PVは増えているのにROI改善につながらない問題
オウンドメディアのPVは増えているのに商談・受注への貢献が見えず、経営層への説明に苦慮しているなら、オウンドメディアのROI測定は、計算式を覚えるだけでは改善につながらず、まず全記事に一貫した戦略(誰に・何を・なぜ)を反映させた上で、PVではなく商談・受注を起点とした効果測定を設計することで、初めて経営層への説明と成果改善の両立が可能になります。
ROI(投資収益率) とは、投資額に対してどれだけの利益を得られたかを示す指標です。計算式は(利益額-投資額)÷投資額×100で算出します。
日本BtoB市場のオウンドメディアROI平均は200-600%(投資回収後3-7倍の利益率)とされています。しかし、これは成功事例ベースの推計値であり、業種・運用体制・測定期間により大きく変動します。
多くの企業がROI計算式を知り、GA4でPVやCVを計測しています。しかし、「数値は出せるが、なぜ成果が出ないのか原因が分からない」「改善につなげられない」という課題を抱えているのが実態です。
この記事で分かること
- ROI計算式の基本と、測定だけでは改善につながらない理由
- 目的別のKPI設計と成果指標の選び方
- 戦略の一貫性がROI改善の前提である理由
- 商談・受注起点の効果測定設計チェックリスト
オウンドメディアROI測定の基本と課題
ROI測定の基本は計算式を理解することですが、計算できることと改善できることは別の問題です。多くの企業がこの点を見落としています。
ROAS(広告費用対効果) は、広告売上÷広告費×100で算出する指標です。ROIと異なり広告費のみを対象とします。オウンドメディアの効果測定ではROIを使うのが一般的です。
LTV/CAC比とは、顧客生涯価値(LTV)を顧客獲得単価(CAC)で割った指標です。投資効率を測る際に活用されます。
ROI計算式と成果指標の関係
マーケティングROIの基本計算式は「(利益額 - 投資額)÷ 投資額 × 100」で算出します。
この計算式はシンプルですが、重要なのは「何を利益とするか」の定義です。オウンドメディアの場合、以下の要素を含めて考える必要があります。
利益額に含める要素
- 商談成約からの売上
- 資料ダウンロードからのリード価値
- ブランド認知向上の間接効果
投資額に含める要素
- コンテンツ制作費用
- 運用・保守費用
- ツール・システム費用
ROI測定の壁:PV増加と商談化の断絶
KGI/KPIについて整理すると、KGIは最終目標(売上等)、KPIは中間指標(リード数、CV数等)です。ROI測定の基盤となる概念です。
「PVが増えれば自然と商談・受注につながる」という考えは誤りです。PV増加と商談化の間には断絶があり、CVRやコンバージョン導線の設計が不可欠です。
PVやCVをGA4で見るだけでは、なぜ成果が出ないのかの原因特定ができません。記事ごとに戦略やメッセージがバラバラの状態では、どの記事が商談に貢献したかも分からないからです。
目的別KPI設計と成果指標の選び方
効果的なROI測定には、目的に応じたKPI設計が必要です。リード獲得・認知向上・商談化など、目的によって見るべき指標が異なります。
(例)年間投資500万円でリード2,000件、受注率15%の場合の試算
- 受注件数: 2,000件 × 15% = 300件
- 平均受注単価を10万円と仮定すると売上効果は3,000万円
- ROI: (3,000万円 - 500万円) ÷ 500万円 × 100 = 500% ※実際の成果は業種・単価・運用体制により大きく変動します
ある大手サービスでは、他チャネル比でリード商談化率が3倍以上、記事掲載2ヶ月でコンバージョン20%を占めたという事例があります(個別事例のため一般化には注意が必要です)。
【比較表】目的別KPI・ROI計算式一覧
| 目的 | 主要KPI | ROI計算の分子(利益) | ROI計算の分母(投資) | 測定期間目安 |
|---|---|---|---|---|
| リード獲得 | CV数、資料DL数、問い合わせ数 | リード価値 × 獲得数 | コンテンツ制作費 + 運用費 | 6-12ヶ月 |
| 認知向上 | 指名検索数、ブランド想起率、PV | 広告換算価値 | 制作費 + 広告宣伝費 | 12ヶ月以上 |
| 商談化 | 商談化率、受注率、商談単価 | 受注売上 - 原価 | 全マーケティング投資額 | 12-24ヶ月 |
| 既存顧客育成 | クロスセル率、LTV向上率 | 追加売上 × LTV | CRM運用費 + コンテンツ費 | 24ヶ月以上 |
※ROI計算式の基本は「(利益額 - 投資額)÷ 投資額 × 100」です。
ROI改善の本質:戦略の一貫性がなければ改善できない
よくある失敗パターンは、「ROIの計算式を覚え、PVやCVをGA4で計測すればオウンドメディアの効果測定ができる」と考え、記事ごとに戦略やメッセージがバラバラのまま測定を始めることです。この状態では数値は出せても、なぜ成果が出ないのかの原因特定や改善ができません。
戦略的一貫性を持つメディアでは、収益安定性が平均55%向上、エンゲージメント率30%向上、滞在時間1.5倍増加したという報告があります。戦略の一貫性がROI改善に直結することを示すデータです。
記事ごとのメッセージブレがROI低下を招く構造
「誰に・何を・なぜ」が記事ごとに異なると、以下の問題が発生します。
- どの記事が商談に貢献したか特定できない
- 改善すべき記事の優先順位が付けられない
- 経営層への説明で「なぜ成果が出ないか」を説明できない
この構造的な問題を解決しない限り、いくらROI計算を精緻にしても改善にはつながりません。まず戦略を言語化し、全記事に一貫して反映させる仕組みを整えることが先決です。
商談・受注起点の効果測定設計
PV起点ではなく商談・受注起点で効果測定を設計することで、経営層への説明と成果改善の両立が可能になります。
ROI分析に基づくツール選定を行ったメディアの85%超が導入後1年以内に投資回収を達成したという報告があります。適切な効果測定設計が成果につながることを示唆しています。
BtoB企業の成功事例では、過去3年で資料DL数34倍、受注額9倍を達成したケースがあります(ただし再現性は企業により異なります)。SEOと導線強化(ホワイトペーパー・ウェビナー連携)を組み合わせてリード育成した結果とされています。
【チェックリスト】商談・受注起点の効果測定設計
- ターゲット(誰に)が全記事で一貫して定義されている
- 自社の強み(何を)が記事の切り口に反映されている
- 競合との差別化ポイント(なぜ自社か)が明確になっている
- KGI(最終目標)が売上・受注数で設定されている
- KPIがKGIから逆算して設計されている
- 商談化率・受注率をKPIに含めている
- PVだけでなくCVR(コンバージョン率)を追跡している
- 記事ごとの商談貢献度を測定する仕組みがある
- 月次でKPI進捗をレビューする体制がある
- 四半期ごとにROIを算出・報告している
- 改善すべき記事の優先順位付け基準がある
- 経営層への報告フォーマットが定まっている
- 短期(PV・CV)と長期(商談・受注)のKPIを分けて管理している
- 投資額(制作費・運用費・ツール費)を正確に把握している
- 利益額(売上貢献額)の算出方法が定義されている
まとめ:計算式より先に戦略の一貫性を整える
本記事では、オウンドメディアのROI測定と効果測定設計について解説しました。
要点を整理すると以下の通りです。
- ROI計算式は「(利益額 - 投資額)÷ 投資額 × 100」だが、計算できることと改善できることは別問題
- PV増加と商談化の間には断絶があり、CVRや導線設計が不可欠
- 目的(リード獲得・認知向上・商談化)によって見るべきKPIが異なる
- 戦略の一貫性がなければ、数値を出しても原因特定・改善ができない
- 商談・受注起点で効果測定を設計することで経営層への説明と成果改善が両立できる
BtoBでは最低1年以上の継続が必要です。短期(3-6ヶ月)での判断は成果が出る前に撤退するリスクがあります。中間KPI(リード数等)と最終KPI(受注数等)を分けて評価することで適切な判断ができます。
オウンドメディアのROI測定は、計算式を覚えるだけでは改善につながりません。まず全記事に一貫した戦略(誰に・何を・なぜ)を反映させた上で、PVではなく商談・受注を起点とした効果測定を設計することで、初めて経営層への説明と成果改善の両立が可能になります。
まずは本記事のチェックリストで現状を確認し、戦略の一貫性と効果測定設計を見直してみてください。
