オウンドメディア戦略を設計しても成果が出ない原因
意外かもしれませんが、オウンドメディア戦略は「設計して終わり」ではなく、ターゲット・USP・競合情報を構造化して全記事に一貫して反映させる仕組みを整備することで、PVではなく商談・受注という成果につなげることができます。
2025年の調査(国内74メディア分析、営業関連BtoB企業対象)では、オウンドメディア経由売上が会社全体売上の10%未満の企業が13.6%、売上ゼロが14%という結果が報告されています(民間分析で、サンプル74メディアと限定的。営業BtoBに特化しているため、全業界の代表性に欠ける可能性があります)。
この数字が示すのは、戦略を設計しただけでは成果につながらないケースが少なくないという現実です。記事は出しているのに商談につながらない、担当者ごとに主張がバラバラで一貫性がない——こうした課題の背景には、戦略設計後の「仕組み化」の欠如があります。
この記事で分かること
- オウンドメディア戦略設計に必要な基礎概念(KGI/KPI、ペルソナ等)
- 戦略設計の3フェーズと進め方
- 記事ごとに主張がバラバラになる失敗パターンと回避策
- 戦略を全記事に一貫して反映させる仕組みづくり
- 実践に使える戦略設計チェックリスト
オウンドメディア戦略設計に必要な基礎概念
オウンドメディア戦略を設計する前に、押さえておくべき基礎概念があります。
KGI(Key Goal Indicator) とは、重要目標達成指標を指します。オウンドメディアの最終目標(売上、リード数など)を数値化したものです。
KPI(Key Performance Indicator) とは、重要業績評価指標を指します。KGI達成に向けた中間指標(PV、CV率、セッション数など)として設定します。
ペルソナとは、ターゲット顧客の具体的な人物像を指します。役職、課題、行動パターンなどを詳細に設定することで、誰に向けてコンテンツを作るかが明確になります。
カスタマージャーニーとは、顧客が課題認識から購買決定に至るまでの購買プロセスを可視化したものです。この設計により、顧客の各段階に適したコンテンツを計画できます。
SMART法則とは、目標設定の原則です。Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性)、Time-bound(期限)の5つの要素で目標を設定します。
KGIとKPIの設定|PVではなく商談・受注を起点に
PV数だけをKPIにすると、商談につながらないコンテンツ運用に陥りやすいため注意が必要です。
KGI(最終目標)を起点にKPIツリーを作成することで、全ての指標が成果に紐づく設計になります。たとえば、KGIが「月間商談数」であれば、そこから逆算して「問い合わせ数」「資料請求数」「CV率」「PV数」とKPIを設定していきます。
リード獲得目的のBtoBオウンドメディアにおけるCV率の相場は2%程度(HubSpot調査ベース)とされています。ただし、業界・企業規模・コンテンツの質により大きく変動するため、あくまで参考値として活用してください。
BtoB企業ではリード獲得だけでなく、商談化・受注につながる「成果指標」への関心が高まっています。
ペルソナとカスタマージャーニーの設計
ペルソナを設定せずにキーワード選定を始めると、ターゲット外のリードが増えて営業リソースが無駄になるケースがあります。
ペルソナは「誰に届けるか」を1人の人物像に落とし込むことで、検索キーワード選定の基盤となります。役職、抱えている課題、情報収集の行動パターンなどを具体的に設定します。
カスタマージャーニーを設計することで、課題認識段階の読者には基礎解説記事を、比較検討段階の読者には事例記事を、といったフェーズに応じたコンテンツ設計が可能になります。
戦略設計のフェーズと進め方
戦略設計は「戦略企画」「準備・構築」「運用」の3フェーズで進めることが効果的です。
BtoBオウンドメディアのKPI平均目安(中小企業向け、2025年)として、月間セッション数10,000、コンバージョン数50、記事公開数月4本、検索順位10位以内のキーワード数30個といった数値が参考として挙げられています(業界・企業規模により大きく変動します)。
また、オウンドメディアのPV目標目安として、現状1万→3ヶ月後2万、6ヶ月後5万、1年後10万という段階目標が推奨されています(2023-2024年推奨値)。短期間での成果を期待すると長期視点の戦略が崩れやすいため、段階的な目標設定が重要です。
【比較表】戦略設計フェーズ別のポイント比較表
| フェーズ | 主なタスク | 設定すべき指標 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| フェーズ1:戦略企画 | 目的設定、ペルソナ設計、競合分析、KGI設定 | 売上目標、リード獲得目標 | 経営層との合意形成が必要 |
| フェーズ2:準備・構築 | コンテンツ設計、キーワード選定、運用体制構築、KPI設定 | CV率、記事公開数、検索順位 | 運用体制の役割分担を明確に |
| フェーズ3:運用 | 記事制作、効果測定、改善サイクル | PV、セッション数、商談化率 | PDCAサイクルの継続が成功の鍵 |
| 効果検証期間 | データ蓄積、分析、戦略見直し | KGI達成度、ROI | 市場変化への対応が必要 |
| 継続改善 | コンテンツ更新、新規キーワード開拓 | コンテンツ鮮度、流入キーワード数 | 陳腐化したコンテンツの更新を忘れずに |
失敗するオウンドメディアの特徴と一貫性を保つ仕組み
よくある失敗パターンは、戦略設計を一度行っただけで満足し、記事制作を担当者任せにした結果、記事ごとに主張がバラバラになり、PVは増えても商談につながらない状態に陥ることです。この考え方では成果が出ません。
一方、成功事例として、ペルソナ基盤のSEO戦略で過去3年で資料ダウンロード34倍、受注額9倍、PV1.2倍、セッション1.3倍を達成したBtoBオウンドメディアが報告されています(2025年事例。匿名企業の自己申告ベースで、第三者検証が不足しているため、再現性は条件により異なります)。
この事例が示すのは、戦略設計だけでなく、それを全記事に一貫して反映させる仕組みが成果につながるという点です。
記事ごとに主張がバラバラになる失敗パターン
戦略ドキュメントを作成しても、実際の記事制作で活用されなければ形骸化してしまいます。
典型的な失敗パターンには以下のようなものがあります:
- 戦略ドキュメントが作成されたまま更新されず形骸化
- 担当者ごとにペルソナの解釈が異なる
- 各記事の主張が統一されておらず、メディア全体として何を言いたいのかわからない
- PVは増えているが、問い合わせや商談につながらない
短期間での成果を期待すると、記事数を増やすことが優先され、戦略との整合性が失われやすくなります。
戦略を全記事に一貫して反映させる仕組みづくり
戦略情報(ターゲット・USP・競合)を構造化し、記事テンプレートやガイドラインに落とし込むことで、記事制作者が戦略を意識しなくても一貫性が担保される仕組みを作ることができます。
具体的には以下のような取り組みが考えられます:
- ペルソナ情報をテンプレート化し、記事企画時に必ず参照する仕組み
- 自社のUSP(独自の強み)を明文化し、各記事で言及するルール化
- 競合との差別化ポイントをガイドラインに記載
- 記事レビュープロセスで戦略との整合性を確認するチェック項目
重要なのは、個々の担当者の意識や能力に依存せず、プロセスとして一貫性を担保する仕組みを構築することです。
戦略設計の実践とセルフチェック
戦略設計を実践する際は、PDCAサイクル(週次トラフィック確認、月次CVR分析)で継続改善することが重要です。
先述のKPI目安(月間セッション数10,000、コンバージョン数50など)と自社の現状を比較し、現実的な目標を設定してください。AI/SEO変化により市場ベンチマークが陳腐化しやすいため、自社データとの比較を重視することが推奨されます。
【チェックリスト】オウンドメディア戦略設計チェックリスト
- オウンドメディアの目的(リード獲得、認知向上、採用等)を明確に定義した
- KGI(最終目標)を数値で設定した
- KGIを起点にKPIツリーを作成した
- ペルソナ(ターゲット顧客の人物像)を具体的に設計した
- カスタマージャーニー(購買プロセス)を可視化した
- 競合オウンドメディアを分析し、差別化ポイントを明確にした
- 自社のUSP(独自の強み)を言語化した
- 検索キーワードを選定し、優先順位をつけた
- 記事制作の運用体制(役割分担)を決めた
- 記事テンプレートまたはガイドラインを作成した
- レビュープロセスで戦略との整合性を確認する仕組みを作った
- 効果測定の方法とツールを決定した
- PDCAサイクルを回す頻度(週次・月次等)を設定した
- 戦略情報を全担当者が参照できる場所に格納した
- 戦略情報の更新ルール(頻度・責任者)を決めた
まとめ|戦略を仕組み化して商談・受注につなげる
オウンドメディア戦略設計において、戦略を作成するだけでは成果につながりません。
本記事で解説したポイントを整理すると:
- KGI(商談・受注)を起点にKPIツリーを設計する
- ペルソナとカスタマージャーニーを明確に設計する
- 戦略設計は3フェーズ(戦略企画→準備・構築→運用)で進める
- 戦略ドキュメントを形骸化させず、全記事に反映させる仕組みを作る
- PDCAサイクルで継続的に改善する
上記のチェックリストと比較表を活用し、自社のオウンドメディア戦略設計を見直してみてください。
企業規模・業界により成果は異なりますが、戦略は「設計して終わり」ではなく、ターゲット・USP・競合情報を構造化して全記事に一貫して反映させる仕組みを整備することで、PVではなく商談・受注という成果につなげることができます。
