オウンドメディア×MA連携が注目される背景と課題
先に答えを言うと、オウンドメディアとMAの連携で成果を出すには、ツール連携だけでなく、ターゲットに一貫したメッセージを届けるコンテンツ戦略の設計が重要です。
オウンドメディアとは、企業が自社で所有・運営するウェブサイトやブログなどのメディアです。見込み客を集客・育成する資産型のマーケティングチャネルとして、多くのBtoB企業が運営しています。一方、MAツール(マーケティングオートメーション) は、メール配信やリードスコアリング、行動分析を自動化するソフトウェアで、訪問者データを活用し個別最適化されたナーチャリングを実現します。
2025年のマーケティング予算動向調査によると、広告・マーケティング予算を増加予定の企業は32.3%、予算維持は59.8%で、オウンドメディアの充実・強化が注力施策の上位に位置づけられています(調査期間:2024年11-12月、有効回答数127名、調査対象はカンファレンス参加企業のため先進事例に寄っている点に留意が必要)。
しかし、オウンドメディアとMAを連携させているからといって、必ずしも成果につながるわけではありません。BtoB営業関連オウンドメディア74サイトの分析では、オウンドメディア経由の売上が会社全体の10%未満のサイトが13.6%、売上ゼロが14%と、低成果事例が目立ちます(74サイトの独自分析でサンプルが営業関連BtoBに偏り、統計的有意性は確認されていません)。
この記事で分かること
- オウンドメディアとMAツールそれぞれの役割と連携の目的
- 連携しても成果が出ない原因と、よくある失敗パターン
- 成果につなげるための実践ポイントとチェックリスト
オウンドメディアとMAツールの役割を整理する
オウンドメディア×MA連携を成功させるには、まず両者の役割を明確に理解することが必要です。オウンドメディアは「集客・接点創出」、MAツールは「育成・自動化」という役割を担い、両者は補完関係にあります。
両者を連携させることで、オウンドメディアで獲得した見込み顧客の情報をMAに取り込み、行動データに基づいた継続的なフォローが可能になります。ただし、この連携が機能するためには、それぞれの役割を正しく理解した上で設計する必要があります。
オウンドメディアが担う集客と信頼構築
オウンドメディアの主な役割は、検索やSNS経由で見込み客を自社サイトに集客し、専門性を示すコンテンツを通じて信頼関係を構築することです。
PR業実態調査(2025年報告書)によると、PR会社のサービスで「オウンドメディアやソーシャルメディアの企画・運営」が52%を占めており、デジタルコミュニケーションの基盤として重要視されています。これは、オウンドメディアが単なる情報発信の場ではなく、企業のブランディングや専門性の証明に欠かせない存在となっていることを示しています。
具体的には、見込み客が抱える課題を解決する記事を提供することで、「この会社は自分の課題を理解している」という信頼を得ることができます。
MAツールが担うリード育成と自動化
MAツールの役割は、オウンドメディアで獲得したリードを自動的に育成し、商談化につなげることです。
リードスコアリングとは、見込み顧客の行動や属性に基づいて点数を付け、商談化の可能性を評価するMA機能です。例えば、価格ページを閲覧したリードには高いスコアを付与し、営業へのパス判断に活用します。
リードナーチャリングとは、獲得したリードを継続的にフォローし、購買意欲を高めて商談化につなげる活動です。MAツールを使えば、リードの行動履歴に応じたステップメールの自動配信や、関心に合わせたコンテンツの提案が可能になります。
オウンドメディア×MA連携で実現できること
連携によって実現できる主なメリットは、「行動データに基づくセグメント別ナーチャリング」と「リード獲得から商談化までの自動化」です。
BtoB営業関連オウンドメディアの成功事例分析によると、成果を出しているサイトでは、1記事あたり平均2.2のCTA(Call to Action)が設置されており、CV獲得記事の割合は47.4%に達しています。また、平均内部リンク数は3.5、平均文字数は7,409字、月間記事作成数は12.8本という指標が報告されています(74サイトの分析に基づく参考値)。
CTA(Call to Action) とは、ユーザーに特定のアクション(資料請求、問い合わせ等)を促す導線やボタンのことです。
具体的な活用シーンとしては、以下のようなケースが考えられます。
- 資料ダウンロード後に、関連テーマのステップメールを自動配信
- 特定カテゴリの記事を複数閲覧したリードに、事例コンテンツを提案
- 価格ページを閲覧したリードを営業にアラートで通知
コンテンツ閲覧データを活用したリードスコアリング
オウンドメディアの閲覧データをMAに取り込むことで、リードの関心度を数値化できます。
スコアリングの基本的な考え方は、「どのページを見たか」「何回訪問したか」「どのCTAをクリックしたか」といった行動データに基づいて、商談化の可能性を推定することです。例えば、課題解決系の記事を読んだリードよりも、比較検討系や価格情報系の記事を読んだリードの方が、検討段階が進んでいる可能性が高いと考えられます。
ただし、スコアリングの設計は企業や商材によって異なるため、画一的な正解はありません。自社の商談データを分析し、商談化したリードがどのような行動を取っていたかを検証しながら、スコアリングルールを調整していくことが重要です。
記事CTAからのリード獲得と自動フォロー
記事にCTAを設置してリードを獲得し、MAで自動的にフォローする流れを設計することが成果への第一歩です。
前述の成功事例分析では、1記事あたり平均2.2のCTAが設置されています。これは、記事の複数箇所に転換ポイントを設けることで、読者のタイミングに合わせたコンバージョンを促していることを示唆しています。
記事→CTA→リード獲得→MAでの自動ナーチャリングという一連の流れを設計することで、手動では対応しきれない数のリードを継続的にフォローできるようになります。
連携しても成果が出ない原因
「MAツールとオウンドメディアを連携させれば、自動的にリードが育成される」という考え方は誤りです。これはよくある失敗パターンであり、コンテンツの戦略設計や主張の一貫性を軽視してしまうと、連携しても期待した成果は得られません。
前述のとおり、BtoB営業関連オウンドメディアの分析では、売上が10%未満または売上ゼロのサイトが合計で27.6%に達しています。記事運用や導線の不足が原因として推測されており、単に連携しているだけでは成果につながらない現実が浮き彫りになっています。
記事ごとに主張がバラバラで一貫性がない
オウンドメディアの記事ごとにターゲットや主張がバラバラだと、MAで配信するコンテンツも一貫性を欠き、リードに刺さらないものになってしまいます。
例えば、ある記事では「コスト削減が重要」と主張し、別の記事では「品質向上が最優先」と書いていたとします。このようなメディアから配信されるステップメールは、読者にとって「結局この会社は何を言いたいのか分からない」という印象を与えかねません。
MAツールで精緻なセグメント配信を設計しても、そもそものコンテンツに一貫したメッセージがなければ、育成効果は限定的になります。
導線設計がなくリード獲得につながらない
記事を読まれてもCTAがなければ、リードの情報がMAに流れてきません。優れたコンテンツがあっても、導線設計が不十分では連携の効果を発揮できないのです。
記事の最後に問い合わせフォームへのリンクを置くだけでは不十分なケースが多いです。読者の検討段階に応じて、「資料ダウンロード」「事例を見る」「無料相談」など、ハードルの異なる複数のCTAを用意することで、より多くのリードを獲得できる可能性が高まります。
オウンドメディア×MA連携を成果につなげる実践ポイント
成果につなげるためには、ツール連携の設定だけでなく、コンテンツ戦略の一貫性を保つ仕組みを作ることが重要です。
成功事例分析から見えてくる実践ポイントとしては、1記事あたり複数のCTAを設置すること(平均2.2)、記事間の内部リンクで回遊を促すこと(平均3.5)、CV獲得を意識した記事設計(CV記事割合47.4%)などが挙げられます。
以下のチェックリストを活用して、自社のオウンドメディア×MA連携の状態を確認してみてください。
【チェックリスト】オウンドメディア×MA連携チェックリスト
- オウンドメディアのターゲットペルソナが明確に定義されている
- 全記事で一貫したターゲット・課題設定が維持されている
- 記事のメッセージ・主張に一貫性がある
- 各記事に1つ以上のCTAが設置されている
- CTAはリードの検討段階に応じて複数種類用意されている
- CTAのコンバージョンデータがMAに連携されている
- 記事の閲覧データがMAでトラッキングされている
- 閲覧行動に基づくリードスコアリングが設計されている
- スコアに応じたセグメント別のナーチャリングシナリオがある
- 記事間の内部リンクが適切に設置されている
- リード獲得後のステップメールが設計されている
- ステップメールの内容が記事のメッセージと一貫している
- 高スコアリードを営業にパスする基準が定義されている
- 定期的にスコアリングルールの効果検証を行っている
- MAの配信結果を分析し、コンテンツ改善に活かしている
ターゲットと課題を全記事で一貫させる
コンテンツ戦略の一貫性を保つには、「誰に」「何を」「なぜ」伝えるのかを記事横断で揃えることが不可欠です。
具体的な方法としては、以下のような取り組みが効果的です。
- ペルソナシートの作成: ターゲットの役職、課題、情報収集行動を言語化し、全記事で参照する
- メッセージの統一: メディア全体で伝えたい主張(自社の強み、提供価値)を明文化する
- 記事ごとの役割定義: 認知層向け、比較検討層向けなど、記事の役割を明確にしてから企画する
- 編集ガイドラインの整備: ライターが変わっても一貫性を保てるルールを用意する
これらの仕組みがあることで、MAで配信するコンテンツにも自然と一貫性が生まれ、リード育成の効果が高まります。
まとめ:連携の本質はツールではなくコンテンツ戦略
オウンドメディアとMAの連携は、BtoB企業のマーケティングを効率化する有効な手段です。しかし、ツールを連携させるだけで自動的にリードが育成されるわけではありません。
成果を出すためのポイントを整理します。
- オウンドメディア(集客・信頼構築)とMA(育成・自動化)の役割を正しく理解する
- 記事にCTAを設置し、リード獲得からMAへの導線を設計する
- 記事ごとの主張やターゲット設定に一貫性を持たせる
- スコアリングとナーチャリングシナリオを設計し、定期的に検証・改善する
オウンドメディアとMAの連携で成果を出すには、ツール連携だけでなく、ターゲットに一貫したメッセージを届けるコンテンツ戦略の設計が重要です。今回紹介したチェックリストを活用して、自社の連携状態を点検し、改善につなげてください。
