ABMを始める前に知っておくべきこと
BtoB ABMで成功するには、ターゲット企業の選定だけでなく、その企業向けのコンテンツ・メッセージを一貫させる戦略を設計し、営業との連携体制を構築することが成功の鍵です。
ABM(アカウントベースドマーケティング) とは、自社にとって重要な特定のアカウント(企業単位)を事前に選定し、営業とマーケティングが連携して個社ごとに最適化したアプローチを行う戦略です。
2025年調査によると、BtoB企業のABM認知度は42.0%で、認知している企業の70.6%がすでに導入しています。さらに、ABM導入企業の76.4%が成果を実感しているというデータがあります。成果を出している企業の共通点は、単にターゲットを選定するだけでなく、戦略設計と体制構築に力を入れている点です。
この記事で分かること
- ABMの定義と従来マーケティングとの違い
- ターゲット企業の選定方法と具体的な手順
- ABM導入のステップと営業との連携体制
- ABM導入前に確認すべきチェックリスト
ABMの定義と従来マーケティングとの違い
ABMと従来のリードベースドマーケティングの最大の違いは、「量より質」のアプローチを取る点です。
従来のマーケティングでは、まず広くリードを獲得し、そこから徐々にターゲットを絞り込んでいく「ファネル型」のアプローチが一般的でした。一方、ABMでは最初から自社にとって価値の高い企業を特定し、その企業に集中的にリソースを投下します。
LTV(顧客生涯価値) とは、1人の顧客が取引を開始してから終了するまでにもたらす利益の総額です。ABMでは、このLTVが高くなる可能性のある企業を優先してアプローチすることで、マーケティング投資の効率を高めることを目指します。
ABMが注目される理由
ABMが注目される背景には、BtoB企業が抱える「リードは取れるが商談につながらない」という課題があります。
2025年調査によると、ABM導入企業の具体的成果として「ブランド価値・信頼性獲得につながった」が54.4%、「案件単価・受注金額が上昇した」が51.5%という結果が出ています。量を追うマーケティングでは得られにくい、質的な成果が期待できることがABMの強みです。
なお、ABMは大企業専用の戦略と思われがちですが、中堅・中小企業でもターゲット規模を調整することで導入可能です。
ターゲット企業の選定方法
ABM導入の第一歩は、ターゲット企業の選定です。適切なターゲットを選定できるかどうかが、ABMの成否を分けると言っても過言ではありません。
ターゲットアカウントとは、ABMにおいて戦略的にアプローチする対象として選定された企業です。ターゲットリストの規模は、精密ABM(個社ごとに深くアプローチ)で20-30社、広域ABM(業界セグメントでアプローチ)で2,000-3,000社が目安とされています。
中小〜中堅企業がABMを始める場合は、まず20-30社程度の重点ターゲットを設定し、段階的に拡大していくアプローチが現実的です。
既存顧客データを活用したターゲット抽出
ターゲット企業を選定する際に有効なのが、既存顧客データの分析です。
RFM分析とは、Recency(最終購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(購入金額)の3指標で顧客を分析する手法です。この分析を行い、自社にとって価値の高い顧客(上位2割程度)の共通属性を抽出します。
具体的な手順としては、以下のような流れになります。
- 既存顧客をLTVやRFMスコアでランク付けする
- 上位顧客に共通する業種、企業規模、課題などの属性を抽出する
- 抽出した属性に合致する類似企業をターゲットリストに追加する
この方法であれば、外部のリストを購入しなくても、自社データに基づいた精度の高いターゲットリストを作成できます。
ABM導入の具体的なステップ
ABMを始める際に陥りやすい失敗は、ターゲット企業を選定してすぐに個別アプローチを始めてしまうことです。戦略不在のまま施策を始めると、メッセージがバラバラになり成果につながりません。
ABM導入は、以下のステップで進めることが効果的とされています。
【フロー図】ABM導入ステップフロー
flowchart TD
A[1. ターゲット企業の選定] --> B[2. ターゲット企業の理解・分析]
B --> C[3. コンテンツ・メッセージ戦略の設計]
C --> D[4. 営業との連携体制構築]
D --> E[5. 施策実行・アプローチ開始]
E --> F[6. 効果測定・改善]
F --> |フィードバック| B
2025年調査によると、ABM導入企業が実施している取り組みは「ターゲットに特化したコンテンツ作成」が58.4%、「業界特化のウェビナー/セミナー開催」が51.7%となっています。これらの取り組みは、ステップ3の「コンテンツ・メッセージ戦略の設計」と密接に関連しています。
重要なのは、ターゲット選定(ステップ1)からすぐにアプローチ(ステップ5)に飛ばないことです。ステップ2〜4で戦略と体制を固めることで、メッセージの一貫性が保たれ、成果につながりやすくなります。
営業との連携体制の構築
ABM成功の要は、営業とマーケティングの連携です。両部門が別々に動くと、ターゲット企業に届けるメッセージがバラバラになり、ABMのメリットが失われてしまいます。
連携体制構築のポイントは以下の通りです。
- 週次で営業・マーケが情報共有する定例ミーティングを設ける
- 企業単位でのパイプライン管理を行い、進捗を可視化する
- ターゲット企業ごとのメッセージ・訴求ポイントを両部門で共有する
- 「どの企業に」「いつ」「どのようなアプローチをするか」を事前に合意する
この連携体制がないまま施策を始めると、営業とマーケがそれぞれ異なるメッセージを発信してしまい、ターゲット企業から見た自社の印象が一貫しなくなります。
ABMで失敗しないための準備
ABM導入でよくある失敗パターンを事前に把握し、準備を整えておくことが重要です。
2025年調査によると、ABM実施における課題として「社内のリソース不足」が51.7%、「マーケティング施策に関するノウハウ不足」が48.3%、「企業ブランドの認知力不足」が44.9%と報告されています。また、調査によると29.7%の企業がデータ連携不備で失敗しているというデータもあります(ただし、この数値は自己申告ベースであり、第三者検証はされていない点に注意が必要です)。
これらの課題を踏まえ、導入前に自社の準備状況を確認することが大切です。
【チェックリスト】ABM導入前に確認すべき項目
戦略面
- ターゲット企業の選定基準が明確になっている
- ターゲット企業に対する自社の価値提案(USP)が明確である
- ターゲット企業ごとのメッセージ・訴求ポイントを設計している
- ABMの目標指標(KPI)を設定している
体制面
- 営業とマーケティングの連携体制が構築されている
- ABM推進の責任者・担当者がアサインされている
- 定期的な情報共有の場(週次ミーティング等)が設定されている
- 必要なリソース(人員・予算)が確保されている
データ面
- 既存顧客データを分析できる状態になっている
- CRMやMAツールでデータを一元管理できる
- 営業とマーケでデータを共有・連携できる仕組みがある
- ターゲット企業の情報を蓄積・更新できる体制がある
上記のチェック項目で「できていない」が多い場合は、まず体制整備から始めることをお勧めします。
まとめ:ABMを成功させるために押さえるべきポイント
本記事では、BtoB ABMの始め方について、導入ステップと準備チェックリストを中心に解説しました。
ポイントを整理すると以下の通りです。
- ABMは「量より質」のアプローチで、高LTV企業に集中投資する戦略
- ターゲット選定は既存顧客データの分析から始めるのが効果的
- ターゲット選定後すぐにアプローチせず、戦略設計と体制構築を先に行う
- 営業とマーケの連携体制がABM成功の要
- 導入前にチェックリストで準備状況を確認する
参考として、NECソリューションイノベータの事例ではターゲット獲得効率が2.6倍向上したという報告があります。ただし、これは個社事例であり、同等の成果が自社で出るとは限らない点に注意が必要です。
最初から大規模に始める必要はありません。まずは重点ターゲット企業を30社程度に絞り、小さく始めて検証しながら拡大していくアプローチが現実的です。
繰り返しになりますが、ABMで成功するには、ターゲット企業の選定だけでなく、その企業向けのコンテンツ・メッセージを一貫させる戦略を設計し、営業との連携体制を構築することが成功の鍵です。本記事のチェックリストを活用して、自社のABM導入準備を進めてください。
