SaaSのコンテンツマーケティングで成果が出ない根本原因
多くの方が悩むSaaSのコンテンツマーケティングでの成功。結論は、SaaSのコンテンツマーケティングで成果を出すには、記事の量産ではなく、「誰に・何を・なぜ」を全コンテンツで一貫させ、PVではなくCV・商談化率・受注率を基準に設計・改善する仕組みを構築することが重要です。
「記事を量産してPVは増えたが、商談や受注につながらない」——SaaS企業のマーケティング担当者から、こうした相談を受けることが増えています。コンテンツマーケティングに取り組んでいるにもかかわらず、期待した成果が得られない原因はどこにあるのでしょうか。
この記事で分かること
- SaaSとコンテンツマーケティングの相性が良い理由
- PVが増えても商談につながらない構造的な問題と失敗パターン
- 成功企業の事例から学ぶポイントと成長フェーズ別施策
- 商談・受注につなげるための戦略設計と成果改善チェックリスト
SaaSとコンテンツマーケティングの相性が良い理由
SaaSのビジネスモデルは、コンテンツマーケティングとの相性が非常に良いとされています。継続課金型のビジネスでは、LTVを最大化しながらCACを抑えることが重要であり、コンテンツは長期的な資産として機能するためです。
LTV(顧客生涯価値) とは、一人の顧客が取引開始から終了までにもたらす利益の総額を指します。SaaSでは解約率とともに最重要指標とされています。CAC(顧客獲得コスト) は、新規顧客1社を獲得するためにかかるマーケティング・営業費用の合計です。
SaaSは検討期間が長く、複数の意思決定者が関与するケースが多いため、継続的な情報提供が求められます。単発の広告出稿に依存するよりも、有益なコンテンツを通じて見込み顧客との接点を維持し、信頼関係を構築するアプローチが有効です。
継続課金モデルに適したリード獲得・育成の重要性
MQL/SQLとは、マーケティング部門が獲得した見込み顧客(MQL)と、営業部門がアプローチすべき商談見込み顧客(SQL)を区別する概念です。ナーチャリングは、獲得したリードに継続的に情報提供し、購買意欲を高めて商談化につなげるプロセスを指します。
SaaSでは、認知→検討→導入→継続というカスタマージャーニー全体をコンテンツでカバーすることが重要です。認知段階では課題解決型の記事、検討段階では比較・事例コンテンツ、導入後は活用ガイドやベストプラクティスといった形で、各段階に合った情報を提供することで、長期的な顧客関係を構築できます。
PVが増えても商談につながらない構造的な問題
「コンテンツを増やせば成果が出る」「PVが増えれば商談も増える」という考え方は誤りです。 ターゲットや主張がバラバラな記事を量産してしまうと、流入は増えても商談・受注につながらない状態に陥ります。
この失敗パターンに陥る原因は、記事の量産自体を目的化し、「誰に・何を・なぜ伝えるか」という戦略の一貫性を欠いていることにあります。また、「プロダクト機能の説明を中心にすれば購入につながる」という誤解も、成果が出ない要因のひとつです。見込み顧客は機能よりも、自社の課題がどう解決されるかを知りたいと考えています。
戦略の一貫性が欠けた記事量産の失敗パターン
記事ごとに想定読者や訴求ポイントが異なっていると、読者に一貫したメッセージが伝わりません。「誰に・何を・なぜ」が明確でないまま量産された記事は、検索意図と合わない流入を増やし、直帰率の上昇やCV率の低下を招きます。
また、PV数だけを評価指標にしている場合、流入は増えても商談につながらない記事が量産され続けるという悪循環に陥りやすくなります。PVから商談・受注までの成果指標を設計し、コンテンツの質を継続的に改善する体制が必要です。
SaaSコンテンツマーケティングの成功事例から学ぶポイント
成功企業の事例を見ると、共通するポイントが浮かび上がります。ただし、以下の数値は各社発表ベースであり、商材・市場・投資規模により成果は大きく異なる点にご注意ください。
SmartHRは8年間で約1,000記事を制作し、累計約2,000万人リーチを獲得したと報告されています(2025年時点の分析)。長期的な投資を前提に、コンテンツを資産として積み上げてきた事例です。
イルグルム(アドエビス)は自社オウンドメディアを通じて月間300リード獲得を実現しています。BtoB SaaSにおけるコンテンツ経由のリード獲得事例として参考になります。
キーエンスは80サイト以上の製品別オウンドメディアを展開し、年間100社超の新規取引先獲得を実現しています。製品ごとにテーマを絞り込み、徹底的に深掘りする戦略が特徴です。
また、あるEC支援系BtoB企業では、オウンドメディアからの受注数が15倍に増加した事例も報告されています。
ホワイトペーパーとは、見込み顧客の課題解決に役立つ情報をまとめた資料で、リード獲得の主力コンテンツとして活用されています。
【比較表】成長フェーズ別コンテンツ施策対応表
| フェーズ | 施策例 | 主なKPI | 成功事例の参考ポイント |
|---|---|---|---|
| 認知 | SEO記事、SNS発信、業界レポート | PV数、UU数、SNSエンゲージメント | SmartHR: 8年で1,000記事、2,000万人リーチ |
| 検討 | ホワイトペーパー、比較記事、導入事例 | 資料DL数、MQL数 | イルグルム: 月間300リード獲得 |
| 導入 | 製品デモ、無料トライアル、ROI計算ツール | 商談数、SQL数、商談化率 | キーエンス: 年間100社超の新規取引先 |
| 継続 | 活用ガイド、ベストプラクティス、ユーザーコミュニティ | 解約率、NPS、アップセル率 | NEC: 20年運営、84万会員の読者基盤 |
中長期投資で成果を出した企業の共通点
NECは20年以上運営のBtoBオウンドメディアで84万会員の読者基盤を構築しています。長期的な運営により、コンテンツが資産として蓄積され、継続的なリード獲得基盤となっている事例です。
成功企業に共通するポイントは以下の通りです。
- テーマの絞り込みと徹底的な深掘り: 自社の専門領域に特化し、読者にとって価値の高いコンテンツを提供
- 全ページに資料DL導線を設置: コンテンツを読んで終わりにせず、リード化につなげる設計
- 中長期の継続投資: 成果が出るまで1年以上を見込んだ計画的な取り組み
成果を出すための戦略設計と実践ステップ
商談・受注につなげるためには、PVではなくCV・商談化率・受注率を基準にした設計が必要です。あるオンライン学習サービスでは、コンテンツ施策で会員登録数+64%、メール講座の平均開封率38%(業界平均比+12ポイント)を達成した事例があります。ナーチャリングまで一貫した設計が成果につながった例です。
戦略設計の起点は「誰に・何を・なぜ伝えるか」を明確にすることです。この3つの要素を全コンテンツで一貫させることで、記事ごとの主張のブレを防ぎ、読者に一貫したメッセージを届けることができます。
【チェックリスト】SaaSコンテンツマーケティング成果改善チェックリスト
- ICP(理想顧客像)を具体的に定義している
- ペルソナの課題・ニーズを言語化している
- 全コンテンツで「誰に・何を・なぜ」を一貫させている
- PV以外の成果指標(DL数、MQL数、商談化率)を設定している
- 事業KPIからマーケKPI、コンテンツKPIを逆算している
- 全ページに資料DL・問い合わせ導線を設置している
- ホワイトペーパー→メール→ウェビナー→商談の導線を設計している
- コンテンツの成果を定期的に振り返り、改善している
- 認知・検討・導入・継続の各段階向けコンテンツを用意している
- 記事の主張がプロダクト機能ではなく顧客課題の解決になっている
- 成果が出るまで1年以上の中長期計画を立てている
- テーマを絞り込み、専門性を確立している
- 競合他社との差別化ポイントを明確にしている
- 営業部門と連携し、商談化の状況をフィードバックしている
ターゲット・ペルソナ設定から始める一貫性の構築
戦略の一貫性を保つ起点は、ICP(理想顧客像)の設定です。業種、企業規模、担当者の役職、抱えている課題を具体的に定義し、全コンテンツの企画・制作時に参照できる形で共有します。
ペルソナが明確になれば、「この読者にとって価値のある情報は何か」という判断基準が生まれ、記事ごとの主張のブレを防ぐことができます。
PVから商談・受注までの成果指標設計
成果指標は「事業KPI→マーケKPI→コンテンツKPI」の順で逆算して設計します。最終的な事業目標(MRR、受注数など)から、そのために必要な商談数、MQL数、資料DL数を算出し、コンテンツごとの目標に落とし込みます。
この逆算設計により、PV数だけを追うのではなく、DL数・商談数・MRRとの因果関係を意識したコンテンツ運用が可能になります。具体的な数値目標は各社の状況により異なりますが、成果指標の構造を明確にすることが重要です。
まとめ|商談・受注につながるSaaSコンテンツマーケティングの設計
本記事では、SaaSのコンテンツマーケティングで成果を出すための戦略設計と実践ステップを解説しました。
ポイントを整理します
- 「コンテンツを増やせば成果が出る」という考えは誤り。戦略の一貫性が重要
- 成功企業は中長期投資を前提に、テーマの絞り込みと全ページの導線設計を徹底
- PVではなくCV・商談化率・受注率を基準に成果指標を設計する
- 「誰に・何を・なぜ」を全コンテンツで一貫させる仕組みを構築する
本記事で紹介したチェックリストを活用して、自社のコンテンツマーケティングの状況を診断し、改善に取り組んでください。
SaaSのコンテンツマーケティングで成果を出すには、記事の量産ではなく、「誰に・何を・なぜ」を全コンテンツで一貫させ、PVではなくCV・商談化率・受注率を基準に設計・改善する仕組みを構築することが重要です。
