「リードの質が低い」問題は戦略共有の不足が原因
意外かもしれませんが、営業とマーケティングの対立は、KPIの違いやコミュニケーション不足だけでなく、「誰に・何を・なぜ」という戦略の共有不足が根本原因であり、両部門でターゲット定義と訴求軸を統一し、CVR・商談化率を共通KPIとして追うことで真の連携が実現できます。
「マーケティングが獲得したリードの質が低い」「営業が適切にフォローしてくれない」——このような対立を抱えるBtoB企業は少なくありません。2025年Ask One調査によると、投資対効果として「受注金額」まで追跡する企業は30.2%にとどまります。また、Web広告運用を強化する理由として「商談化率が高いから」と回答した企業は13.8%にとどまり、多くの企業がリード数重視の状態にあることがわかります。
この記事では、営業とマーケティングの対立が起こる根本原因と、戦略共有による解決方法を解説します。
この記事で分かること
- 営業とマーケティングが対立する構造的な原因
- 「定期ミーティングを増やしても解決しない」理由
- 戦略共有とKPI統一の具体的な進め方
- 自社の連携度を診断できるチェックリスト
営業とマーケティングが対立する主な原因
営業とマーケティングが対立する主な原因は、KPIの分断、リード温度感の定義不在、組織体制の問題の3つに整理できます。
リード温度感(ホット/コールド) とは、見込み顧客の購買意欲の高さを表す指標です。営業・マーケ間で定義を共有することで引き継ぎの質が向上します。
パイプラインとは、リード獲得から商談・受注までの営業プロセス全体を指します。営業・マーケが共通指標として追跡することで連携が強化されます。
2025年調査によると、BtoB中小企業の新規開拓で「紹介」依存が60.7%を占め、KPI未設定企業が59%に上ります。また、リード獲得課題のトップは「顧客とのコミュニケーションができていない」(26.9%)であり、営業とマーケティング間の情報共有不足を反映しています。さらに、BtoBマーケティングの課題上位は「人手不足、体制が整っていない」(34.3%)、「予算が少ない」(26.1%)となっています。
【比較表】対立原因と解決策の対応表
| 対立原因 | 具体的な問題 | 解決策 |
|---|---|---|
| KPIの分断 | マーケはリード数、営業は受注を追う | CVR・商談化率を共通KPIに設定 |
| リード温度感の定義不在 | ホット/コールドの基準が曖昧 | 両部門で定義を言語化・合意 |
| ターゲット定義の不一致 | 追うべき顧客像が部門ごとに異なる | ペルソナを共同で策定 |
| 情報共有不足 | リード情報が営業に伝わらない | MA/SFAでデータ連携を構築 |
| 組織体制の問題 | 人手不足で連携に時間を割けない | 優先度の高い施策から段階的に着手 |
マーケは「リード数」、営業は「受注」を追うKPIの分断
マーケティング部門と営業部門が異なるKPIを追うことで、「リードの質」を巡る対立が生じます。2025年1月調査(n=181)によると、Web広告予算増額予定企業の55.8%が「リード獲得効果が高いため」を理由に挙げ、53.8%が「新規リード獲得につながりやすいから」と回答しています。
このように、マーケティング側がリード数を追う傾向が強い一方で、営業側は受注や売上を重視します。この指標の違いが「マーケが獲得したリードは質が低い」という認識につながります。
リードの「温度感」定義が共有されていない
「ホットリード」「コールドリード」の定義が部門間で共有されていないと、引き継ぎの質が下がります。マーケティングが「ホット」と判断したリードを営業がフォローしても、営業側の基準では「まだ検討初期段階」というケースが発生します。
リード温度感の定義を両部門で言語化し合意することが、連携強化の第一歩となります。具体的には「どのような行動を取ったらホットとみなすか」「どの条件を満たしたら営業に引き渡すか」を明文化します。
「定期ミーティングを増やしても解決しない」理由
**対立を「コミュニケーション不足」だけの問題と捉え、定期ミーティングを増やしても根本解決しません。**マーケが「PV・リード数」、営業が「受注数」と別々のKPIを追い続ける限り、リードの質を巡る対立は解消しないからです。
前述のとおり、投資対効果として「受注金額」まで追跡する企業は30.2%にとどまります。追跡指標が揃っていない状態でミーティングを増やしても、議論の前提が異なるため建設的な連携にはつながりません。
表面的な対処ではなく、両部門が同じ指標を見て議論できる状態を作ることが本質的な解決策です。
対立解消のための戦略共有とKPI統一の進め方
対立を解消するには、「誰に・何を・なぜ」という戦略を両部門で共有し、CVR・商談化率を共通KPIとして設定することが有効です。
MA(Marketing Automation) とは、マーケティング活動を自動化するツールです。リードナーチャリングや行動スコアリングで営業連携を効率化します。
SFA(Sales Force Automation) とは、営業支援システムです。商談管理や活動履歴の共有でマーケティングとのデータ連携を実現します。
ただし、MA/SFAはツールありきではなく、リード温度感の定義やターゲット像を両部門で合意した後に導入することが重要です。定義が曖昧なままツールを入れても、データ連携の効果は限定的になります。
ターゲット定義と訴求軸を両部門で統一する
戦略共有の第一歩は、ターゲット顧客像と訴求軸を両部門で統一することです。「誰に」「何を」「なぜ」を言語化し、ブリーフシートなどの形式で共有します。
具体的には以下の項目を両部門で合意します。
- ターゲット: 業種、企業規模、役職、課題
- 訴求軸: 自社の強み、競合との差別化ポイント
- 引き渡し基準: どの条件を満たしたら営業に引き渡すか
これらを言語化することで、マーケティング施策と営業アプローチに一貫性が生まれます。
CVR・商談化率を共通KPIとして追う
リード数ではなく、CVR(コンバージョン率)や商談化率を共通KPIとして設定します。パイプライン全体を通じて、どの施策が商談・受注に貢献したかを可視化することで、両部門の議論が建設的になります。
受注金額までの追跡を習慣化することで、マーケティング施策の営業貢献度が明確になり、両部門の信頼関係が構築されます。
営業・マーケ連携を強化する具体的な施策
連携を強化するには、組織的な取り組みが必要です。以下のチェックリストで自社の連携度を診断してみてください。
CRO(Chief Revenue Officer) とは、売上責任者を指します。マーケティング・営業・カスタマーサクセスを統括し、部門間の対立を解消して収益最大化を担う役職です。近年、CRO設置で部門対立を解消する組織改革が注目されています。
【チェックリスト】営業・マーケ連携度診断チェックリスト
- ターゲット顧客像(ペルソナ)が両部門で合意されている
- 自社の強み・訴求軸が言語化されている
- リード温度感(ホット/コールド)の定義が共有されている
- リードの引き渡し基準が明文化されている
- CVR・商談化率を共通KPIとして追跡している
- 受注金額までマーケティング施策の効果を追跡している
- 定期的なリードレビュー会議を実施している
- リード情報がMA/SFA/CRMで共有されている
- マーケティングと営業の担当者が直接コミュニケーションを取れる
- 施策の改善提案を双方向で行う文化がある
- 経営層が連携強化にコミットしている
- 連携に関するKPIが人事評価に反映されている
チェックが付かない項目があれば、優先度の高いものから段階的に整備を進めることで、連携度を高めることができます。大規模な組織改革は不要で、まずリード温度感の定義共有など小さな合意から始められます。
まとめ:戦略共有と共通KPIで営業・マーケの対立を解消する
本記事では、営業とマーケティングの対立が起こる原因と、解決策を解説しました。
対立の根本原因は、「コミュニケーション不足」だけでなく、「誰に・何を・なぜ」という戦略の共有不足にあります。定期ミーティングを増やすだけでは根本解決しません。両部門でターゲット定義と訴求軸を統一し、CVR・商談化率を共通KPIとして追うことで、リードの質を巡る対立を解消できます。
まずは本記事のチェックリストで自社の連携度を診断し、不足している項目から優先的に着手してください。リード温度感の定義共有など、小さな合意から始めることで、段階的に連携を強化できます。
営業とマーケティングの対立は、KPIの違いやコミュニケーション不足だけでなく、「誰に・何を・なぜ」という戦略の共有不足が根本原因であり、両部門でターゲット定義と訴求軸を統一し、CVR・商談化率を共通KPIとして追うことで真の連携が実現できます。
