オウンドメディア編集長に求められる役割とは
実はオウンドメディアの編集長の最も重要な役割は、個別の記事編集ではなく、「誰に・何を・なぜ」という戦略を全記事に構造的に反映させる仕組みを作り、品質を担保しながら継続的に運用を回すことです。
「今後検討予定のPR手法」としてオウンドメディア運用が41.4%で最多となり、過去1年で強化したPR手法としても23.1%(前年21.1%から増加)を占めるなど、オウンドメディアへの注目は高まっています。しかし、編集長の役割が曖昧なまま運用を始めてしまい、記事の校正や公開作業に追われる状況に陥っているケースも少なくありません。
編集長とは、オウンドメディア全体の戦略設計、進捗管理、意思決定を行う統括的なリーダーシップポジションです。単なる編集者ではなく、メディア全体の方向性を決定し、成果に責任を持つ役割を担います。
この記事で分かること
- 編集長が「記事の編集」に追われると成果が出ない理由
- 編集長の本来の役割である戦略設計と仕組みづくり
- 編集長に必要なスキルと編集体制の構築方法
- 品質担保と承認フローの設計ポイント
「記事の編集」に追われる編集長が成果を出せない理由
編集長の仕事を「記事の校正・編集」と捉え、個別記事の品質管理に終始してしまうアプローチは、よくある失敗パターンです。この考え方では、PVは増えても商談・CVにつながらないメディアになりやすいと言われています。
SEOコンテンツ制作の課題として、半数以上(54.5%)の担当者がコンテンツ制作に課題を感じているという調査結果があります。この課題の多くは、個別記事の品質管理に追われて戦略的な視点を持てないことに起因しています。
「記事の編集」に終始した場合に起こる問題:
- 記事ごとに主張がバラバラになる: 個別最適化を繰り返すと、メディア全体としてのメッセージが統一されない
- PVは増えても商談につながらない: 検索流入は増えても、読者を次のアクションに導く導線が設計されていない
- ライターへの指示が属人化する: 編集長の頭の中にしか基準がなく、品質が安定しない
- 編集作業に追われて戦略を考える時間がない: 目の前のタスクに忙殺され、中長期的な視点を持てない
編集長の本来の役割は、個別記事の編集ではなく、メディア全体の戦略と仕組みを設計することにあります。
編集長の本来の役割:戦略設計と仕組みづくり
編集長が担うべき最も重要な役割は、「誰に・何を・なぜ」という戦略を全記事に構造的に反映させる仕組みを作ることです。
メディア型運営とは、編集部設置・編集長任命による一元管理で、社内専任担当者と外部ライターの役割分担を明確化する体制を指します。この体制を構築するうえで、編集長は以下の領域を統括する必要があります。
編集長が設計すべき戦略要素:
- ターゲット定義: 誰に向けて発信するのか(ペルソナ設計)
- コアメッセージ: 何を伝えるのか(USP・差別化ポイント)
- 編集方針: どのようなトーン&マナーで書くか(NG表現含む)
- KGI/KPI: なぜこのメディアを運営するのか(目標設定)
- 承認フロー: 誰がどのタイミングで品質を担保するか
これらの戦略要素をデータ化・文書化し、全記事に反映させる仕組みを作ることが編集長の本来の役割です。企業規模や業種によって最適な形は異なるため、自社に合わせた調整が必要になります。
【チェックリスト】オウンドメディア編集長の役割チェックリスト
- ターゲットペルソナを文書化し、全ライターに共有している
- メディアのコアメッセージ(USP)を明文化している
- 編集方針(トーン&マナー、NG表現)をガイドライン化している
- KGI(最終目標)を明確に設定している
- KGIに紐づくKPI(中間指標)を定義している
- 記事企画の承認プロセスが明確になっている
- ライターへのフィードバック基準が統一されている
- 公開前の最終承認者と判断基準が決まっている
- 定期的な効果測定のサイクルが回っている
- 効果測定結果を次の企画に反映する仕組みがある
- 外部リソース(ライター・制作会社)の管理体制がある
- AI活用時の品質チェック基準を設けている
- 記事公開後の修正・更新ルールが定まっている
- チームメンバーの役割分担が明確になっている
- 社内ステークホルダーとの連携体制がある
判定基準
- 13-15項目: 体制が整っている。継続的な改善フェーズに移行可能
- 9-12項目: おおむね整っているが、一部強化が必要
- 5-8項目: 基本体制の見直しを推奨
- 0-4項目: 戦略設計から再検討が必要
編集長に必要なスキルと編集体制の構築
編集長には、記事の編集スキルだけでなく、戦略設計・チームマネジメント・効果測定など複合的なスキルが求められます。
企業の生成AI導入方針は42.7%に達する一方、実際の活用率は17.3%にとどまるという調査結果があります。AI時代においても、編集長は「人間中心の判断者」として位置づけられ、AIを下書き・リサーチの補助ツールとして活用しつつ、戦略判断・品質承認は人間が担うハイブリッド体制が主流となっています。
KGI(重要目標達成指標) とは、オウンドメディアの最終目標を示す指標です。例として、月間問い合わせ数、月間売上、採用応募者数などが挙げられます。
KPI(重要業績評価指標) とは、KGI達成に向けた中間指標です。例として、月間セッション数、コンバージョン数、記事公開数などがあります。
編集長には専任性が重要と言われています。他業務に追われていると戦略設計や品質管理に集中できず、記事ごとに主張がブレやすくなるためです。兼任の場合は役割範囲を明確にし、戦略設計・最終承認に専念できる体制を構築することが推奨されます。
【比較表】編集長の役割と必要スキル対応表
| 役割 | 必要スキル | 具体的なタスク例 |
|---|---|---|
| 戦略設計 | マーケティング知識、ビジネス理解 | ペルソナ設計、KGI/KPI設定、編集方針策定 |
| ライター管理 | マネジメント力、コミュニケーション力 | 外注管理、フィードバック、スケジュール調整 |
| 品質管理 | 編集スキル、SEO知識 | 原稿チェック、ファクトチェック、表記統一 |
| 効果測定 | データ分析力、ツール活用力 | GA4分析、CVR計測、レポート作成 |
| 外部連携 | 交渉力、プロジェクト管理力 | 取材調整、外部パートナー管理、予算管理 |
| AI活用判断 | AI理解、品質判断力 | AI活用範囲の決定、出力品質の評価 |
品質担保と承認フローの設計方法
品質を担保しながら継続的に運用を回すためには、承認フローの設計が不可欠です。
AI活用が進む中でも、編集長による品質担保の重要性は変わりません。AIを下書きやリサーチの補助ツールとして活用しつつ、戦略判断・品質承認は人間が担う体制を構築することが求められます。
承認フロー設計のポイント:
- 企画段階での承認: 記事テーマがターゲットペルソナに適しているか、KPIに貢献するかを確認
- 下書き段階でのチェック: 構成・論理展開・ファクトチェックを実施
- 公開前の最終承認: トーン&マナー・NG表現・法務チェックを経て公開判断
- 公開後の効果測定: 定期的にパフォーマンスを計測し、改善施策を検討
ファクトチェックで確認すべき項目:
- 数値・統計データの出典は信頼できるか
- 固有名詞(企業名、製品名、人名)は正確か
- 法的リスクのある表現はないか
- 競合への言及は適切か
- 最新情報に更新されているか
一次情報・独自性を重視したコンテンツがAI時代でも支持を獲得する傾向があります。インタビュー記事や自社事例など、他社が真似できないコンテンツを戦略的に配置することも編集長の重要な判断事項です。
まとめ:編集長は戦略の番人である
オウンドメディアの編集長に求められる役割について解説しました。要点を整理します。
- 編集長の本来の役割: 個別記事の編集ではなく、「誰に・何を・なぜ」という戦略を全記事に反映させる仕組みを作ること
- よくある失敗パターン: 記事の校正・編集に終始し、戦略的な視点を持てないまま運用してしまう
- 成功のポイント: 編集方針の文書化、承認フローの設計、効果測定サイクルの構築
編集長は「戦略の番人」として、メディア全体の一貫性と品質を守る役割を担います。記事単体の編集に追われるのではなく、仕組みで品質を担保する体制を構築することが、成果につながるメディア運営の第一歩です。
本記事で紹介したチェックリストを活用して、自社の編集体制を見直してみてください。オウンドメディアの編集長の最も重要な役割は、個別の記事編集ではなく、「誰に・何を・なぜ」という戦略を全記事に構造的に反映させる仕組みを作り、品質を担保しながら継続的に運用を回すことです。
