記事の価値を「証明できない」という課題
記事の価値を証明する方法の答えは明確で、コンテンツの価値をPVや広告換算だけで証明しようとしても経営層は納得しない。商談・受注への貢献度を測定し、戦略との整合性を担保する仕組みを持つことで、コンテンツは証明可能な資産になります。
BtoB企業のマーケティング担当者であれば、「記事を公開したけれど、どれだけ売上に貢献しているのか分からない」という悩みを抱えたことがあるのではないでしょうか。経営層から「で、いくら儲かったの?」と問われたとき、PV(ページビュー)の数字だけでは説得力に欠けます。
MarkeZine 2025年度調査によると、Web広告予算増加の主な理由として「リード獲得効果の高さ」が55.8%、「ROAS重視」が57.0%を占めています。つまり、企業が投資対効果を重視する傾向は明確であり、コンテンツにも同様の視点が求められているのです。
この記事で分かること
- PVだけではコンテンツ価値を証明できない理由
- コンテンツ価値の3つの評価軸(PV・広告換算・商談貢献)の比較
- 商談・受注への貢献度を測定する具体的な方法
- 経営層に響く報告の組み立て方とチェックポイント
なぜPVだけではコンテンツ価値を証明できないのか
PV(ページビュー) とは、Webページが表示された回数を示す指標です。閲覧数の把握には有用ですが、リード獲得や商談化などの質的成果を直接反映しません。PVが増えたからといって、売上が増えたことにはならないのです。
ここで陥りがちな失敗パターンがあります。PVや広告換算など「見た目の数字」だけでコンテンツ価値を報告し、商談・受注への貢献を示せないまま、経営層から「効果が分からない」と言われて予算を削られるケースです。この考え方では成果が出ません。
コンバージョン率(CVR) とは、サイト訪問者のうち、資料請求や問い合わせなど目標行動に至った割合を指します。PVよりも成果に直結する指標として、多くの企業で重視されています。
SyncAD 2025年調査によれば、BtoB発信内容が取引決定に与える影響として、「情報量の多さ」が32.1%、「HP透明性」が31.2%、「更新頻度」が27.5%を占めています。つまり、BtoB購買においては単なる閲覧数ではなく、コンテンツの質や継続性が取引判断に影響しているのです。
コンテンツ価値の評価軸を整理する
コンテンツ価値を測定する評価軸は主に3つあります。それぞれの特徴と限界を理解することが、適切な報告の第一歩です。
ROAS(広告費用対効果) とは、広告投資に対する売上の比率を指します。投資効果を測定するための指標として広く使われています。
リード獲得とは、見込み顧客の連絡先情報を取得することです。BtoBマーケティングではPVよりも重視される成果指標と言えます。
Semrush 2024年調査(海外調査の日本語まとめ)によると、BtoBコンテンツマーケティング戦略の文書化率は全体で40%ですが、成功企業では64%に上ります。評価軸を明確にし、戦略と整合させている企業ほど成果を出していることが分かります。
【比較表】コンテンツ価値の評価軸
| 評価軸 | 測定のしやすさ | 経営層への説得力 | 限界・注意点 |
|---|---|---|---|
| PV(ページビュー) | 高い | 低い | 閲覧数のみで売上貢献が不明確 |
| 広告換算額 | 中程度 | 中程度 | 「広告を出した場合の想定費用」であり売上への直接貢献は不明 |
| 商談・受注への貢献 | 低い(仕組みが必要) | 高い | 測定の仕組み構築が前提。長期間の追跡が必要 |
| リード獲得数 | 中程度 | 高め | 商談化率との組み合わせで説得力が増す |
| コンバージョン率(CVR) | 中程度 | 高め | 分母の定義によって数値が変動 |
PV・広告換算の限界
PVが月間10万件あっても、問い合わせがゼロであれば経営層は納得しません。「たくさん見られている」という事実だけでは、「いくら儲かったか」という問いに答えられないからです。
広告換算額も同様です。「この記事がもし広告だったら〇〇万円相当」という説明は一定の参考にはなりますが、結局のところ「で、実際に売上にどう貢献したの?」という疑問に直接答えることはできません。
商談・受注への貢献度という視点
経営層が本当に知りたいのは「売上への貢献」です。そのためには、コンテンツ接触から商談化、受注に至るまでの流れを追跡する視点が必要になります。
BtoB購買は検討期間が長いため、短期的なCV(コンバージョン)だけでなく、中長期的な貢献度も考慮する必要があります。どのコンテンツが見込み顧客との最初の接点になったか、最終的な問い合わせの後押しになったかを把握することが重要です。
商談・受注への貢献度を測定する方法
商談への貢献を測定するには、リード獲得から商談化までの追跡の仕組みを構築することが必要です。特にMAツール(マーケティングオートメーション)を活用することで、この追跡が効率的になります。
診断コンテンツとは、ユーザーが質問に回答することで結果を得られるインタラクティブなコンテンツです。ホワイトペーパーより高い完了率が報告されています。
ある企業の事例では、診断コンテンツの完了率は51.78%で、ホワイトペーパーの一般相場(10-20%)の約5倍という数値が報告されています(特定企業の自己申告事例であり、一般化には注意が必要)。コンテンツ形式によってリード獲得効果に大きな差が生まれることを示しています。
MAツールを活用したリード追跡
MAツールを導入することで、どのコンテンツ経由で問い合わせが発生したかを追跡できるようになります。
HR NOTEの事例では、MAツール導入前は月間メルマガ登録が50名でしたが、セグメント別ポップアップ導入後には200名に成長しました(4倍)。ただし、成果は企業の業種、運用体制、ターゲット層によって大きく異なるため、同様の結果が得られるとは限りません。
重要なのは、リード獲得数だけでなく、その後の商談化率や受注率まで追跡することです。そこまで追跡できて初めて「コンテンツが売上に貢献した」と言えるようになります。
コンテンツごとの貢献度を可視化する
コンテンツの貢献度を測定する方法には、主に以下の3つのアプローチがあります。
- ファーストタッチ: 最初に接触したコンテンツに貢献を帰属させる
- ラストタッチ: 最終的なCVの直前に接触したコンテンツに貢献を帰属させる
- マルチタッチ: 複数のコンテンツに貢献を分散させる
複雑なツール導入が難しい場合でも、問い合わせフォームに「どこで当社を知りましたか?」という項目を追加する、営業担当に「お客様はどの記事を読んでいたか」をヒアリングするなど、できる範囲から始めることが重要です。
経営層への報告を組み立てる
測定したデータは、経営層に伝わる形で報告しなければ意味がありません。報告の構成と盛り込むべき要素を整理しましょう。
SmartHRは8年間で1,000記事を制作し、累計2,000万人リーチを達成した事例として知られています。また、ある法律事務所のBtoBマーケティング事例では、新規顧客4倍、サイトアクセス40倍を達成したと報告されています(特定事務所の自己申告値であり、一般化には注意が必要)。
これらの事例が示すのは、コンテンツマーケティングの成果は長期的な蓄積によって生まれるということです。短期的なPVの増減に一喜一憂するのではなく、中長期的な視点で成果を伝えることが重要です。
【チェックリスト】コンテンツ価値証明のための確認
- リード獲得数を月次で計測している
- 商談化率を把握している
- どのコンテンツが商談に貢献したかを追跡できている
- PVは補足情報として位置づけ、主指標にしていない
- 広告換算額だけに頼った報告をしていない
- コンテンツ戦略が文書化されている
- 評価軸と戦略が整合している
- 経営層への報告に「売上への貢献」の視点が含まれている
- 短期と長期の両面で成果を報告している
- 測定の仕組み(MAツール等)の導入状況を把握している
- 営業担当からの定性的なフィードバックを収集している
- コンテンツごとの貢献度を可視化できている
- 報告資料に具体的な数字が含まれている
- 成果が出るまでの時間軸を経営層と共有している
- 次のアクションプランを報告に含めている
報告に盛り込むべき要素
経営層が判断しやすい報告には、以下の要素を含めることをお勧めします。
- リード獲得数: 今月獲得したリードの件数
- 商談化率: リードから商談に至った割合
- 受注への貢献: コンテンツ経由で成約した案件数・金額
- コスト対効果: コンテンツ制作・運用費用に対する成果
PVや広告換算額は補足情報として記載し、主軸には「売上への貢献」を置くことで、経営層の「いくら儲かったか」という問いに答えられる構成になります。
短期と長期の両面で伝える
前述のSmartHRの事例では、8年間で1,000記事という長期的な蓄積によって成果を出しています。コンテンツマーケティングは即効性のある施策ではなく、中長期的な取り組みであることを経営層に理解してもらう必要があります。
報告では「今月の成果」(短期)と「累積の成果・資産としての価値」(長期)の両面を伝えることが効果的です。「まだ成果が見えない」という時期であっても、「資産として蓄積されている」という視点を示すことで、継続的な投資への理解を得やすくなります。
まとめ:コンテンツは証明可能な資産になる
記事の価値を証明するためには、PVや広告換算といった「見た目の数字」だけでなく、商談・受注への貢献度を測定する仕組みが必要です。
本記事で解説したポイントを振り返ります。
- PVだけでは経営層が求める「売上への貢献」を示せない
- 評価軸はPV・広告換算・商談貢献の3つがあり、経営層への説得力が最も高いのは商談貢献
- MAツールの活用やアトリビューション分析で、コンテンツごとの貢献度を可視化できる
- 報告では短期と長期の両面から成果を伝える
Semrush 2024年調査によれば、コンテンツマーケティング戦略を文書化している成功企業は64%に上ります(海外調査の日本語まとめであり、日本市場では異なる可能性があります)。戦略を明確にし、評価軸と整合させている企業ほど成果を出しているのです。
コンテンツの価値をPVや広告換算だけで証明しようとしても経営層は納得しません。商談・受注への貢献度を測定し、戦略との整合性を担保する仕組みを持つことで、コンテンツは証明可能な資産になります。まずは現状の測定体制を棚卸しし、できる範囲から貢献度の可視化を始めてみてください。
