIの達成状況を確認している
- 四半期レビューでKPI自体の妥当性を見直している
- プロセス指標だけで「効果が出ている」と判断していない
- 戦略(誰に・何を・なぜ)と指標が連動している
- 記事の質の評価(ターゲットに刺さっているか)を行っている
- 改善アクションを指標に基づいて決定している
- 効果測定の結果を関係者で共有している
このチェックリストを活用して、自社の効果測定の現状を点検し、不足している項目から改善に着手してください。
短期レビューと中長期レビューの使い分け
効果測定のレビューは、頻度によって確認する内容を変えることが重要です。
週次レビュー(短期進捗確認) では、PVやCVRなどの即時性のある指標を確認します。急激な変動がないか、公開した記事の初動はどうかといった短期的な状況把握が目的です。
月次レビュー(KPI達成状況確認) では、リード獲得数やMQL数、商談化率などのKPI達成状況を確認します。目標に対する進捗を把握し、必要に応じて施策の調整を行います。
四半期・半期レビュー(KPI妥当性評価) では、設定したKPI自体が適切かを見直します。市場環境の変化、事業目標の変更、過去の実績に基づいて、指標や目標値を調整します。
まとめ:「戦略連動型」の効果測定で記事の真の成果を可視化する
記事の効果測定について、基本的な指標の理解から実践的な設計方法まで解説しました。
本記事の要点
- プロセス指標(PV・検索順位)だけでなく、成果指標(CVR・商談化率・受注数)を必ず含めて効果測定を設計する
- KGIから逆算してKPIを設定し、戦略(誰に・何を・なぜ)と連動させることで、商談・受注につながる効果測定が可能になる
- 週次・月次・四半期のサイクルでレビューを行い、指標に基づいた改善を継続する
次のアクションとして、まず現状の効果測定で使っている指標を棚卸しし、成果指標が含まれているかを確認することをお勧めします。プロセス指標だけになっていた場合は、本記事のチェックリストを参考に、成果指標の追加と測定体制の整備に着手してください。
記事の成果測定は、PV・検索順位だけでなく、戦略との整合性と商談化・受注への貢献を指標に設定し、一貫した基準で評価する仕組みを持つことが重要です。この考え方を取り入れることで、「記事を作っているのに成果が出ない」という状況から脱却し、記事コンテンツの真の成果を可視化できるようになります。
