公開承認が止まる・判断基準がバラバラになる問題
最も重要なのは、コンテンツ公開リスクの判断を属人化させず成果につなげるには、ファクトチェック自動検証+人間承認フローを仕組み化し、戦略との一貫性を保ちながら品質を担保する体制を構築することです。
「AI原稿が承認を通らず公開が止まっている」「担当者によって判断基準がバラバラで、いつまでも公開できない」——BtoB企業のコンテンツ運用現場では、こうした課題が深刻化しています。
生成AI活用の課題として「リスクを把握し管理することが難しい」と回答した企業は48.5%に上るという調査結果があります(野村総合研究所 2025年)。また、AIツールでコンテンツ制作を行う担当者の58.7%が「情報の正確性・信頼性(ファクトチェックの手間)」を不安点として挙げています(2025年調査)。
つまり、約5割の企業がリスク管理の難しさを課題視し、約6割の担当者がファクトチェックの手間を不安に感じているのです。この状況を放置すれば、コンテンツの公開が滞り、マーケティング成果にも悪影響が出てしまいます。
この記事で分かること
- コンテンツ公開リスクの種類と影響(法令・品質・著作権・レピュテーション)
- 公開リスクを恐れて承認が止まり続けるパターンからの脱却方法
- コンテンツ公開前リスクチェックリストの作り方
- AI活用時の特有リスクと対処法を含む公開判断フロー
コンテンツ公開リスクの種類と影響を整理する
コンテンツ公開リスクは、大きく「法務・コンプライアンス」「ブランド・レピュテーション」「ファクト・根拠」「ビジネスリスク」の4軸に分類できます。
BtoB購買行動調査(2025年版)では、「問い合わせ前の情報収集チャネル」として企業サイトが約7割と最も利用されているという結果が報告されています。つまり、公開コンテンツの品質が企業の信頼に直結するため、リスク管理は避けて通れません。
コンテンツガバナンスとは、企業がコンテンツの品質・一貫性・コンプライアンスを管理するための方針・体制・プロセスを指します。公開リスクを適切に管理するには、このコンテンツガバナンスの視点が不可欠です。
法令リスク——景表法・薬機法等の違反
法令リスクは、景品表示法や薬機法などの法規制に違反するリスクです。
例えば、サービスの効果を誇大に表現したり、根拠のない「業界No.1」といった表現を使用したりすると、景品表示法違反となる可能性があります。また、健康食品や化粧品に関するコンテンツでは、薬機法に抵触する表現に注意が必要です。
法令違反は、行政処分や損害賠償請求といった直接的なリスクだけでなく、企業の信頼を大きく損なう結果につながります。
品質・信頼性リスク——誤情報・根拠不足
品質・信頼性リスクは、コンテンツに含まれる情報の誤りや根拠不足によるリスクです。
ファクトチェックとは、コンテンツに含まれる事実や数値の正確性を検証するプロセスです。AI原稿では特に重要であり、この工程を怠ると誤情報の公開につながります。
誤った情報を公開してしまうと、読者の誤解を招くだけでなく、専門性への疑念を生じさせ、企業としての信頼を失うことになります。
レピュテーションリスク——ブランドイメージの毀損
レピュテーションリスクとは、誤情報や不適切な表現により企業の評判・信頼が毀損されるリスクを指します。
具体的には、事実に基づかない主張、競合を不当に貶める表現、社会的に不適切な表現などが該当します。一度毀損された評判を回復するには、長い時間と多大なコストがかかるケースが多いです。
SNSでの拡散により炎上に発展するリスクもあるため、公開前のチェック体制が重要になります。
公開リスクを恐れて承認が止まり続けるパターンを脱却する
公開リスクを適切に管理するためには、「リスクを恐れて承認が止まり続ける」または「担当者によって判断基準がバラバラになる」という失敗パターンから脱却する必要があります。
野村総合研究所調査(2025年)によると、生成AIを「導入済み」と回答した企業は57.7%に達し、2023年度33.8%から増加しています。一方で、前述の通り約5割の企業がリスク管理の難しさを課題視しています。
この状況は、「AIを導入したが、リスクが怖くて公開できない」という企業が多いことを示唆しています。しかし、リスクを恐れて公開を止め続けることは、コンテンツマーケティングの成果を得られないという別のリスクを生みます。
属人化がもたらす問題——担当者ごとに判断基準がバラバラ
リスク判断が属人化すると、担当者ごとに基準がバラバラになり、品質も成果も不安定になります。
例えば、担当者Aは「少しでもリスクがあれば却下」という方針で厳格に判断し、担当者Bは「明らかな問題がなければ承認」という方針で判断するケースがあります。このような状況では、同じ品質のコンテンツでも担当者によって公開可否が変わってしまい、一貫性のある運用ができません。
属人化を解消するには、判断基準を明文化し、チェックリストと承認フローを仕組み化することが有効です。
コンテンツ公開前リスクチェックリストの作り方
リスク判断を標準化するために、「法務・コンプライアンス」「ブランド・レピュテーション」「ファクト・根拠」「ビジネスリスク」の4軸でチェック項目を整理したリストを作成することが推奨されます。
チェックリストを使用することで、担当者が変わっても一貫した基準でリスク判断ができるようになります。以下に、実用的なチェックリストを示します。
【チェックリスト】コンテンツ公開前リスクチェックリスト
- 景品表示法に抵触する誇大表現がないか確認した
- 薬機法に抵触する効果・効能の表現がないか確認した
- 著作権侵害(無断転載・引用ルール違反)がないか確認した
- 商標権侵害(競合商標の不適切な使用)がないか確認した
- 個人情報・機密情報の漏洩リスクがないか確認した
- 自社のブランドトーン・表現ガイドラインに沿っているか確認した
- 競合を不当に貶める表現がないか確認した
- 社会的に不適切な表現(差別・偏見等)がないか確認した
- 炎上リスクのある過激な主張がないか確認した
- 数値データの出典が明記されているか確認した
- 引用元URLが有効で、内容が一致しているか確認した
- 統計データの調査年・調査対象が適切か確認した
- AI生成による事実誤認(ハルシネーション)がないか確認した
- 自社サービスの説明が最新情報と一致しているか確認した
- 競合比較の内容が公平で根拠があるか確認した
- 価格・プラン情報が最新か確認した
- 公開後の問い合わせ対応体制が整っているか確認した
コンテンツ公開判断フローの設計——AI活用時の対処を含む
チェックリストと併せて、公開判断のフローを明確にすることで、承認プロセスがスムーズになります。
AIツールでコンテンツ制作を行う担当者の58.7%が「情報の正確性・信頼性(ファクトチェックの手間)」を不安点として挙げています。また、AIコンテンツ利用者の40%が「検索エンジン(Googleなど)からのペナルティリスク」を懸念しているという調査結果もあります(2025年調査)。
ハルシネーションとは、生成AIが事実に基づかない情報や存在しないデータを「もっともらしく」生成してしまう現象です。AI活用時には、このハルシネーション対策が特に重要になります。
なお、AI生成コンテンツは自動的にペナルティを受けるわけではなく、問題は「品質」と「有用性」にあります。高品質で読者に価値を提供するコンテンツであれば、AI生成でも適切に評価されます。
【フロー図】コンテンツ公開判断フロー
flowchart TD
A[コンテンツ作成完了] --> B{AI生成コンテンツ?}
B -->|はい| C[ハルシネーションチェック]
B -->|いいえ| D[リスクチェックリスト確認]
C --> D
D --> E{チェック項目クリア?}
E -->|いいえ| F[修正・再確認]
F --> D
E -->|はい| G{コンテンツ種別}
G -->|軽微コンテンツ| H[担当者承認]
G -->|主要コンテンツ| I[複数人レビュー]
H --> J[公開]
I --> K{承認?}
K -->|いいえ| F
K -->|はい| J
このフローでは、「軽微コンテンツ」(SNS投稿等)と「主要コンテンツ」(ホワイトペーパー・重要記事等)でレビュー体制を分けています。すべてのコンテンツに同じ承認フローを適用すると、公開スピードが落ちてしまうためです。
AI活用時の特有リスクと対処法
AI活用時の特有リスクとして最も重要なのは、ハルシネーションへの対策です。
「ファクトチェックはAIツールに任せれば良い」という考え方は誤りです。AIは事実でない情報をもっともらしく生成することがあるため、AIによる一次チェック+人間による最終確認の組み合わせが推奨されます。
具体的な対策としては、以下が挙げられます。
- AI原稿は「下書き・案出し」として位置づけ、公開前に必ず人手チェックを挟む
- 統計データや引用は、人間が出典URLにアクセスして内容を確認する
- 専門的な内容は、該当分野の知見を持つ担当者がレビューする
- ファクトチェックの結果を記録し、後から検証できるようにする
まとめ——仕組み化で公開リスク判断を属人化させない
本記事では、コンテンツ公開リスクの判断を仕組み化する方法について解説しました。
要点の整理:
- コンテンツ公開リスクは「法務」「ブランド」「ファクト」「ビジネス」の4軸で整理する
- 約5割の企業がリスク管理の難しさを課題視し、約6割の担当者がファクトチェックの手間を不安に感じている
- 属人化を解消するには、チェックリストと承認フローの仕組み化が有効
- AI活用時は、ハルシネーション対策として人間による最終確認が不可欠
- 軽微コンテンツと主要コンテンツでレビュー体制を分けることで、品質と公開スピードを両立できる
次のアクション:
まずは本記事のチェックリストを自社の状況に合わせてカスタマイズし、公開判断フローを明文化してください。判断基準が明確になれば、担当者による判断のバラつきが解消され、承認のボトルネックも緩和されます。
コンテンツ公開リスクの判断を属人化させず成果につなげるには、ファクトチェック自動検証+人間承認フローを仕組み化し、戦略との一貫性を保ちながら品質を担保する体制を構築することが重要です。この仕組みがあれば、リスクを適切に管理しながら、継続的にコンテンツを公開できる体制を実現できます。
