オウンドメディアの閉鎖判断が難しい背景と本記事の目的
意外かもしれませんが、オウンドメディアの閉鎖判断は、問題を「戦略」と「運用」の2軸で切り分けて診断することで明確になり、戦略が正しければ品質管理プロセスの整備で再生できる可能性があります。
「オウンドメディアを1年以上運営しているが、成果が見えない」「リソースを投下し続けるべきか、閉鎖して他施策に振り向けるべきか判断がつかない」という悩みを抱えているマーケティング担当者は少なくありません。
しかし、安易に閉鎖を決めることにはリスクがあります。オウンドメディア閉鎖時にはそのサイトへのリンクの9割が消失し、関連するサービスサイトの検索順位まで急落するケースが報告されています。被リンクとは、外部サイトから自サイトへのリンクを指し、SEO評価に影響する重要な要素です。閉鎖によってこの資産が失われると、回復が困難になることがあります。
この記事で分かること
- オウンドメディアが閉鎖に至る主な理由と構造的な背景
- 閉鎖を判断する際に見るべき具体的な指標・基準
- 「戦略の問題」と「運用の問題」を切り分けて診断する方法
- 閉鎖せずに継続・再生するための条件と選択肢
オウンドメディアが閉鎖に至る主な理由
オウンドメディアが閉鎖に至る背景には、予算・リソースの問題と成果指標の設定不足という2つの構造的な要因があります。これらを理解することで、自社の状況を客観的に評価できるようになります。
よくある失敗パターンとして、「PVが伸びないからオワコン」「人手が足りないから閉鎖」と単一の理由で判断してしまうケースがあります。しかし、戦略と運用の問題を切り分けずに閉鎖を決めてしまうと、本来は再生可能だったメディアを手放すことになりかねません。
検索順位が4位以下になるとクリック率が10%以下に低下し、10位ではわずか2.5%にとどまるというデータがあります。CTR(Click Through Rate) とは、検索結果に表示された際にクリックされた割合を指します。上位表示ができなければ流入が得られないのは事実ですが、それが戦略の問題なのか運用の問題なのかを見極めることが重要です。
予算・リソースの問題
成果が出る前に予算が他施策に転用されてしまうケースは少なくありません。売上目標の未達や業績不振が発生すると、すぐにオウンドメディアへの投資が削減対象になる可能性があります。
オウンドメディアは成果が出るまでに時間がかかる施策です。経営層との合意なく始めてしまうと、成果が出る前に打ち切られるリスクが高まります。
成果指標の設定不足
KGI(Key Goal Indicator) とは、最終目標を数値化した指標であり、オウンドメディアでは問い合わせ数や売上が該当します。KPI(Key Performance Indicator) とは、KGI達成に向けた中間指標であり、セッション数、CV数、公開記事数などを設定します。
BtoB企業のKGI例として月間問い合わせ数30件、月間売上500万円、KPI例として月間セッション数10,000、月間コンバージョン数50、記事公開数月4本、検索順位10位以内のキーワード数30個が設定されるケースがあります(あくまで一例であり、企業規模や業種により異なります)。
これらの指標が設定されていないと、「成果が出ていない」という判断自体が曖昧になり、閉鎖すべきかどうかの判断ができません。
閉鎖を判断する際に見るべき指標・基準
閉鎖判断の際には、PVだけでなく、CVRやKGIとの連動で総合的に判断することが重要です。単一の指標だけで判断すると、本質的な問題を見誤る可能性があります。
CVR(Conversion Rate) とは、訪問者のうち問い合わせ・資料請求などの成果に至った割合を指します。PVが増えてもCVRが低ければ成果にはつながりません。
定量指標での判断ポイント
検索順位が4位以下になるとクリック率が10%以下に低下し、10位ではわずか2.5%にとどまります。目標としていたキーワードで上位表示ができていない場合は、キーワード戦略の見直しが必要です。
判断の目安として、以下の指標を定期的にモニタリングすることをおすすめします。
- 月間セッション数の推移
- コンバージョン数(問い合わせ・資料請求など)
- 検索順位10位以内のキーワード数
- CVR(コンバージョン率)の推移
これらの指標が継続的に目標を下回っている場合に、閉鎖を検討する判断材料となります。ただし、数値は参考例であり、企業規模・業種により適切な基準は異なります。
「戦略の問題」と「運用の問題」を切り分けて診断する
オウンドメディアの問題を「戦略」と「運用」の2軸で切り分けることで、適切な対処法が明確になります。戦略に問題がある場合と運用に問題がある場合では、取るべきアクションが大きく異なるためです。
以下のチェックリストを使って、自社のオウンドメディアの問題がどちらに起因するかを診断してください。
【チェックリスト】オウンドメディア閉鎖判断チェックリスト
- ターゲット(誰に届けるか)が明確に定義されている
- 競合との差別化ポイント(USP)が設定されている
- KGI(最終目標)が数値で設定されている
- KPI(中間指標)が設定され、定期的にモニタリングしている
- コンテンツの方向性・テーマが戦略に基づいて決められている
- 月間の記事公開本数が計画通りに実行されている
- 記事の品質チェック・承認フローが整備されている
- 担当者の工数が十分に確保されている
- 外部パートナー(ライター・編集者)との連携体制がある
- 公開後の効果測定と改善サイクルが回っている
- 経営層との継続判断の基準が合意されている
- 閉鎖した場合のSEOダメージを把握している
- 閉鎖以外の選択肢(運営移譲など)を検討した
上記のうち、前半(ターゲット〜コンテンツ方向性)にチェックが入らない場合は戦略の問題、後半(記事公開本数〜改善サイクル)にチェックが入らない場合は運用の問題である可能性が高いです。
戦略の問題が原因の場合
戦略に問題がある場合の典型的な特徴は以下の通りです。
- ターゲットが「自社製品を買いそうな人」程度の曖昧な定義にとどまっている
- 競合メディアとの差別化ポイントがない
- 記事テーマがキーワードボリュームだけで決められている
- 誰に・何を・なぜ届けるかが記事ごとにバラバラ
戦略が不明確なまま運用を続けても、成果は出にくいのが現実です。この場合は、閉鎖の前に戦略の再設計を検討する価値があります。
運用の問題が原因の場合
運用に問題がある場合の典型的な特徴は以下の通りです。
- 記事の更新頻度が不安定で、放置期間がある
- 品質チェックが属人化しており、基準が曖昧
- 担当者の工数が確保できず、片手間になっている
- 効果測定をしておらず、何が効いているかわからない
戦略が正しく設計されているにもかかわらず成果が出ていない場合は、運用体制の改善で再生できる可能性があります。品質管理プロセスの整備やリソース確保が鍵となります。
閉鎖せずに継続・再生するための条件
閉鎖を決める前に、継続・再生の可能性を検討することが重要です。閉鎖によるSEOダメージは大きく、一度失った検索評価を取り戻すのは困難だからです。
オウンドメディア閉鎖の理想的な準備期間は半年以上とされています。閉鎖を決める場合でも、計画的に進めることでダメージを最小化できます。
体制・プロセスの整備で再生を目指す
戦略が正しければ、運用体制の整備で再生できる可能性があります。具体的には以下のような取り組みが有効です。
- 月に一定本数の記事を安定して公開できる体制の構築
- 品質チェック・承認フローの整備
- 効果測定と改善サイクルの確立
- 担当者の工数確保と経営層との合意
品質管理プロセスが整備されていないために公開が滞っているケースでは、ファクトチェックや承認フローを仕組み化することで改善が見込めます。
閉鎖以外の選択肢を検討する
閉鎖以外の選択肢として、運営を外部パートナーに移譲するケースもあります。事業会社が運営していたオウンドメディア「ソレドコ」をはてなが引き継いだケースがあり、閉鎖ではなく運営移譲という選択肢も存在します。
内部リソースが不足している場合でも、外部パートナーへの移譲や協業によってメディアを継続できる可能性があります。閉鎖を決定する前に、これらの選択肢も検討してみてください。
まとめ:戦略と運用を切り分けて正しい判断を
この記事では、オウンドメディアの閉鎖判断を「戦略」と「運用」の2軸で見極める方法を解説しました。
要点を整理すると以下の通りです。
- 閉鎖には被リンク消失など大きなSEOダメージがある
- 「PVが伸びない」「人手がない」という単一理由での判断は危険
- 問題が戦略にあるのか運用にあるのかを切り分けて診断する
- 戦略が正しければ、運用改善で再生できる可能性がある
- 閉鎖以外の選択肢(運営移譲など)も検討する
- 閉鎖を決める場合も、理想的には半年以上の準備期間を設ける
まずは本記事のチェックリストを使って、自社のオウンドメディアの問題がどこにあるかを診断してみてください。
オウンドメディアの閉鎖判断は、問題を「戦略」と「運用」の2軸で切り分けて診断することで明確になり、戦略が正しければ品質管理プロセスの整備で再生できる可能性があります。
