オウンドメディアの成果を経営層に説明できない問題
多くの方が悩むオウンドメディアの経営報告。結論は、オウンドメディアの経営報告は、PV・セッション数ではなく事業KPI(リード獲得数・商談貢献・受注影響)を軸に設計することで、経営層の理解と継続投資の承認を得られるということです。
「PVは増えているのに、経営会議で成果を報告できない」「『で、売上にどう貢献しているの?』と聞かれて答えられない」——こうした悩みを抱えるオウンドメディア担当者は少なくありません。
実際、2025年のLiKG調査によると、マーケティング担当者の半数以上がオウンドメディアのKPIを設定していない状況です。また、中小企業の6割が検索・コンテンツ施策を実施しているにもかかわらず、成果を実感しているのは1割にとどまっています。
なぜこのような「成果報告の壁」が生まれるのでしょうか。それは、多くの担当者がPVやセッション数といった「メディア指標」だけで報告しようとしているからです。経営層が見ているのは売上・商談数といった「事業指標」であり、両者の間には大きなギャップがあります。
この記事で分かること
- 経営層がオウンドメディア報告で本当に見ている指標
- メディア指標から事業KPIへの変換方法と計算式
- 経営報告書のテンプレートと作成手順
- 「で、売上にどう貢献しているの?」への具体的な答え方
経営層がオウンドメディア報告で見ている指標
経営層がオウンドメディアの報告で見ているのは、PVやセッション数ではなく、売上への貢献度です。BtoBオウンドメディアの74サイト分析によると、メディア経由売上が会社全体売上の10%未満の企業が13.6%、売上ゼロの企業が14%存在しています。
この数字が示すのは、オウンドメディアを運営しても売上貢献を実現できていない企業が少なくないという現実です。経営層はこうした状況を認識しており、だからこそ「PVが増えました」という報告だけでは納得しません。
2025年のマーケティング予算動向調査では、予算「増加予定」は32.3%で、前年の42.0%から約10ポイント減少しています。一方「同程度」は59.8%と横ばいです。予算増加が難しくなる中、ROI説明の重要性はますます高まっています。
よくある失敗パターンとして、PVやセッション数など「メディア指標」だけを報告し、経営層から「で、売上にどう貢献しているの?」と問われて説明できないケースがあります。この状態が続くと、投資縮小や撤退判断を招きかねません。この考え方は誤りです。
KGI(Key Goal Indicator) とは、重要目標達成指標のことで、売上・受注数など最終的な事業成果を測る指標です。一方、KPI(Key Performance Indicator) は、重要業績評価指標のことで、KGI達成に向けた中間指標(PV・CV数など)を指します。経営報告では、KPIがKGIにどうつながるかを説明することが重要です。
メディア指標と事業指標の違い
メディア指標と事業指標は、測定対象と活用目的が異なります。メディア指標(PV・セッション数・滞在時間など)はコンテンツのパフォーマンスを測定するものですが、それ単体では経営判断に使えません。
CVR(Conversion Rate) とは、コンバージョン率のことで、訪問者のうち目標アクションを完了した割合を指します。MQL(Marketing Qualified Lead) は、マーケティング活動で獲得した見込み顧客で、営業にパスする前段階のリードです。
メディア指標を事業指標に変換するためには、CVRやMQLを通じて売上への影響を可視化する必要があります。
メディア指標から事業KPIへの変換方法
メディア指標を事業KPIに変換する方法を理解することで、経営層への説明力が格段に高まります。重要なのは、PVやセッション数と売上の関係性を明確にすることです。
ある事例では、オウンドメディア施策でPV1.2倍・セッション1.3倍という控えめな増加に対し、資料ダウンロード34倍・受注額9倍という大きな事業成果を達成しています(過去3年の累計)。これは、メディア指標と事業成果が必ずしも比例しないことを示す好例です。
LTV(Life Time Value) とは、顧客生涯価値のことで、一顧客が取引期間全体で生み出す収益の総額を指します。売上貢献額を算出する際には、LTVの視点も重要になります。
【比較表】経営報告用KPI対照表(メディア指標→事業KPIへの変換)
| メディア指標 | 事業KPI | 変換方法 |
|---|---|---|
| PV(ページビュー) | 認知獲得数 | 新規ユーザー数で判定 |
| セッション数 | サイト訪問者数 | ユニークユーザー数で算出 |
| CV数(資料DL・問い合わせ) | リード獲得数 | フォーム送信完了数で計測 |
| CV数 × 商談化率 | 商談貢献数 | 営業データと突合 |
| 商談貢献数 × 受注率 × 受注単価 | 売上貢献額 | CRMデータと連携 |
| リピート訪問数 | 顧客育成(ナーチャリング)効果 | 再訪率・メール開封率で判定 |
売上貢献額の算出方法
売上貢献額は、CV数×商談化率×受注単価で算出できます。この計算式を使うことで、オウンドメディアの売上への貢献を数値化できます。
(例)月間50件のCV(資料ダウンロード)がある場合
- CV数: 50件
- 商談化率: 20%(CVのうち商談に進む割合)
- 受注率: 30%(商談のうち受注に至る割合)
- 受注単価: 100万円
- 売上貢献額 = 50 × 20% × 30% × 100万円 = 300万円/月 ※実際の成果は業種・単価・運用体制により大きく変動します
このように計算式を示すことで、経営層に対して「オウンドメディアは月間300万円の売上に貢献している」と説明できるようになります。
経営報告書の構成と作成手順
経営報告書は、月次(活動報告)と四半期(成果報告)の2段階で設計することが推奨されます。これにより、短期的な活動状況と中長期的な事業貢献の両方を経営層に伝えられます。
SMART原則とは、目標設定の5原則のことで、Specific(具体的)・Measurable(測定可能)・Achievable(達成可能)・Relevant(関連性)・Time-bound(期限)の頭文字を取ったものです。KPI設定時にはこの原則に従うことで、経営層との認識合わせがしやすくなります。
参考として、BtoB中小企業のKPI相場は月間セッション10,000、コンバージョン50、検索10位内キーワード30個程度とされています(ただし業種により大きく異なるため、自社の状況に合わせて調整が必要です)。
【テンプレート】月次オウンドメディア経営報告書テンプレート
■ オウンドメディア月次報告書
【報告期間】{{報告月}}月
【報告者】{{担当者名}}
【報告日】{{報告日}}
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1. サマリー(3行以内)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
・{{今月の主要成果を1行で}}
・{{課題があれば1行で}}
・{{来月の重点施策を1行で}}
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2. メディア指標(活動報告)
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| 指標 | 今月実績 | 前月比 | 目標値 |
|------|---------|--------|--------|
| セッション数 | {{数値}} | {{%}} | {{数値}} |
| PV数 | {{数値}} | {{%}} | {{数値}} |
| 新規記事数 | {{数値}}本 | - | {{数値}}本 |
| 検索10位内KW数 | {{数値}} | {{%}} | {{数値}} |
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3. 事業KPI(成果報告)
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| 指標 | 今月実績 | 前月比 | 目標値 |
|------|---------|--------|--------|
| CV数(資料DL等) | {{数値}} | {{%}} | {{数値}} |
| リード獲得数 | {{数値}} | {{%}} | {{数値}} |
| 商談貢献数 | {{数値}} | {{%}} | {{数値}} |
| 売上貢献額(推計) | {{金額}}円 | {{%}} | {{金額}}円 |
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4. トピックス
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・{{今月の注目記事とその成果}}
・{{改善施策の進捗}}
・{{外部環境の変化があれば}}
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5. 来月の計画
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・{{来月の記事公開予定}}
・{{改善施策の予定}}
・{{重点KPIと目標値}}
差し込み変数:
- {{報告月}}: 報告対象の月
- {{担当者名}}: 報告者の氏名
- {{報告日}}: 報告書作成日
- {{数値}}: 各指標の実績数値
- {{%}}: 前月比の増減率
- {{金額}}: 売上貢献額の推計値
報告頻度と内容の使い分け
報告頻度と内容は、経営層のニーズに合わせて使い分けることが重要です。
月次報告では、活動状況(記事公開数・訪問者数・CV数)を中心に報告します。四半期報告では、成果(商談貢献・売上影響額・ROI)を中心に報告します。年次報告では、投資対効果の振り返りと次年度の計画を報告します。
この使い分けにより、経営層は短期的な進捗と中長期的な成果の両方を把握できます。
「で、売上にどう貢献しているの?」への答え方
経営層からの「で、売上にどう貢献しているの?」という質問には、具体的な数値と計算ロジックで答えることが重要です。
成功事例として、OfferBox(i-plug社)はオウンドメディア活用で売上前年比21.6%増を達成しています。ただし、業種・規模により成果は大きく異なるため、自社の状況に合わせた目標設定が必要です。
経営層が納得しやすい説明パターンは以下の通りです。
パターン1: 売上貢献額を示す 「オウンドメディア経由のCVは月間50件で、そのうち20%が商談化、30%が受注に至っています。受注単価100万円で計算すると、月間300万円の売上貢献となります」
パターン2: コスト効率を示す 「オウンドメディアのリード獲得単価は広告と比較して低く、長期的に資産として蓄積されます。初期投資は必要ですが、中長期では費用対効果が高い施策です」
パターン3: 間接効果を示す 「オウンドメディアは営業資料としても活用されており、商談時の説明工数削減に貢献しています。また、採用活動での認知獲得にも寄与しています」
オウンドメディアは短期で成果が出る施策ではないため、中長期の投資回収を前提とした報告スタンスが重要です。
まとめ:事業KPI軸の報告で継続投資の承認を得る
本記事では、オウンドメディアの経営報告について、事業KPI軸での設計方法を解説しました。
記事の要点:
- KPI未設定が半数以上、成果実感は1割という現状を踏まえ、まずはKPI設計から始める
- PVやセッション数ではなく、CV数×商談化率×受注単価で売上貢献額を算出する
- 報告は月次(活動報告)と四半期(成果報告)の2段階で設計する
- 「で、売上は?」への回答パターンを準備しておく
オウンドメディアの経営報告は、PV・セッション数ではなく事業KPI(リード獲得数・商談貢献・受注影響)を軸に設計することで、経営層の理解と継続投資の承認を得られます。
まずは自社のCV数と商談化率を把握し、本記事のKPI対照表と報告書テンプレートを活用して、売上貢献額を算出するところから始めてみてください。
