SaaSマーケティング戦略|KPI運用完了9.6%の現実と成果を出す設計法

著者: B2Bコンテンツマーケティング実践ガイド編集部公開日: 2026/1/169分で読めます

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SaaSマーケティングで成果が出ない原因は戦略の不在にある

SaaSマーケティングで成果を出すには、施策の網羅ではなく、ターゲット・訴求軸を言語化して全コンテンツに一貫させる仕組みと、PVではなくCVR・商談化率を起点とした戦略設計が重要である——本記事ではこの結論を詳しく解説します。

国内SaaS市場は急成長を続けています。IDC Japanの予測によると、2024年の市場規模は1.4兆円で、2028年には2兆円(約1.5倍)に拡大する見込みです。また、スマートキャンプの「SaaS業界レポート2025」では、2029年度に3兆4,000億円に到達するとの予測もあります(調査機関により数値に乖離がある点には注意が必要です)。

市場が拡大する一方で、「コンテンツを増やしてもリードの質が上がらない」「PVは伸びても商談につながらない」という悩みを抱えるマーケティング担当者は多いのではないでしょうか。

この記事で分かること

  • SaaSマーケティングで押さえるべき重要KPI(LTV、CAC、チャーン率など)の意味と設定方法
  • 主要なマーケティング手法と成果指標の対応関係
  • ターゲット・訴求軸を言語化し、全コンテンツに一貫させる仕組み
  • CVR・商談化率を起点としたコンテンツ設計の考え方

SaaSマーケティングで押さえるべき重要KPIと用語

SaaSビジネスの成果を測定するには、LTV・CAC・チャーン率・ARR・NRRという5つのKPIを理解することが基本です。ただし、Ragate社の調査(SaaS事業責任者550名対象、2026年1月)によると、KPI(LTV/NRR等)の体系化・運用が完了している企業はわずか9.6%にとどまっています(自己申告ベースのためバイアスの可能性があります)。

この数値が示すように、KPIを設定するだけでなく、継続的に運用し改善する体制を構築することが重要です。

LTV・CACとその関係性

LTV(顧客生涯価値) とは、1顧客が取引開始から終了までに企業にもたらす総収益を指します。SaaSビジネスは継続課金モデルであるため、LTVは最も重要な指標のひとつです。

CAC(顧客獲得コスト) とは、新規顧客1件を獲得するためにかかる総コストです。広告費、営業人件費、ツール費用などが含まれます。

SaaSビジネスではLTVとCACのバランスが収益性を左右します。LTVがCACを大きく上回る状態を維持できれば、持続的な成長が可能になります。

チャーン率・NRRの重要性

チャーン率(解約率) とは、一定期間内に解約した顧客の割合です。SaaSでは月次・年次で測定し、継続率向上が重要な課題となります。

NRR(純収益維持率) とは、既存顧客からの収益維持・拡大率を示す指標です。アップセル・クロスセルによる収益増加も含まれ、一般的に110%を超えると優良とされています。

チャーン率を抑え、NRRを高めることが、SaaSビジネスの持続的成長には不可欠です。

SaaSマーケティングの主要手法と成果指標

SaaSマーケティングには複数の手法がありますが、「手法を網羅的に導入すれば成果が出る」という考え方は誤りです。これはよくある失敗パターンであり、戦略(誰に・何を・なぜ)を言語化しないまま施策を実行してしまうと、「コンテンツは増えたがリードの質が低い」「記事ごとに訴求がバラバラで商談につながらない」状態に陥りやすくなります。

2025年の調査によると、企業の約7割がSaaSを活用しており、1社あたりのSaaS利用数は「5個以下」が52.9%、「11個以上」が33.0%と、従業員数の増加に伴い利用数が増える傾向にあります。市場は成熟しつつあり、差別化された訴求が求められています。

【比較表】SaaSマーケティング手法と成果指標の対応表

手法 主な施策 主要な成果指標 特徴
コンテンツマーケティング SEO記事、ホワイトペーパー、ウェビナー CVR、商談化率、MQL数 長期的な資産形成、認知獲得に有効
広告・リードジェネレーション リスティング広告、SNS広告、展示会 CPA、CAC、リード獲得数 短期的な成果が見込める、CACに直結
メールマーケティング ナーチャリングメール、ステップメール 開封率、クリック率、商談化率 既存リードの育成、低コスト
プロダクトマーケティング 無料トライアル、フリーミアム トライアル転換率、有料化率 プロダクト体験による説得力
カスタマーサクセス オンボーディング、活用支援 チャーン率、NRR、CSAT 解約防止、アップセル機会創出

コンテンツマーケティング

コンテンツマーケティングはSEO記事、ホワイトペーパー、ウェビナーなどを通じて見込み顧客を獲得する手法です。重要なのは、PVを増やすことではなく、CVR・商談化率を起点とした設計です。

「PVを増やせば成果が出る」という誤解は、SaaSマーケティングでよく見られる失敗パターンです。PVが増えてもターゲット外の流入が多ければ商談にはつながりません。

広告・リードジェネレーション

有料広告やリード獲得施策は、短期的に成果を出したい場合に有効です。ただし、広告費はCACに直結するため、戦略との整合性が特に重要になります。

ターゲットが明確でなければ、広告費をかけても質の低いリードが増えるだけです。戦略を先に固めることで、広告投資の効率が大きく変わります。

戦略の一貫性を担保するコンテンツ設計

SaaSマーケティングで成果を出すには、「誰に・何を・なぜ」を言語化し、全コンテンツに一貫して反映させる仕組みが必要です。

2025年のスマートキャンプ調査(n=1,500)によると、SaaS利用率は全国平均31.8%、関東地域では49.8%に達しています。市場の成熟に伴い、ターゲットを絞り込んだ訴求がますます重要になっています。

ターゲット・ペルソナの設定方法

SaaSマーケティングにおけるペルソナ設定では、役職・部署・課題・悩みを必須要素として定義することが重要です。

具体的には以下の項目を言語化します。

  • 役職・立場: 意思決定者か、現場担当者か
  • 部署・業務: どのような業務課題を抱えているか
  • 課題・悩み: 解決したい具体的な問題は何か
  • 情報収集行動: どのような経路で情報を探すか

これらを文書化し、コンテンツ制作者全員が参照できる状態にすることで、一貫性を担保できます。

CVR・商談化率を起点とした設計

コンテンツ設計は、PVではなくCVR・商談化率から逆算して行います。「どのようなユーザーが、どのような記事を読み、どのような行動をとれば商談につながるか」を先に設計し、そこから必要なコンテンツを導き出すアプローチです。

【チェックリスト】SaaSマーケティング戦略設計チェックリスト

  • ターゲット顧客の役職・部署を明確に定義している
  • ターゲット顧客の課題・悩みを具体的に言語化している
  • 自社の強み・差別化ポイント(USP)を明文化している
  • 競合との違いを説明できる状態になっている
  • LTV・CAC・チャーン率などのKPIを設定している
  • KPIの測定方法と頻度を決めている
  • コンテンツごとの目標CVRを設定している
  • CVRから商談化率への導線を設計している
  • ペルソナ情報をコンテンツ制作者全員が参照できる
  • 訴求軸が全コンテンツで一貫しているか定期的に確認している
  • PVだけでなくCVR・商談化率を定期的にレビューしている
  • 成果が出ていない施策を見直す基準を決めている

SaaSマーケティング戦略の実践ステップ

戦略設計から施策実行、効果検証までを段階的に進めることが重要です。先述の通り、KPIの体系化・運用が完了している企業は9.6%にとどまっており(自己申告ベース)、多くの企業が設計途上にあります。

成功事例としては、SalesTech領域でAI融合による営業効率化を実現し、サービス開始2年でARR20億円を達成した企業の報告があります(企業発表ベースであり、因果関係の検証は十分ではありません)。

スモールスタートでKPI設計を進める

KPI運用完了が9.6%にとどまる現状を踏まえると、最初から完璧な体制を目指すのではなく、スモールスタートで始めることが現実的です。

具体的なステップは以下の通りです。

  1. 最重要KPIを1-2個に絞る: まずはLTVとCACなど、基本的な指標から測定を始める
  2. 月次でレビューする仕組みを作る: 定期的に数値を確認し、改善点を洗い出す
  3. 成果に応じて指標を追加する: 基本指標が安定してからNRRやチャーン率を追加
  4. PDCAを回し続ける: 継続的な検証と改善が成果につながる

まとめ|施策網羅より戦略一貫性と商談化率起点で成果を出す

本記事では、SaaSマーケティングで成果を出すための戦略設計について解説しました。

重要なポイントを整理します。

  • KPIの理解と設定: LTV、CAC、チャーン率、ARR、NRRの5つのKPIを理解し、測定・運用する体制を構築する
  • 戦略の一貫性: ターゲット・訴求軸を言語化し、全コンテンツに反映させる仕組みを作る
  • 成果指標起点の設計: PVではなく、CVR・商談化率から逆算してコンテンツを設計する
  • スモールスタート: 最初から完璧を目指さず、段階的にKPI運用を拡大する

「マーケティング手法を網羅的に導入すれば成果が出る」という考え方では、コンテンツは増えても商談にはつながりません。

SaaSマーケティングで成果を出すには、施策の網羅ではなく、ターゲット・訴求軸を言語化して全コンテンツに一貫させる仕組みと、PVではなくCVR・商談化率を起点とした戦略設計が重要です。

本記事のチェックリストを活用し、自社の戦略設計状況を確認することから始めてみてください。

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よくある質問

Q1SaaSマーケティングで重要なKPIは何ですか?

A1LTV(顧客生涯価値)、CAC(顧客獲得コスト)、チャーン率(解約率)、ARR(年次経常収益)、NRR(純収益維持率)の5つが重要です。ただし、Ragate社の調査(SaaS事業責任者550名対象、2026年1月)によると、KPIの体系化・運用が完了している企業は9.6%にとどまっており、多くの企業が設計途上にあります。

Q2国内SaaS市場の規模はどのくらいですか?

A2IDC Japanの予測では2024年に1.4兆円、2028年には2兆円(約1.5倍)に拡大する見込みです。また、スマートキャンプの「SaaS業界レポート2025」では2029年度に3兆4,000億円に到達するとの予測もあります。調査機関により数値に乖離がありますが、市場は拡大傾向にあります。

Q3SaaSマーケティングで成果が出ない原因は何ですか?

A3施策を網羅的に導入すれば成果が出ると考え、戦略(誰に・何を・なぜ)を言語化しないまま実行してしまうことが主な原因です。その結果、PVは増えてもリードの質が低い、記事ごとに訴求がバラバラで商談につながらない状態に陥りやすくなります。

Q4SaaSの利用率はどのくらいですか?

A42025年のスマートキャンプ調査(n=1,500)によると、SaaS利用率は全国平均31.8%、関東地域では49.8%です。企業の約7割がSaaSを活用しており、1社あたりの利用数は「5個以下」が52.9%、「11個以上」が33.0%で、従業員数の増加に伴い利用数が増える傾向にあります。

Q5SaaSマーケティングの成功事例はありますか?

A5SalesTech領域では、AI融合による営業効率化を実現し、サービス開始2年でARR20億円を達成した企業の事例があります(企業発表ベース)。成功パターンとしては、ターゲットを明確にした戦略の一貫性と、CVR・商談化率を起点とした設計が共通しています。

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B2Bコンテンツマーケティング実践ガイド編集部

「PVではなく商談につながる」をテーマに、BtoB企業のマーケ担当者へ実践ノウハウを発信。デシセンス株式会社が運営。