なぜオウンドメディアの予算は通りにくいのか—本記事の目的
結論から言えば、オウンドメディアの予算説得は、PVではなく商談・受注への貢献を軸に説明することで、経営層の理解を得やすくなります。
2025年の調査によると、企業の広告・マーケティング予算は32.3%が「増加予定」、59.8%が「昨年度と同程度」を維持しており、前年の増加予定42.0%から約10ポイント減少しています。予算獲得の競争は厳しさを増しており、「効果が見えにくい」「予算がない」と言われてオウンドメディアの企画が進まない担当者も多いのではないでしょうか。
一方で、予算停滞下でも企業が重点投下する施策として「オウンドメディア・ECサイト強化」「コンテンツマーケティング強化」「顧客ロイヤルティ向上」が上位に挙がっています。つまり、オウンドメディアへの関心は高いものの、予算承認を得るための説明方法に課題があるケースが多いのです。
この記事で分かること
- オウンドメディアの費用相場と投資判断の基本
- PVではなく商談・受注でROIを説明する方法
- 予算説得資料に必須の項目とチェックリスト
- 上司・経営層からの想定反論への回答テンプレート
- 経営層に刺さるストーリーの組み立て方
オウンドメディアの費用相場と投資判断の基本
オウンドメディアの予算説得を成功させるには、まず費用相場を正しく把握し、投資判断の基本的な考え方を理解しておくことが重要です。
コンテンツマーケティングの適正予算として「5〜30万円」が6割超の企業の相場感とされています(ただし調査対象・サンプル数が不明確なため、参考値として活用してください)。また、オウンドメディアの構築初期費用は50万円〜数百万円、運用月額は10〜50万円が一般的相場です。記事単価はSEO記事1本あたり5〜15万円程度とされています。
これらの費用は業界・企業規模によって大きく変動するため、自社の状況に合わせた見積もりが必要です。
構築費用と運用費用の目安
オウンドメディアの費用は、大きく「構築費用」と「運用費用」に分けられます。
構築費用には、戦略設計、サイトデザイン、CMS構築などが含まれます。シンプルな構成であれば50万円程度から、本格的な設計を行う場合は数百万円規模になることもあります。
運用費用は月額10〜50万円が一般的で、記事制作費が大きな割合を占めます。SEO記事1本あたり5〜15万円が相場ですが、BtoB向けの取材記事や専門性の高い記事は高めになる傾向があります。
投資対効果(ROI)の考え方
ROI(Return on Investment) とは、投資対効果のことです。オウンドメディアにおいては、以下の計算式で算出されます。
ROI = (獲得リード数 × 商談化率 × 成約率 × 平均受注額 - 運用コスト) ÷ 運用コスト
KPI(Key Performance Indicator) は重要業績評価指標のことで、オウンドメディアではPV、セッション数、CV数、商談化率などを設定します。
重要なのは、PVやセッション数だけでなく、商談・受注につながる指標でROIを測ることです。この点については次のセクションで詳しく解説します。
PVではなく商談・受注でROIを説明する方法
オウンドメディアの予算説得で最も重要なのは、PVや記事数ではなく、商談・受注への貢献を軸にROIを説明することです。
よくある失敗パターンとして、PVや記事数など表面的な指標でROIを説明しようとすることがあります。しかし、この方法では成果が出ません。経営層が知りたいのは「いくら投資して、いくら売上につながるか」であり、PVでは投資判断ができないのです。
2025年の調査では、オウンドメディア経由売上が会社全体売上の10%未満の企業が13.6%、「売上が上がっていない」と回答した企業が14%に上ります。これらの企業の多くは、PV指標で成果を測っており、商談・受注への貢献を可視化できていない可能性があります。
経営層が知りたいのは「売上への貢献」
経営層は「いくら投資して、いくら売上につながるか」を知りたいと考えています。PVは中間指標であり、最終ゴールではありません。
商談化率とは、リード(見込み客)が商談に至る割合のことです。BtoBでは11-20%がボリュームゾーンで、15%が目標値の目安とされています。
CV(Conversion) とは、コンバージョンのことで、資料請求、問い合わせ、無料トライアル申込など目標行動の完了を指します。
これらの指標を使って、商談・受注への貢献を数値で説明することが重要です。
商談化率・受注額を軸にした説明例
成功事例として、あるBtoB SaaS比較メディアではリード商談化率が他チャネル比3倍以上、記事掲載2ヶ月でコンバージョンの20%を占める成果を達成しています(自己申告データであり第三者検証はされていない点に注意が必要です)。
また、別のBtoB企業事例では、過去3年(2022-2025)で資料ダウンロード34倍、受注額9倍という成果が報告されています(継続更新・導線強化が成功要因とされており、自己申告データである点に注意が必要です)。
(例)月額30万円の運用費で運用した場合
- 月間リード獲得数: 50件
- 商談化率: 15%(商談数: 7.5件)
- 成約率: 20%(成約数: 1.5件)
- 平均受注額: 100万円(売上: 150万円)
- ROI = (150万円 - 30万円) ÷ 30万円 = 400% ※実際の成果は業種・商材・運用体制により大きく変動します。自社データでの検証が必要です。
このように、商談化率・受注額を軸に説明することで、経営層にとって理解しやすいROIを提示できます。
予算説得資料の作り方と必須項目
予算説得資料には、経営層が投資判断できる情報を網羅的に含める必要があります。
2025年の調査では、今後検討予定または興味のあるPR手法として「オウンドメディア運用」が41.4%と最も高く、実際に強化している広報手法としても21.1%から23.1%へ増加しています。オウンドメディアへの関心が高まっている今こそ、説得力のある資料で予算承認を勝ち取る好機です。
【チェックリスト】予算説得資料の必須項目チェックリスト
- 現状の課題を明確に記載している(リード獲得不足、広告費依存など)
- オウンドメディアで解決できる課題を具体的に説明している
- 競合他社のオウンドメディア活用状況を調査している
- 構築費用の見積もりを取得している(50万円〜数百万円の範囲で)
- 運用費用の月額を算出している(10〜50万円の範囲で)
- 記事制作費の単価を把握している(5〜15万円/本)
- 年間の総投資額を明記している
- PVではなく商談化率・受注額でROIを説明している
- 想定される商談数・受注数を試算している
- 成果が出るまでの期間を明記している(6ヶ月〜1年)
- 中長期的なメリットを説明している
- 広告費依存からの脱却メリットを説明している
- 成果測定の方法とKPIを定義している
- 業績変化時の対応方針を記載している
- 類似企業の成功事例を記載している
- 失敗リスクと対策を記載している
- 運用体制(内製/外注)を明記している
- スケジュールのマイルストーンを設定している
- 段階的な投資プランを提示している
- 撤退基準を明確にしている
経営層に刺さるストーリーの組み立て方
予算説得資料は、以下の流れでストーリーを組み立てると効果的です。
- 現状の課題: リード獲得コストの上昇、広告依存のリスクなど
- 解決策としてのオウンドメディア: 安定した集客基盤の構築
- 期待効果: 商談化率・受注額を軸にしたROI試算
- 投資額: 構築費用と運用費用の内訳
- 回収見込み: 中長期的な投資回収シナリオ
重要なのは、経営層への説得では「広告費依存からの脱却」「安定した集客基盤の中長期構築」を訴求することです。
上司・経営層からの想定反論と回答例
予算説得の場では、上司や経営層から反論が出ることが一般的です。想定される反論とその回答を事前に準備しておくことで、説得の成功率が高まります。
【テンプレート】上司への想定問答テンプレート
反論1: 「効果が見えにくい」
回答例: 「PVではなく、商談化率・受注額を軸にROIを測定します。月間{{想定リード数}}件のリード獲得、商談化率{{想定商談化率}}%で月間{{想定商談数}}件の商談創出を目標とし、Google AnalyticsとCRMを連携して成果を可視化します。」
差し込み変数:
- {{想定リード数}}: 自社の見込みリード獲得数
- {{想定商談化率}}: 業界平均または自社目標の商談化率(BtoB平均15%)
- {{想定商談数}}: リード数×商談化率で算出した商談数
反論2: 「予算がない」
回答例: 「2025年の調査では、予算停滞下でもオウンドメディア強化を重点施策とする企業が上位に挙がっています。初期は{{最小予算}}万円からスタートし、成果を見ながら段階的に投資を拡大するプランをご提案します。」
差し込み変数:
- {{最小予算}}: 最小限の構築・運用予算
反論3: 「すぐに成果が出るのか」
回答例: 「オウンドメディアは6ヶ月〜1年の中長期施策です。短期的な広告効果とは異なり、コンテンツが資産として蓄積され、長期的に安定した集客基盤となります。{{評価タイミング}}ヶ月後に中間評価を行い、継続判断をご相談させてください。」
差し込み変数:
- {{評価タイミング}}: 中間評価を行う時期(例: 6ヶ月後)
反論4: 「他の施策に投資した方がいいのでは」
回答例: 「リスティング広告のクリック単価は年々上昇傾向にあり、広告依存はコスト増のリスクがあります。オウンドメディアは{{CPA低減効果}}として機能し、広告費に依存しない集客基盤を構築できます。」
差し込み変数:
- {{CPA低減効果}}: オウンドメディアによるCPA低減の期待効果
「効果が見えにくい」への回答
「効果が見えにくい」という反論に対しては、商談・受注起点で説明すれば可視化できることを伝えましょう。
PVやセッション数ではなく、リード獲得数→商談数→受注数という流れで成果を追跡する仕組みを提案します。CRMとの連携により、どの記事がどの商談につながったかを可視化できることを説明すると効果的です。
「予算がない」「すぐに成果が出るのか」への回答
オウンドメディアは6ヶ月〜1年の中長期施策であることを正直に伝えることが重要です。短期成果の過度な期待を煽ると、かえって信頼を失うリスクがあります。
「即時性」を強調すると予算転用リスクが高まるため、長期投資としての合意形成が必要です。成果が出る前の業績変化に対応できるよう、段階的な投資プランや撤退基準も事前に合意しておくことを推奨します。
まとめ:PVではなく商談・受注で説得する
オウンドメディアの予算説得を成功させるためのポイントを整理します。
- PVではなく商談・受注で説明する: 経営層が知りたいのは「いくら投資して、いくら売上につながるか」
- 費用相場を正しく把握する: 構築50万円〜、月額10〜50万円が一般的
- チェックリストで資料を点検する: 必須項目を網羅した説得力のある資料を作成
- 想定反論への回答を準備する: 「効果が見えにくい」「予算がない」への対応策を用意
- 中長期投資としての合意を得る: 6ヶ月〜1年の時間軸で成果を測定する合意を取り付ける
オウンドメディアの予算説得は、PVではなく商談・受注への貢献を軸に説明することで、経営層の理解を得やすくなります。
本記事のチェックリストとテンプレートを活用して、経営層に響く予算説得資料を作成してみてください。
