IT企業のマーケティングで成果が出ない理由
多くの人が見落としがちですが、IT企業のマーケティングで成果を出すには、施策を増やすだけでなく、ターゲット・USP・競合を明確にした戦略を全コンテンツに一貫して反映させ、品質を担保する仕組みを整えることが重要です。
リードジェネレーションとは、見込み顧客(リード)を発掘・獲得するマーケティング活動です。IT企業では、コンテンツマーケティングやウェビナー、SEO施策など様々な手法でリードを獲得します。
しかし、調査によると、BtoB企業の48.6%がリードの質について理想通りの獲得ができていないと回答しています(2025年調査、2024年比+7.6ポイント増、調査対象は93社と限定的なため傾向値として参照)。施策を実施してもリードは取れるが商談につながらない、という課題を抱える企業は少なくありません。
商談化率とは、獲得したリードのうち、商談フェーズに進んだ割合を示す指標です。この商談化率が低いと、いくらリードを獲得してもマーケティング投資の効果は限定的になります。
この記事で分かること
- IT企業が抱えるマーケティング特有の課題と市場動向
- リード獲得から商談化につながる主要施策の比較
- コンテンツ量産では成果が出ない根本原因
- 戦略を全コンテンツに反映させる仕組みのつくり方
- 成果を出すための実践チェックリスト
IT企業が抱えるマーケティング課題
IT企業のマーケティングには、技術的な商材特性に起因する固有の課題があります。購買検討期間が長く、複数の意思決定者が関与するため、単発の施策では成果につながりにくい傾向にあります。
外向きDXとは、顧客体験・接点のデジタル化など対外的なDX施策を指します。2025年のJIPDEC/ITR調査(1,110社対象)によると、外向きDXで顧客体験・接点のデジタル化が成果を上げている企業は30.9%と最も高く、データに基づく営業・マーケティング高度化が29.4%と続いています。これはマーケティング領域でのデジタル活用が成果につながりやすいことを示しています。
市場環境としては、国内IT市場規模は2024年度15兆8,200億円(前年比+5.1%)で、2025年度は16兆7,300億円(+5.8%)と予測されています(矢野経済研究所)。市場は拡大傾向にありますが、それだけ競合も増加しており、差別化の重要性が増しています。
IT企業特有のマーケティング課題としては、以下が挙げられます。
- 技術理解が必要な商材: 製品・サービスの価値を正しく伝えるには専門知識が必要
- 購買プロセスの長期化: 導入検討から契約まで数ヶ月〜1年以上かかることも
- 複数の意思決定者: 技術担当、経営層、購買担当など複数のステークホルダーが関与
- 競合の多さ: 類似サービスが多く、差別化ポイントを明確にする必要がある
リード獲得から商談化への課題
リードは獲得できても商談化しない、という課題はIT企業で特に顕著です。BtoB企業全体の商談化率平均は20〜30%が目安とされており、インバウンドリードは35〜40%、アウトバウンドは10〜15%がベンチマークとなっています(2025年ベンチマーク、ただしSaaS・IT企業寄りの数値であり業界により変動します)。
インバウンドリードとは、顧客から自発的に問い合わせがあった質の高いリードです。コンテンツマーケティングやSEOで獲得したリードは、アウトバウンドに比べて商談化率が高い傾向にあります。
商談化率が低い原因として多いのは以下のケースです。
- リードの質が低い(ターゲット外の問い合わせが多い)
- リード獲得後のフォローアップが不十分
- 営業とマーケティングの連携が弱い
- コンテンツのメッセージと営業トークが一致していない
IT企業向けの主要なマーケティング施策
IT企業が取り組むべきマーケティング施策は多岐にわたります。グローバル調査によると、マーケティング責任者の78%がデータとAIを活用してビジネス成長を実現することを期待されているという結果もあり(Adobe Digital Trends Report 2025、日本市場限定ではない点に注意)、データ活用の重要性が高まっています。
また、マーケティング担当者の51%がコンテンツ最適化にAIを活用し、43%がSNS戦略にAIを重要視しているという調査結果もあります(SurveyMonkey 2025年調査、グローバル寄りの調査)。
MAツールとは、マーケティングオートメーションツールの略で、リード管理や育成を自動化するシステムです。IT企業では導入が進んでおり、効率的なリードナーチャリングに活用されています。
【比較表】IT企業向けマーケティング施策比較表
| 施策 | 目的 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| コンテンツマーケティング | リード獲得・ナーチャリング | 専門性を訴求、SEO効果も期待 | 技術的な強みがある企業 |
| SEO対策 | 検索流入増加 | 中長期的な資産形成 | 継続的に取り組めるリソースがある企業 |
| ウェビナー | リード獲得・関係構築 | 双方向コミュニケーション可能 | 製品デモが効果的な企業 |
| SNSマーケティング | 認知拡大・ブランディング | 拡散力、リアルタイム性 | B2C寄りのSaaSやスタートアップ |
| MAツール活用 | リード育成・効率化 | 自動化によるスケーラビリティ | リード数が多い企業 |
| Web広告 | 短期的なリード獲得 | 即効性があるがコスト増 | 予算に余裕がある企業 |
| ホワイトペーパー | リード獲得・教育 | 専門知識を深く伝えられる | 複雑な商材を扱う企業 |
施策の選択において重要なのは、どの施策を選ぶかではなく、一貫した戦略のもとで実行することです。複数の施策をバラバラに実施しても、メッセージがブレると効果は限定的になります。
コンテンツマーケティングで成果が出ない根本原因
よくある誤解として、SEO記事やホワイトペーパーを量産すればリードが増えて成果が出ると考えがちですが、これは誤りです。 戦略設計が曖昧なまま施策を増やしても、コンテンツごとに主張がブレて商談につながらず、マーケティング投資が無駄になりやすいのが実態です。
前述の通り、BtoB企業の48.6%がリードの質に課題を感じています。これは量を増やしても質の問題は解決しないことを示唆しています。むしろ、質の低いリードが増えることで営業チームの負担が増加し、本来注力すべき有望リードへの対応が手薄になるリスクもあります。
成果が出ないコンテンツマーケティングに共通する問題点は以下の通りです。
- 記事ごとにターゲットや訴求ポイントがバラバラ
- 自社のUSP(独自の強み)が明確に伝わらない
- 競合との差別化ができていない
- コンテンツは増えても、読者の行動変容につながらない
戦略の一貫性がないとなぜ成果が出ないか
ターゲット・USP・競合を明確にし、全コンテンツに反映させることが重要な理由は、読者体験の一貫性にあります。
読者は複数のコンテンツに触れて購買検討を進めます。ブログ記事を読み、ホワイトペーパーをダウンロードし、ウェビナーに参加し、問い合わせをする。この過程で受け取るメッセージが一貫していれば、企業への信頼が醸成されます。
逆に、コンテンツごとに訴求ポイントやトーンが異なると、読者は混乱します。「この会社は結局何が強みなのか分からない」という印象を与え、競合との比較検討で選ばれにくくなります。
一貫した戦略を設計するには、以下の3要素を明確にする必要があります。
- ターゲットペルソナ: 誰に向けたコンテンツなのかを具体化
- USP(独自の強み): 自社が提供できる独自の価値
- 競合との差別化: なぜ競合ではなく自社を選ぶべきかの理由
IT企業のマーケティングで成果を出すための実践ポイント
成果につながるマーケティングを実現するには、戦略設計→一貫性担保→品質チェック→効果測定のサイクルを回すことが重要です。
前述のJIPDEC/ITR調査では、外向きDXで顧客体験・接点のデジタル化が成果を上げている企業が30.9%と最も高い結果でした。これは顧客接点を重視したマーケティングが効果的であることを示しています。
以下のチェックリストで、自社のマーケティング体制を確認してください。
【チェックリスト】IT企業のコンテンツマーケティング成果チェックリスト
- ターゲットペルソナが明文化されている
- ターゲットの課題・悩みを具体的に言語化できている
- 自社のUSP(独自の強み)が定義されている
- 競合サービスとの差別化ポイントが明確になっている
- 全コンテンツに適用するメッセージガイドラインがある
- コンテンツのトーン&マナーが統一されている
- 制作前にターゲット・USPを確認するフローがある
- 外注先にもターゲット・USP情報を共有している
- コンテンツの品質チェック基準が定められている
- 承認フロー(誰が・いつ・何を確認するか)が明確になっている
- KPIがPV以外の実質指標(商談化率・CV数等)で設定されている
- 営業チームからのフィードバックを収集する仕組みがある
- 定期的なコンテンツ効果測定を実施している
- 効果測定結果を次の施策に反映している
- マーケティングと営業の連携体制が整っている
全コンテンツに戦略を反映させる仕組み
戦略を全コンテンツに反映させるには、ドキュメント化と共有の仕組みが必要です。具体的には以下のステップで進めます。
1. 戦略情報のドキュメント化
ターゲットペルソナ、USP、競合分析、メッセージガイドラインを1つのドキュメントにまとめます。制作に関わる全員がアクセスできる場所に保存し、定期的に更新します。
2. 制作プロセスへの組み込み
コンテンツ制作の企画段階で、戦略ドキュメントを確認するステップを必須にします。「このコンテンツのターゲットは誰か」「USPはどう訴求するか」を明確にしてから制作に入ります。
3. 品質チェック・承認フロー
制作後のレビューでは、戦略との整合性をチェックします。ターゲットに適した内容か、USPが一貫して伝わるか、トーンがガイドラインに沿っているかを確認します。
4. 外注先との連携
コンテンツ制作を外注する場合も、戦略ドキュメントを共有します。外注先を「チームの一員」として位置づけ、一貫したメッセージを維持できる体制を構築します。
まとめ|IT企業のマーケティング成功の鍵
本記事では、IT企業のマーケティングで成果を出すための施策と実践ポイントを解説しました。
重要なポイント
- IT企業のマーケティングでは、リード獲得から商談化への転換が課題となりやすい
- 施策を増やすだけでは成果は出ない。戦略設計の一貫性が重要
- ターゲット・USP・競合を明確にし、全コンテンツに反映させる仕組みをつくる
- 品質チェック・承認フローを設計し、メッセージのブレを防ぐ
- 効果測定と改善のサイクルを回し、継続的に最適化する
まずは本記事のチェックリストを活用して、自社のマーケティング体制を確認してください。チェックできていない項目があれば、そこから改善を始めることをお勧めします。
改めて強調すると、IT企業のマーケティングで成果を出すには、施策を増やすだけでなく、ターゲット・USP・競合を明確にした戦略を全コンテンツに一貫して反映させ、品質を担保する仕組みを整えることが重要です。
