体制を決める前に判断に迷う理由
結論から言えば、オウンドメディアの内製・外注の判断は、体制比較の前に「誰に・何を・なぜ」という戦略を固めることで、どの体制を選んでも成果につなげやすくなります。
オウンドメディアを始めたい・改善したいと考えるBtoB企業の担当者にとって、リソースが限られる中で「内製か外注か」という体制の判断は大きな悩みの種です。コストを抑えたいなら内製、品質を求めるなら外注、という単純な二択では決められないからです。
多くの企業が判断に迷う背景には、体制の比較だけに目が向き、「そもそも何のためにオウンドメディアを運用するのか」という戦略設計が後回しになっていることがあります。体制はあくまで手段であり、戦略が曖昧なままでは、どの体制を選んでも成果には結びつきにくいのです。
この記事で分かること
- 内製・外注・ハイブリッドの定義と各体制の特徴
- 外注する場合の費用相場(構築費用・運用代行・記事制作)
- 体制判断の前に戦略設計が必要な理由
- 自社に適した体制を判断するためのチェックリスト
- 段階的に内製化を進める方法
内製・外注・ハイブリッドの定義と現状
オウンドメディアの運用体制は、大きく「内製」「外注」「ハイブリッド」の3つに分けられます。まず、それぞれの定義を明確にしておきましょう。
内製とは、戦略立案から記事制作、SEO対策、効果測定まで、すべての業務を社内のメンバーで行う体制です。ノウハウが社内に蓄積される一方、専門人材の確保や育成に時間がかかります。
運用代行(外注)とは、記事制作・SEO対策・分析などオウンドメディア運営業務を外部企業に委託することを指します。専門性の高い業務を任せられる一方、コストがかかり、社内にノウハウが残りにくい面があります。
ハイブリッド体制(ハーフ内製) とは、戦略・編集方針は内製で行い、制作の一部を外注する運営体制です。日本企業ではこのハイブリッド型が主流であり、成果が出やすいとされています。
実際、多くの調査で半数以上の企業がハイブリッド体制でオウンドメディアを運用しているという傾向が報告されています。戦略立案と品質管理は社内で保持しつつ、制作リソースを外部で補う方法が現実的な選択肢として広がっています。
ブラックボックス化のリスク
外注を活用する際に注意すべきなのが、ブラックボックス化です。これは外注先に任せすぎてノウハウが社内に残らず、戦略立案能力が育たない状態を指します。
外注先に「丸投げ」してしまうと、記事の方向性や品質の判断基準が社内に蓄積されません。その結果、外注先を変更する際に一から関係構築が必要になったり、社内担当者が「戦略家ではなく進行管理者」に留まってしまうリスクがあります。
外注を活用する場合でも、戦略立案と最終的な品質チェックは社内で行う体制を維持することが重要です。
内製・外注・ハイブリッドの比較
各体制のメリット・デメリットを比較表で整理します。自社の状況に照らして、どの体制が適しているかを検討する際の参考にしてください。
【比較表】内製・外注・ハイブリッド体制比較
| 比較項目 | 内製 | 外注(運用代行) | ハイブリッド |
|---|---|---|---|
| 初期コスト | 低(人件費のみ) | 高(構築費用50万〜1,000万円) | 中程度 |
| 月額コスト | 人件費のみ | 月額20万〜50万円程度 | 人件費+外注費 |
| 品質管理 | 自社でコントロール可能 | 外注先に依存しやすい | 自社でコントロール可能 |
| ノウハウ蓄積 | 蓄積される | 蓄積されにくい | 蓄積される |
| 柔軟性 | 高い | 契約内容に依存 | 高い |
| 専門性 | 社内人材に依存 | 高い専門性を活用可能 | 外部の専門性を活用可能 |
| スケーラビリティ | 採用・育成に時間がかかる | 外注先との調整で対応可能 | バランスよく拡張可能 |
上記の比較から、ハイブリッド体制が多くの企業で選ばれている理由が見えてきます。戦略と品質管理を社内に残しつつ、制作の専門性を外部で補うことで、ノウハウ蓄積と専門性の両立が可能になります。
費用相場の目安
外注を検討する際に気になるのが費用です。各調査データをもとに、相場感を整理します。
オウンドメディア構築費用
オウンドメディア構築費用は「基本50万円程度、コンテンツ設計から構築まで依頼する場合100万〜1,000万円」とされています(ferret 2024年調査)。費用の幅が大きいのは、サイトの規模やCMS選定、コンテンツ設計の深さによって大きく変わるためです。
運用代行費用
オウンドメディア運用代行の費用相場は「月額20万〜50万円程度」が一般的とされています(ferret、AI編集長 2024-2025年調査)。月額費用には記事制作、SEO対策、アクセス解析などが含まれるケースが多いですが、サービス内容は提供会社によって異なります。
記事制作費用
SEO記事制作費の相場は「1本5万〜15万円」、取材・インタビュー記事は「1本10万〜15万円程度」とされています(AI編集長 2025年調査)。業界の専門性や記事の文字数、取材の有無によって費用は変動します。
なお、これらの費用相場はあくまで目安であり、業界・専門性・依頼内容によって大きく変動する点にご注意ください。公的機関による統計は現状ほぼなく、各社独自調査に基づく相場感であることも踏まえて参考にしてください。
体制判断の前に戦略設計が必要な理由
よくある失敗パターンとして、コスト・リソースだけで体制を判断し、戦略が曖昧なまま運用を始めてしまうケースがあります。このパターンでは、どの体制を選んでも「記事ごとに主張がバラバラ」「PVは増えるが商談につながらない」という課題に直面しやすくなります。
なぜこのような問題が起きるのでしょうか。オウンドメディアは「誰に向けて、何を伝え、なぜそれが自社で語る価値があるのか」という戦略があってこそ、一貫したメッセージを発信できます。この戦略がないまま記事を量産しても、読者に響くコンテンツにはなりにくいのです。
内製であれば戦略がなくても大丈夫、外注なら任せておけば成果が出る、という考え方は誤りです。どの体制でも、戦略の言語化は不可欠です。
どの体制でも必要な「戦略の一貫性チェック」
体制に関わらず、以下の3つの問いに答えられる状態を作ることが重要です。
誰に(ターゲット)
どのような企業の、どのような立場の人に向けた記事なのかを明確にします。「BtoB企業全般」では広すぎます。業種、企業規模、担当者の役職や課題まで具体化することで、記事のトーンや内容が定まります。
何を(提供価値)
読者にどのような価値を提供するのかを言語化します。情報提供だけなのか、課題解決のヒントなのか、具体的なノウハウなのか。競合メディアと何が違うのかも明確にしておきます。
なぜ(自社で語る意味)
なぜその情報を自社が発信する意味があるのかを説明できるようにします。自社の専門性、実績、独自の視点など、他社には語れない価値を明確にすることで、記事の説得力が増します。
この3つが言語化されていれば、内製でも外注でも、記事の方向性がブレにくくなります。外注する場合は、この戦略を外注先と共有することで、意図に沿った記事が上がってきやすくなります。
自社に適した体制を判断するチェックリスト
以下のチェックリストを使って、自社の状況を確認してみてください。チェックの結果に応じて、適した体制の方向性が見えてきます。
【チェックリスト】内製・外注判断チェックリスト
- 社内にマーケティング専任者がいる
- オウンドメディアに週10時間以上のリソースを確保できる
- SEOやコンテンツマーケティングの知見がある人材がいる
- 自社サービス・業界について深い知識を持つライターがいる
- 記事の品質を判断できる編集担当者がいる
- 「誰に・何を・なぜ」の戦略が言語化されている
- 月額20万円以上の外注予算を確保できる
- 短期間(3〜6ヶ月)で記事本数を増やす必要がある
- 専門性の高い技術記事やインタビュー記事が必要
- 社内にデザイン・コーディングのリソースがない
判断の目安
- 上位5項目(社内リソース関連)に多くチェックが入る場合:内製が適している可能性が高い
- 下位5項目(外部リソース活用関連)に多くチェックが入る場合:外注の活用を検討
- 両方にバランスよくチェックが入る場合:ハイブリッド体制が適している
ただし、「誰に・何を・なぜ」の戦略が言語化されていない場合は、体制を決める前にこの部分を固めることを優先してください。
段階的な内製化移行の進め方
リソースが限られる場合、最初から完全内製を目指すのではなく、段階的に内製化を進める方法が有効です。
内製化移行とは、外注に依存していた業務を段階的に社内で実行できるようにするプロセスを指します。以下のステップで進めるケースが多いです。
ステップ1:外注で学習する(1年目)
最初の1年は外注を活用しながら、外注先がどのように記事を企画し、制作しているかを学びます。編集会議への参加や、原稿へのフィードバックを通じて、ノウハウを吸収します。
ステップ2:編集・品質管理を内製化(2年目)
記事の企画立案と最終チェックを社内で行うようにします。制作は引き続き外注しつつ、方向性の決定権を社内に移します。
ステップ3:制作の一部を内製化(3年目以降)
社内で対応可能な記事(自社事例、サービス紹介など)から内製を始め、徐々に対応範囲を広げていきます。
重要なのは、外注する場合でも「社内チェック」は不可欠だということです。自社の強みが正しく押し出されているか、ターゲットに響く表現になっているかの判断は、外注先にはできません。この部分を社内で担うことで、外注しながらもノウハウを蓄積できます。
まとめ:体制より先に戦略を固める
オウンドメディアの内製・外注判断について、各体制の特徴、費用相場、判断のチェックリストを解説しました。
最も重要なのは、体制を決める前に「誰に・何を・なぜ」という戦略を固めることです。コスト・リソースだけで体制を判断し、戦略が曖昧なまま運用を始めてしまうと、どの体制でも「記事ごとに主張がバラバラ」「PVは増えるが商談につながらない」という課題に直面します。
逆に言えば、戦略さえ固まっていれば、内製でも外注でもハイブリッドでも成果につなげやすくなります。チェックリストで自社の状況を確認しつつ、まずは「誰に・何を・なぜ」の言語化から始めてみてください。
内製・外注の判断は「正解」があるわけではなく、自社の状況に応じて最適な体制は変わります。戦略を軸に置きながら、段階的に体制を調整していくことで、持続可能なオウンドメディア運用が実現できます。
