「オウンドメディアがうまくいかない」—成果の出ない企業に共通する根本原因
オウンドメディアで成功するには、戦略(誰に・何を・なぜ)を全記事に構造的に反映させる仕組みと、品質を担保して確実に公開できるフローが整っていることが不可欠です。
「記事を公開しているのに商談につながらない」「社内の承認が通らず公開が滞る」—こうした悩みを抱えるBtoB企業は少なくありません。Web担当者Forum調査(インプレス)によると、「Webマーケの取り組みが理想的にできている」と答えた企業は36.3%にとどまり、63.7%が「理想的ではない」と回答しています。
さらに、BtoBオウンドメディア調査・ランキング(CONE)では、オウンドメディア経由売上が「全社売上の10%未満」の企業は13.6%、「売上が上がっていない」と回答した企業は14%で、約3割弱の企業が売上インパクトを実感できていないことが明らかになっています。
この記事で分かること
- オウンドメディアがうまくいかない根本原因(戦略不在・品質担保フローの欠如)
- 「コンテンツの質が低い」「更新頻度が足りない」という表層的な分析の誤り
- 戦略を全記事に反映させる仕組みの作り方
- 自社の課題を診断できるチェックリストと改善の優先順位
オウンドメディアで成果が出ない主な原因パターン
成果が出ない原因は、「コンテンツの質」や「更新頻度」といった個別要素だけでは説明できません。むしろ、戦略設計と品質担保の仕組みが整っていないことが根本的な問題であることが多いです。
BtoB企業のオウンドメディア担当者調査(テクロ)では、92%の企業が運用を継続したいと回答しており、商品・サービスの認知拡大やリード獲得で効果を実感しているケースもあります。しかし、継続意欲はあるのに成果が出ないという状況は、モチベーションや努力の問題ではなく、構造的な課題が存在することを示唆しています。
**よくある誤解として、「コンテンツの質が低いから成果が出ない」「更新頻度が足りないから上位表示されない」といった個別要素に原因を帰着させてしまうパターンがあります。**これは表層的な分析であり、本質的な改善にはつながりません。戦略設計と品質担保の仕組み構築を後回しにしてしまうことで、いくら記事を量産しても成果につながらない状態が続いてしまいます。
目的・戦略が不明確なまま運用している
多くの失敗ケースで共通しているのは、「誰に・何を・なぜ伝えるのか」が言語化されていないことです。
KGI(Key Goal Indicator) とは、重要目標達成指標のことです。オウンドメディアでは月間問い合わせ数・売上・採用数などの最終成果を設定します。KPI(Key Performance Indicator) は、重要業績評価指標であり、KGI達成のための中間指標(セッション数・CV数・記事公開数など)を指します。
KGI・KPIが設定されていないと、記事ごとに主張がブレてしまいます。ある記事では「初心者向け」に書いているのに、別の記事では「上級者向け」のトーンになっていたり、記事間で矛盾した内容が発生したりします。こうした一貫性の欠如は、読者の信頼を損ない、ブランドとしての専門性を示すことができなくなります。
社内体制と運用継続の課題
専任担当者がいない、または兼務で対応している場合、オウンドメディアの優先度が下がりがちです。
記事の企画・執筆・編集・公開というプロセスには、一定の工数がかかります。専任担当者がいない状態では、本業が忙しくなると更新が止まり、半年程度で失速するリスクが高まります。
また、AI原稿を活用する企業も増えていますが、「AI原稿が社内承認を通らない」という問題が発生しています。これは、品質基準が明確化されていない、ファクトチェックのフローがない、承認者の判断基準が曖昧といった背景があります。品質担保の仕組みを整えないまま効率化ツールを導入しても、結局は公開に至らない記事が増えるだけになってしまいます。
「記事を増やせば成果が出る」という誤解の罠
記事数を増やすだけでは成果につながらない可能性が高いです。戦略に基づいた記事設計があってこそ、量が成果に転換されます。
BtoBオウンドメディア調査・ランキング(CONE)によると、成果を出しているBtoBオウンドメディア(ベスト5)の平均記事数は462記事であり、成果を出すには少なくとも270記事程度は必要との分析があります。ただし、これは成功上位群のベンチマークであり、すべての企業に当てはまる目標値ではありません。記事数を追う前に、戦略設計を整えることが先決です。
広告・マーケティング担当者への調査(インプレス)では、2025年度の広告・マーケ予算は「今年度と同程度」が59.8%、「増加予定」が32.3%となっており、オウンドメディアを含むWeb施策への投資意欲は継続傾向にあります。しかし、投資を増やしても戦略が不明確なままでは、成果に結びつかないケースが多く見られます。
トピッククラスターモデルとは、ピラーページを中心に関連コンテンツを体系的に配置するSEO手法です。検索ボリュームだけを優先して記事を量産するのではなく、ターゲット読者の課題に沿ったコンテンツを体系的に整理することで、流入の質を高めることができます。
戦略を全記事に反映させる仕組みの構築
戦略の構造化とは、「誰に・何を・なぜ」を言語化し、すべての記事に一貫して反映させる仕組みを作ることです。
HubSpot Japan事例(セブンデックス)によると、HubSpot Japan日本語ブログでは、インバウンド戦略導入後6か月で検索流入約2倍・資料ダウンロード数2.5倍を達成しています。この成功の背景には、明確な戦略設計と、それを全記事に反映させる仕組みがありました。
また、BtoBオウンドメディア調査・ランキング(CONE)では、成功メディア1位(Sansan「営業DX Handbook」)は月間平均記事作成数12.8本、平均文字数7,409字/本の運用体制であることが報告されています。これは成功上位群のベンチマークであり、すべての企業が同じ体制を目指す必要はありませんが、戦略に基づいた継続的な運用が重要であることを示しています。
ナーチャリングとは、見込み顧客の育成を指します。メルマガやMAツールを使ってリードを商談化に導くプロセスです。記事で獲得したリードをナーチャリングにつなげる仕組みがないと、いくら流入が増えても商談には結びつきません。
【比較表】失敗パターン別の原因と解決アプローチ
| 失敗パターン | 主な原因 | 解決アプローチ | 優先度 |
|---|---|---|---|
| 記事を出しても問い合わせがない | CV導線(CTA)の設計不足 | 記事内CTAの配置見直し、ナーチャリングフローの構築 | 高 |
| 記事ごとに主張がブレている | 戦略(誰に・何を・なぜ)の言語化不足 | ペルソナ設定、記事テンプレートの整備 | 高 |
| 更新が続かない・失速する | 専任担当者不在、体制不備 | 運用体制の見直し、外部パートナーの活用 | 中 |
| AI原稿が承認を通らない | 品質基準の不明確、承認フロー不在 | ファクトチェック体制の構築、承認基準の明文化 | 中 |
| PVは増えたが商談につながらない | ターゲット設定の曖昧さ | KGI/KPIの再設定、ターゲット絞り込み | 高 |
| SEOで上位表示されない | コンテンツ体系化の不足 | トピッククラスターモデルの導入 | 中 |
品質担保と公開継続のためのフロー設計
品質を担保しながら継続的に公開できる仕組みを整えることが、オウンドメディア成功の鍵です。
CTA(Call To Action) とは、行動喚起のことです。記事内の資料ダウンロード・問い合わせ・セミナー申込などへの導線を指します。BtoBオウンドメディア調査・ランキング(CONE)によると、成果を出しているBtoBオウンドメディア(ベスト10)の1記事あたり平均CTA数は3.5個です。フッターだけでなく、本文中や記事途中にもCTAを配置することで、読者のアクションを促しやすくなります。
AI原稿が社内承認を通らない問題に対しては、以下の対策が有効です:
- 品質基準の明文化: 何をもって「公開可能」とするかを明確にする
- ファクトチェックフローの構築: 数値データや引用の正確性を確認する仕組み
- 承認プロセスの標準化: 誰が・いつ・どの基準で承認するかを定める
【チェックリスト】オウンドメディア失敗診断チェックリスト
- KGI(最終成果指標)を数値で設定している
- KPI(中間指標)をKGIから逆算して設定している
- ターゲットペルソナを具体的に言語化している
- 記事の目的(認知・リード獲得・採用など)を明確にしている
- 全記事に共通する主張・トーンが統一されている
- 記事テンプレート(構成・文体のガイドライン)がある
- 専任担当者または実質専任レベルの稼働を確保している
- 外部パートナー(記事作成代行・編集支援)を活用している
- ファクトチェックのフローが整備されている
- 承認基準と承認者が明確になっている
- 各記事にCTA(資料DL・問い合わせなど)を配置している
- リード獲得後のナーチャリングフローがある
- 記事の効果測定を定期的に行っている
- 検索ボリュームだけでなくターゲット課題からキーワードを選定している
- トピッククラスターなどコンテンツの体系化を意識している
上記のチェックリストで「チェックが入らない項目が多い領域」が、改善の優先度が高い領域です。戦略・体制・品質・CV導線の4観点から自社の課題を特定し、優先順位をつけて改善を進めてください。
まとめ:オウンドメディアを「うまくいく」に変えるために
オウンドメディアがうまくいかない根本原因は、戦略を全記事に反映させる仕組みと、品質を担保して確実に公開できるフローが整っていないことにあります。
「コンテンツの質が低い」「更新頻度が足りない」といった個別要素に原因を帰着させるのではなく、戦略設計と品質担保の仕組み構築に取り組むことが重要です。
本記事で紹介したチェックリストを活用し、自社のオウンドメディアがどの領域に課題を抱えているかを診断してください。戦略・体制・品質・CV導線のどこに問題があるかを特定できれば、改善の方向性が見えてきます。
社内リソースだけでの改善が難しい場合は、記事作成代行や編集支援などの外部パートナー活用も選択肢の一つです。重要なのは、戦略設計と品質担保の仕組みを整えることであり、その方法は自社内で完結させても、外部と協力しても構いません。
オウンドメディアがうまくいかない根本原因は、戦略(誰に・何を・なぜ)を全記事に構造的に反映させる仕組みと、品質を担保して確実に公開できるフローが整っていないことにあります。この2つの仕組みを構築することが、オウンドメディアを「うまくいく」状態に変えるための第一歩です。
