なぜオウンドメディア運用は途中で止まってしまうのか
意外かもしれませんが、オウンドメディアを少人数で成功させるには、役割分担だけでなく、戦略(誰に・何を・なぜ)が全記事に反映される仕組みを構築し、属人化を防ぐ体制設計が不可欠です。
多くの企業がオウンドメディアを立ち上げたものの、途中で更新が止まってしまう経験をしています。2025年のオウンドメディア運営体制調査によると、外注主導は13.5%、完全外注は0.9%で、内製中心の運用が主流です。つまり、多くの企業が自社リソースで運用を回そうとしている現状があります。
しかし、厚生労働省統計によると有効求人倍率は1.24倍(2025年2月、季節調整値)で、人材確保難が続いています。この状況下で担当者が離職すると、属人化(特定の担当者に業務知識やスキルが集中し、その人がいないと運用できない状態)していた場合、運用が完全に止まってしまうリスクがあります。
この記事で分かること
- オウンドメディア運用に必要な役割と人員構成
- 内製と外注の判断基準とコスト比較
- 少人数でも成果を出す体制設計のポイント
- 継続運用を実現するための運用フロー設計
オウンドメディア運用に必要な役割と人員構成
オウンドメディア運用には、企画・執筆・分析の3つの機能を担う役割が必要です。2025年の調査によると、6人以上のチーム体制で成果率が高く、人数と成果に正の相関があるとされています。ただし、この相関は予算規模や運用への本気度との関連も考慮が必要です。
編集ディレクターとは、オウンドメディアの企画立案・品質管理・KPI管理を担当する統括責任者を指します。小規模チームでは、この役割がマーケティング責任者と兼務されるケースが多いです。
BtoB中小企業の内製体制では、専任2-3名で月80-120万円程度の人件費がかかり、外注コンサルは月10-30万円が目安とされています。ただし、この金額は企業規模・地域差で変動するため、あくまで参考値として捉えてください。
主要な役割と責任範囲
オウンドメディア運用で必要な主要役割は以下の3つです。
- 編集ディレクター: 企画立案、コンテンツ戦略設計、品質管理、KPI設定・モニタリング
- ライター/コンテンツ制作者: 記事執筆、取材、画像選定、入稿作業
- 分析担当: アクセス解析、SEO分析、改善提案、レポート作成
小規模チームでは、編集ディレクターがライター業務や分析業務を兼務することも多いです。その場合、外部ライターや分析ツールを活用して負荷を分散させる工夫が重要になります。
内製と外注の判断基準
内製・外注・ハイブリッドの選択は、「自社のコア業務は何か」を軸に判断すべきです。ハイブリッド運用とは、社内内製と外部委託を組み合わせた運用体制で、戦略は内製、制作は外注といった役割分担を行う形態を指します。
よくある失敗パターンとして、役割を決めて人を配置すれば運用が回ると考え、戦略の言語化や品質管理の仕組み化を後回しにしてしまうことがあります。この考え方では成果が出ません。結果として記事ごとに主張がブレ、担当者が離れると運用が止まる状態に陥ります。
ある企業(EC代行BtoB)では、外注コンサル活用でSEO強化に取り組み、月間アクセス6倍、受注15倍を達成したという事例があります。ただし、この数値は企業自称値であり、因果関係の検証が十分ではない点に注意が必要です。
【比較表】オウンドメディア運用役割分担表
| 役割 | 完全内製 | ハイブリッド | 完全外注 |
|---|---|---|---|
| 戦略設計 | 内製 | 内製 | 外注 |
| 企画・編集 | 内製 | 内製 | 外注 |
| 記事執筆 | 内製 | 外注 | 外注 |
| SEO対策 | 内製 | 外注 | 外注 |
| 分析・改善 | 内製 | 内製/外注 | 外注 |
| メリット | 社内知見蓄積、迅速なPDCA | バランス型、柔軟な対応 | 専門性活用、リソース削減 |
| デメリット | 人件費高、属人化リスク | 連携コスト発生 | 戦略理解不足、コスト高 |
| 推奨ケース | 専門性が競争優位の企業 | 多くのBtoB中小企業 | 初期立ち上げフェーズ |
「内製化=コスト削減」という誤解がありますが、人件費を含めた総コストで比較すると、外注より高くなるケースも多いです。企画・分析工数など見えにくいコストも含めて判断することが重要です。
外注選定のポイント
外注を活用する場合は、単なる作業代行ではなく内製支援型外注を選ぶことが長期的に有利です。内製支援型外注とは、単なる作業委託でなく、社内へのノウハウ移転を目的とした外注形態を指します。
外注選定では以下のポイントを確認してください。
- 自社の業界・ターゲットへの理解度
- 戦略設計から関わる姿勢があるか
- ノウハウ移転・社内教育の仕組みがあるか
- 成果指標とレポーティングの明確さ
- 担当者の固定と継続性
少人数でも成果を出す体制設計のポイント
人数を増やすよりも「仕組み化」が重要です。6人以上で成果が出やすいという調査結果はあるものの、予算規模や運用への本気度との相関も大きいため、少人数でも戦略の言語化と仕組み化ができていれば、専任1名+外注からスタートすることは可能です。
PDCAとは、Plan-Do-Check-Actの略で、企画→実行→検証→改善のサイクルで継続的に改善する手法です。このサイクルを回すためには、属人化を防ぐ仕組みが必要になります。
【チェックリスト】体制構築チェックリスト
- ターゲット(誰に読んでほしいか)が明文化されている
- 訴求軸(何を伝えるか)が言語化されている
- 記事の目的(なぜ書くのか)が明確になっている
- NG表現・使用禁止ワードがリスト化されている
- トンマナガイドが作成されている
- ブリーフシート(企画書テンプレート)がある
- 執筆ガイドラインがある
- 校正・承認フローが決まっている
- 公開後の効果測定KPIが設定されている
- 改善提案の仕組み(定例ミーティング等)がある
- 担当者が離れた場合の引き継ぎ手順がある
- ナレッジ共有の仕組み(ドキュメント管理等)がある
戦略を全記事に反映させる仕組み
記事ごとの主張ブレを防ぐには、戦略情報を言語化し、すべての記事制作プロセスに組み込む仕組みが必要です。
具体的には以下の仕組みを整備します。
- ブリーフシート: 記事ごとにターゲット・訴求軸・キーワードを明記した企画書
- トンマナガイド: 文体・表記ルール・NG表現をまとめたガイドライン
- 承認フロー: 企画→執筆→校正→公開の各段階でのチェック体制
- ナレッジベース: 過去記事の成果データや改善ポイントを蓄積する仕組み
これらの仕組みがあれば、担当者が変わっても「誰に・何を・なぜ」が一貫した記事を継続的に作成できます。
継続運用を実現するための運用フロー設計
継続運用の鍵は、一時的なリソース投入ではなく、仕組み化された体制設計にあります。キーエンスは10年間の継続運用で1,000記事超を蓄積し、NECのwisdomは2004年開始の22年超にわたる運用を続けています(民間ブログベースの事例集情報であり、一次データの検証は限定的です)。
こうした長期継続を実現するには、以下の運用フローを設計することが重要です。
- 企画: ターゲット・キーワード・訴求軸をブリーフシートで明確化
- 執筆: ガイドラインに基づいた記事作成
- 校正: トンマナ・ファクトチェック・SEO観点での確認
- 承認: 責任者による最終チェックと公開判断
- 公開: CMSへの入稿と公開作業
- 分析: アクセス解析・検索順位のモニタリング
- 改善: データに基づくPDCAの実行
このフローを文書化し、担当者が変わっても同じ品質で運用できる状態を作ることが、継続運用の土台となります。
まとめ:仕組み化で属人化を防ぎ、継続できる体制を構築する
オウンドメディア運用が途中で止まってしまう原因の多くは、属人化と戦略の不明確さにあります。役割を決めて人を配置するだけでは、担当者の離職や業務負荷の増大で運用が破綻するリスクが高いです。
本記事のポイントを整理します。
- 内製中心の運用が主流だが、人材確保難の中で属人化リスクが高まっている
- 6人以上で成果が出やすいとされるが、仕組み化ができていれば少人数でも運用可能
- 内製・外注・ハイブリッドの選択は総コストと自社のコア業務を軸に判断する
- 戦略(誰に・何を・なぜ)を言語化し、全記事に反映させる仕組みが不可欠
- ブリーフシート、トンマナガイド、承認フローで属人化を防ぐ
オウンドメディアを少人数で成功させるには、役割分担だけでなく、戦略が全記事に反映される仕組みを構築し、属人化を防ぐ体制設計が不可欠です。
まずは自社の現状体制を棚卸しし、戦略の言語化・仕組み化ができているかを確認することから始めてみてください。
