オウンドメディアの撤退判断で迷う背景と本記事の目的
先に答えを言うと、オウンドメディアの撤退判断は、PVや記事数ではなく商談・受注への貢献度を軸に評価し直すことで、撤退すべきか、評価軸を変えて継続すべきかを見極められます。本記事ではこの視点から撤退判断の方法を解説します。
「オウンドメディアを運用しているが、PVが伸びず成果が見えない」「撤退すべきか継続すべきか判断に迷っている」という悩みを抱えているBtoB企業のマーケティング担当者は少なくありません。
ある調査によると、2025年度の広告・マーケティング予算動向で「増加予定」と回答した企業は32.3%で、前年の42.0%から約10ポイント減少しています(2024年11月〜12月調査、127名対象。マーケティングカンファレンス参加企業対象のため一般化には注意が必要です)。一方で、注力施策として「オウンドメディア、ECサイトの強化」「コンテンツマーケティングの強化」が上位に挙げられており、オウンドメディアへの期待は依然として高い状況です。
しかし、期待どおりの成果が出ない場合、撤退を検討する場面も出てきます。問題は、何をもって「成果が出ていない」と判断するかです。
この記事で分かること
- オウンドメディアが停滞・失敗するパターンと原因
- PV指標だけで撤退判断する危険性
- 撤退・縮小・継続の3択判断フレームワーク
- 商談・受注起点で評価軸を見直す方法とチェックリスト
オウンドメディアの停滞・失敗パターンを理解する
オウンドメディアの停滞には主に3つのパターンがあります。撤退判断の前に、自社がどのパターンに該当するかを理解することが重要です。
停滞フェーズとは、オウンドメディアの初期成長後、SEO限界やユーザー離脱増加により成長が鈍化する時期を指します。KPI(重要業績評価指標) とは、目標達成に向けた中間指標で、PV数、CVR、CV数など定量的に測定可能な指標です。
オウンドメディアの停滞フェーズは主に以下の3パターンで発生するとされています。
- 初期キーワード戦略の限界: 立ち上げ時に狙ったキーワードで順位を獲得したものの、それ以上の成長が見込めなくなる状態
- ユーザー体験の陳腐化: デザインや情報が古くなり、離脱率が上昇する状態
- 目的とKPIのズレ: 設定したKPIと本来の目的(商談・受注獲得など)が乖離している状態
オウンドメディアは成果が出るまでに数ヶ月〜1年以上かかることが一般的で、コンテンツの質と量を担保しながら継続的に更新する必要があります。短期間で撤退判断するのは早すぎる可能性があります。
代理店依存でブラックボックス化する失敗
外部依存による失敗パターンも見られます。
ある事例では、代理店依存のBtoBプロジェクトで数百万円を投下したものの、エンゲージメントがゼロで早期終了したというケースが報告されています。原因は自社理解不足とブラックボックス化でした(Web担連載記事の事例であり、一般化には注意が必要です)。
代理店に丸投げすると、何がうまくいっていて何が問題なのかが見えなくなります。撤退判断以前に、自社で状況を把握できる体制が必要です。
PV指標だけで撤退を判断する危険性
よくある失敗パターンとして、PVが増えない、記事が読まれないという理由だけで撤退を判断し、商談や受注への貢献を評価せずに撤退してしまうケースがあります。これは大きな判断ミスにつながります。
PV指標だけで撤退を判断すると、実は商談につながっていた記事まで捨ててしまうリスクがあります。
CVR(コンバージョン率) とは、サイト訪問者のうち、問い合わせや資料請求などのゴールに到達した割合を指します。PVとCVR・商談化の相関が低い場合があり、低PVでも商談に貢献している記事は少なくありません。
たとえば、月間100PVしかない記事でも、そのうち5件が資料請求につながり、1件が商談化していれば、その記事は十分に価値があります。PVだけを見て「読まれていない」と判断するのは危険です。
商談・受注に貢献していた記事を見落とすリスク
PV以外の価値を見落としているケースは多いです。
ビュースルー測定とは、広告を見た後、別のルートでサイトに訪問・コンバージョンした効果を測定する手法です。オウンドメディアの記事も同様に、直接のコンバージョンにつながらなくても、商談時の参考資料として活用されているケースがあります。
以下のような価値を見落としていないか確認してください。
- 営業担当が商談時に「この記事を読んでください」と案内している
- 顧客から「この記事を見て問い合わせた」という声がある
- 社内の営業資料や提案書に記事内容が引用されている
- 指名検索(社名・サービス名での検索)からの流入がある
これらは直接PVに反映されにくいですが、商談・受注に貢献している可能性があります。
撤退・縮小・継続の判断フレームワーク
撤退判断は「撤退か継続か」の二択ではなく、「撤退・縮小・継続」の三択で考えることが重要です。それぞれの選択肢には異なる条件と対応策があります。
オウンドメディアは成果が出るまでに数ヶ月〜1年以上かかることが一般的です。運用開始から十分な期間が経過していない場合は、撤退判断は時期尚早かもしれません。
【比較表】撤退・縮小・継続の判断フレームワーク比較表
| 判断 | 条件 | 状況の目安 | 対応策 |
|---|---|---|---|
| 撤退 | 商談貢献なし+リソース不足 | 運用1年以上経過し、商談・受注への貢献が確認できない。かつ継続のためのリソース確保が困難 | 既存コンテンツをアーカイブ化し、リソースを他施策に振り向ける |
| 縮小 | 商談貢献あり+リソース不足 | 一部の記事が商談に貢献しているが、全体の更新を維持するリソースがない | 商談貢献度の高い記事のみ更新を継続し、他は凍結 |
| 継続 | 商談貢献あり+評価軸見直し余地 | PVは低いが商談貢献が確認できる、または評価軸の設定に問題がある | KPIを商談起点に再設計し、コンテンツ改善を継続 |
| 継続(様子見) | 運用期間不足 | 運用開始から十分な期間(目安:6ヶ月〜1年)が経過していない | 評価期間を設けて継続し、定期的に再評価 |
| 継続(投資強化) | 商談貢献あり+成長余地 | 商談貢献が確認でき、かつ拡大の余地がある | リソースを追加投入し、コンテンツ拡充を加速 |
撤退前に試すべき施策
撤退を決断する前に、以下の施策を試すことをおすすめします。
導線改善: 記事からコンバージョンポイント(問い合わせフォーム、資料請求など)への導線が適切に設置されているか確認します。導線がなければ、いくら読まれても成果にはつながりません。
内製化試行: 外部に委託している場合、一部を内製化することでコストを削減しながら運用を継続できる可能性があります。また、自社でコンテンツを作ることで、顧客理解が深まる効果も期待できます。
KPI再設計: PV以外の指標(問い合わせ数、商談化率、営業からのフィードバックなど)をKPIに設定し直すことで、本当の成果が見えてくる場合があります。
これらの施策を試した上で、それでも成果が見込めない場合に撤退を検討してください。
商談・受注起点で評価軸を見直す方法
評価軸をPVから商談・受注起点に見直すことで、オウンドメディアの本当の価値が見えてきます。以下のチェックリストを活用して、撤退判断の前に評価軸の見直しを行ってください。
商談・受注への貢献度を測定するには、以下の方法があります。
- CRM連携: 問い合わせフォームにどの記事から来たかを記録し、商談化・受注まで追跡する
- 営業ヒアリング: 営業担当者に「顧客が参考にしていた記事」を定期的に確認する
- 顧客アンケート: 受注後に「どのコンテンツが参考になったか」を確認する
- UTMパラメータ設定: 記事内のリンクにUTMパラメータを設定し、流入経路を追跡する
【チェックリスト】オウンドメディア撤退判断チェックリスト
- 運用開始から十分な期間(6ヶ月〜1年以上)が経過している
- PV以外の指標(CV数、問い合わせ数)を定期的に計測している
- 商談・受注への貢献度を営業チームにヒアリングしている
- 顧客から「この記事を見た」というフィードバックの有無を確認している
- 営業資料として記事が活用されているか確認している
- 記事からコンバージョンポイントへの導線が設置されている
- 導線のクリック率・転換率を計測している
- 停滞の原因(キーワード限界・UX陳腐化・KPIズレ)を特定している
- 外部委託の場合、運用状況がブラックボックス化していないか確認している
- 内製化や縮小運用の可能性を検討している
- KPIを商談起点に再設計する余地を検討している
- 撤退した場合のリソース振り向け先を明確にしている
- 既存コンテンツのアーカイブ活用方法を検討している
- 経営層・関係部署と撤退判断の基準を合意している
- 撤退判断の期限を設定している
撤退判断チェックリストの活用方法
このチェックリストは、撤退判断の前に確認すべき項目を網羅しています。
チェックが多くついた項目から対応を進め、すべての項目を確認した上で判断してください。特に「商談・受注への貢献度を確認しているか」の項目は重要です。ここが未確認のまま撤退を判断すると、実は価値があった資産を捨ててしまうリスクがあります。
チェックリストの結果に応じた判断の目安は以下のとおりです。
- 商談貢献が確認できた場合: 撤退ではなく「継続」または「縮小」を選択
- 商談貢献が確認できず、リソースも不足: 「撤退」を検討
- 評価軸の見直し余地がある場合: KPIを再設計して「継続」
まとめ:評価軸を見直してから撤退判断を行う
本記事では、オウンドメディアの撤退判断をPVではなく商談起点で見極める方法を解説しました。
要点を整理すると以下のとおりです。
- オウンドメディアの停滞には「キーワード戦略限界」「UX陳腐化」「KPIズレ」の3パターンがある
- 成果が出るまでに数ヶ月〜1年以上かかるため、短期間での撤退判断は早すぎる可能性がある
- PVだけで撤退を判断すると、商談に貢献していた記事まで捨ててしまうリスクがある
- 撤退・縮小・継続の3択で判断し、撤退前に導線改善・内製化・KPI再設計を試す
- 商談・受注への貢献度を営業ヒアリングやCRM連携で測定する
撤退判断の前に、本記事のチェックリストと比較表を活用して、評価軸の見直しを行ってください。オウンドメディアの撤退判断は、PVや記事数ではなく商談・受注への貢献度を軸に評価し直すことで、撤退すべきか、評価軸を変えて継続すべきかを見極められます。
