カスタマージャーニーマップを作っても成果が出ない理由
コンテンツマーケティングでカスタマージャーニーを活用するには、マップを作成するだけでなく、「誰に・何を・なぜ」という戦略を全コンテンツに一貫して反映させる仕組みを構築することが不可欠である——本記事ではこの結論を詳しく解説します。
日本のカスタマージャーニー分析市場は2024年に7億8,450万米ドル、2033年には30億420万米ドルに成長すると予測されています(CAGR 14.92%)。この成長は、多くの企業がカスタマージャーニーの重要性を認識し、投資を拡大していることを示しています。
しかし、カスタマージャーニーマップを作成しても、実際のコンテンツ制作に活かせていない企業が多いのが現状です。マップは完成したものの、記事ごとにターゲットやメッセージがバラバラになり、PVは増えてもCVにつながらないという課題を抱えているケースが多く見られます。
この記事で分かること
- カスタマージャーニーの基本概念とBtoB特有の特徴
- カスタマージャーニーマップの作成手順と失敗しやすいポイント
- フェーズ別に適したコンテンツ設計の方法
- マップを全コンテンツに反映させる仕組みの構築方法
コンテンツマーケティングにおけるカスタマージャーニーの基本
カスタマージャーニーとは、顧客が商品・サービスを認知してから購入・継続に至るまでの一連の体験プロセスを「旅」に例えたものです。コンテンツマーケティングにおいて、このカスタマージャーニーを理解し活用することが、効果的なコンテンツ戦略の基盤となります。
グローバルのカスタマージャーニー分析市場は2024年に45億3,000万米ドル、2032年までに995億米ドルに成長すると予測されています(CAGR 10.4%)。この数字は、世界的にカスタマージャーニーを活用したマーケティングへの関心が高まっていることを示しています。
ペルソナとは、ターゲット顧客像を具体的に設定したもので、業界、役職、課題、行動パターンなどを定義します。カスタマージャーニーを設計する際は、このペルソナを起点として顧客の行動を理解することが重要です。
タッチポイントは、顧客が企業と接触するあらゆる接点を指します。Web、SNS、メール、コールセンター、店舗など多岐にわたり、各タッチポイントで適切なコンテンツを提供することがカスタマージャーニーの最適化につながります。
BtoBにおけるカスタマージャーニーの特徴
BtoBのカスタマージャーニーは、BtoCと比較していくつかの特徴があります。
まず、複数の意思決定者が関与することが挙げられます。担当者、部門責任者、経営層など、複数の関係者が購買プロセスに参加するため、それぞれの立場に応じた情報提供が必要です。
次に、検討期間が長い傾向があります。BtoB製品・サービスは高額であることが多く、導入後の影響も大きいため、慎重な比較検討が行われます。
また、論理的な比較検討が重視されます。感情的な購買よりも、ROIや導入効果、他社との比較など、論理的な判断材料が求められます。
ナーチャリングとは、見込み顧客を育成し、購買意欲を高めるマーケティング活動です。メール、ウェビナー、コンテンツ提供などを通じて、長期的な関係構築を行います。BtoBでは、このナーチャリングがカスタマージャーニーの重要な要素となります。
カスタマージャーニーマップの作成手順
カスタマージャーニーマップとは、顧客の行動・思考・感情・タッチポイントを時系列で可視化した図で、マーケティング施策の最適化に活用します。効果的なマップを作成するには、以下の手順で進めることが一般的です。
カスタマージャーニーマップ作成の基本手順
- ペルソナを明確に定義する
- 購買プロセスのフェーズを設定する(認知→興味→比較検討→決定→継続)
- 各フェーズでの顧客の行動を洗い出す
- 顧客の思考・感情を推測する
- タッチポイントを特定する
- 課題や改善ポイントを抽出する
ここで注意すべき失敗パターンがあります。企業の憶測や願望でマップを作ってしまい、実際の顧客行動と乖離してしまうケースです。「こうあってほしい」という期待をマップに反映させてしまうと、現実の顧客行動とのギャップが生まれ、コンテンツが響かない原因となります。
この問題を避けるには、部門横断のワークショップでマップを作成し、営業、カスタマーサポート、マーケティングなど複数の部門の知見を集約することが有効です。実際の顧客との接点を持つ部門の声を取り入れることで、より現実に即したマップが作成できます。
ペルソナ設定のポイント
カスタマージャーニーの起点となるペルソナは、以下の項目を具体的に設定します。
- 業界・業種: どのような業界の企業か
- 企業規模: 従業員数、売上規模など
- 役職・職種: 意思決定者か、推進者か、利用者か
- 抱えている課題: どのような問題を解決したいか
- 情報収集行動: どのような媒体・チャネルで情報を得ているか
- 意思決定の基準: 何を重視して選定するか
BtoBでは、同じ企業内でも役職や立場によって情報ニーズが異なります。経営層は投資対効果や戦略的価値を重視し、現場担当者は操作性や導入のしやすさを重視する傾向があります。複数のペルソナを設定し、それぞれに適したコンテンツを設計することが重要です。
フェーズ別コンテンツ設計の方法
カスタマージャーニーの各フェーズでは、顧客のニーズや情報収集の目的が異なります。フェーズに応じた適切なコンテンツを設計することで、顧客を次のステップへと導くことができます。
【フロー図】フェーズ別コンテンツ設計フロー
flowchart TD
A[認知フェーズ] --> B[興味フェーズ]
B --> C[比較検討フェーズ]
C --> D[決定フェーズ]
D --> E[継続・推奨フェーズ]
A --> A1[SEO記事・SNS投稿・啓発動画]
B --> B1[ブログ記事・メールマガジン・ウェビナー告知]
C --> C1[ホワイトペーパー・事例紹介・比較資料]
D --> D1[個別提案資料・デモ・トライアル]
E --> E1[活用事例・ユーザーコミュニティ・追加提案]
認知〜興味フェーズのコンテンツ
認知フェーズでは、潜在顧客が自社の課題に気づき始める段階です。このフェーズでは、課題を顕在化させる情報提供が効果的です。
認知フェーズで効果的なコンテンツ
- SEO記事: 課題に関連するキーワードで検索される記事
- SNSコンテンツ: 業界トレンドや課題提起に関する投稿
- 啓発動画: 短時間で課題認識を促すコンテンツ
興味フェーズでは、顧客が課題解決の方法を探し始めます。解決策の方向性を示すコンテンツが求められます。
興味フェーズで効果的なコンテンツ
- ブログ記事: 解決策の概要や選定ポイントを解説
- メールマガジン: 継続的な情報提供でリレーション構築
- ウェビナー告知: 詳しい情報提供への誘導
比較検討〜決定フェーズのコンテンツ
比較検討フェーズでは、複数の選択肢を比較し、自社に最適なソリューションを選ぼうとします。詳細な情報と信頼性を示すコンテンツが重要です。
比較検討フェーズで効果的なコンテンツ
- ホワイトペーパー: 詳細な情報や専門的な知見を提供
- 事例紹介: 同業他社や類似課題の解決事例
- 比較資料: 機能や価格の比較表
決定フェーズでは、最終的な意思決定を後押しするコンテンツが必要です。
決定フェーズで効果的なコンテンツ
- 個別提案資料: 顧客固有の課題に対応した提案
- デモ・トライアル: 実際の操作感や効果を体験
- 導入ガイド: 導入後のイメージを具体化
カスタマージャーニーを全コンテンツに反映させる仕組み
カスタマージャーニーマップを作成しても、それが実際のコンテンツ制作に活かされなければ意味がありません。記事ごとにターゲットやメッセージがバラバラになってしまうという課題を解決するには、戦略を全コンテンツに一貫して反映させる仕組みが必要です。
重要なのは、PV(ページビュー)だけでなく、CVR(コンバージョン率)や商談化率を成果指標として設計することです。どれだけ閲覧されても、次のアクションにつながらなければコンテンツの目的を果たしているとは言えません。
【チェックリスト】カスタマージャーニー×コンテンツ連動チェックリスト
- このコンテンツのターゲットペルソナは明確か
- このコンテンツはどのフェーズの顧客向けか定義されているか
- フェーズに応じた適切なコンテンツ形式を選んでいるか
- 顧客がこのフェーズで抱えている課題に応えているか
- 次のフェーズへ進むためのCTAが設定されているか
- 他のコンテンツとメッセージの一貫性が保たれているか
- 自社のUSP(独自の強み)が反映されているか
- 想定される顧客の疑問や不安に対応しているか
- 競合との差別化ポイントが明確か
- 成果指標(KPI)が設定されているか
- 公開後の効果測定方法が決まっているか
- 定期的な見直しのタイミングが設定されているか
コンテンツ制作時のチェックポイント
各コンテンツを制作する際は、以下のポイントを確認することで、カスタマージャーニーとの連動を担保できます。
企画段階での確認
- ターゲットペルソナと対象フェーズの明確化
- 顧客の課題・ニーズとコンテンツの目的の整合性
- 期待するアクション(次のステップ)の設定
制作段階での確認
- メッセージの一貫性(他のコンテンツとの整合性)
- CTAの適切性(フェーズに応じたアクション誘導)
- USPの反映(なぜ自社を選ぶべきかの訴求)
公開後の確認
- KPIの達成状況(PV、CVR、商談化率など)
- 顧客の反応・フィードバック
- 改善ポイントの抽出と次回への反映
このような仕組みを構築することで、担当者が変わっても一貫したメッセージを発信し続けることができます。
まとめ:カスタマージャーニーをコンテンツ成果につなげるために
本記事では、コンテンツマーケティングにおけるカスタマージャーニーの活用方法を解説しました。
記事のポイント
- カスタマージャーニーは顧客の体験プロセスを可視化し、効果的なコンテンツ戦略の基盤となる
- BtoBでは複数の意思決定者、長い検討期間、論理的な比較検討という特徴を踏まえた設計が必要
- カスタマージャーニーマップは部門横断で作成し、実際の顧客行動に基づくことが重要
- フェーズごとに適切なコンテンツ形式を選び、次のステップへと導く設計を行う
- マップを作成するだけでなく、全コンテンツに戦略を反映させる仕組みの構築が不可欠
日本のカスタマージャーニー分析市場は2024年から2033年にかけて約4倍に成長すると予測されており、今後ますます重要性が高まることが見込まれます。
本記事で紹介したチェックリストとフロー図を活用し、カスタマージャーニーを実際のコンテンツ成果につなげてください。コンテンツマーケティングでカスタマージャーニーを活用するには、マップを作成するだけでなく、「誰に・何を・なぜ」という戦略を全コンテンツに一貫して反映させる仕組みを構築することが不可欠です。
