SaaS企業のオウンドメディアが商談につながらない理由
SaaSオウンドメディアの成功事例とは何か。SaaS企業のオウンドメディア成功は、記事数やPVではなく、プロダクト理解を促進するコンテンツ設計と、リードを商談につなげるナーチャリング導線の一貫性によって実現できます。
この記事で分かること
- SaaSオウンドメディアの成功パターンと基本知識
- 商談化率を高めた具体的な成功事例
- 成功するオウンドメディアと失敗するオウンドメディアの違い
- 自社メディアを診断するためのチェックリスト
オウンドメディアとは、企業が自社で保有・運営するWebメディアを指します。広告に依存せず、自社コントロール型の情報発信が可能な点が特徴です。
ある調査によると、オウンドメディア運営停止理由の54.3%が「運営担当者の不在・リソース不足」となっています(サンプル規模は限定的なため、傾向把握の参考値としてご覧ください)。また、2025年のPRトレンド調査では、オウンドメディア運用を広報強化手法として活用する企業は23.1%(前年21.1%)、今後検討予定は41.4%で最多となっています(広報責任者対象の自己申告ベース)。
関心は高まっているものの、実際に商談・受注につなげられている企業は限られています。PVだけを追求しても、商談につながらないケースが多いのが実情です。
SaaSオウンドメディアの成功パターンと基本知識
SaaSオウンドメディアの成功パターンを理解するには、まず目的別の分類を把握することが重要です。PVではなく商談化率で成果を測る視点が求められます。
商談化率とは、リード(見込み客)から商談に至った割合を指し、BtoBでは20%前後が業界平均とされています。リードナーチャリングとは、獲得した見込み客を教育・育成し、購買意欲を高めて商談につなげるプロセスです。インバウンドマーケティングとは、有益なコンテンツで顧客を引き寄せる手法であり、プッシュ型の広告と対比されます。
日本のSaaS市場規模は2023年1.3兆円から2024年1.4兆円へ成長しており、IDC Japanの予測では2028年には2兆円(約1.5倍)に達するとされています。年平均成長率は10.9%と高い水準です。この成長市場において、オウンドメディアは広告に依存しないリード獲得手段として重要性を増しています。
リード獲得型・ナーチャリング型・ブランディング型の違い
SaaSオウンドメディアは目的によって大きく3つに分類できます。
リード獲得型は、検索流入からの資料請求や問い合わせを主な目的としたメディアです。SEO対策を重視し、検討段階のキーワードを網羅する戦略が中心となります。中小SaaS企業が最初に取り組むケースが多いタイプです。
ナーチャリング型は、獲得したリードを育成し、商談・受注につなげることを重視したメディアです。メールマガジンやホワイトペーパーとの連携が特徴で、コンテンツの質と導線設計が成果を左右します。
ブランディング型は、企業やプロダクトの認知・信頼構築を目的としたメディアです。大企業や成熟したSaaS企業が取り組むケースが多く、PVや認知度向上が主なKPIとなります。
いずれのタイプでも、最終的には商談・受注への貢献度で評価することが重要です。
SaaSオウンドメディア成功事例と失敗パターンの比較
成功するSaaSオウンドメディアと失敗するオウンドメディアには明確な違いがあります。以下の比較表で、その違いを確認してください。
成功事例を参考に記事を量産するものの、プロダクトとの関連性が薄く、リード獲得後の育成導線も設計されていないため、PVは増えても商談・受注につながらないオウンドメディアになってしまうというのは、よくある失敗パターンです。
CTA(Call To Action) とは、資料ダウンロードや問い合わせなど、読者に次のアクションを促す導線要素を指します。
【比較表】成功するSaaSオウンドメディアと失敗するオウンドメディアの違い比較表
| 項目 | 成功するオウンドメディア | 失敗するオウンドメディア |
|---|---|---|
| 目標設定 | 商談化率・受注への貢献度で評価 | PV数・記事本数だけを追求 |
| コンテンツ設計 | プロダクト理解促進に直結 | プロダクトとの関連性が薄い |
| CTA設計 | 記事ごとに適切なCTAを配置(2〜4個/記事) | CTAが不足または一律配置 |
| 内部リンク | 関連記事への導線を設計(3〜4本/記事) | 内部リンクが不足 |
| ナーチャリング | リード獲得後の育成導線を設計 | リード獲得後のフォローなし |
| 運用体制 | 編集長+ライター+SEO担当の体制 | 担当者任せで属人化 |
| 記事の質 | 検索意図に応え、専門性が高い | 量産優先で質がバラバラ |
成功事例:商談化率を高めたSaaS企業
SaaSオウンドメディアの成功事例をご紹介します。ただし、以下の数値は企業自己申告ベースであり、業界・企業規模により成果は変動します。
Sansanの「営業DX Hand Book」は、BtoB営業関連74メディア調査において総合スコア4.23でトップを獲得しています。月間平均記事作成数12.8本、CV獲得系記事割合47.4%を実現しており、リード獲得だけでなく商談化につなげるコンテンツ設計が特徴です。
ある事例では、商談化率32%を達成しています(業界平均20%前後の約1.6倍、12ヶ月目実績)。この事例では、検討段階のキーワードを網羅するコンテンツ戦略と、リード獲得後のナーチャリング導線が成果につながったと報告されています。
また、教育型メディアの成長例として、運営3年後に資料ダウンロード数34倍、受注額9倍を達成した事例もあります(企業自己申告ベースで第三者検証はされていません)。
サイボウズ式は月間300万PV、メディア露出年間400件、企業ブランド価値5年間で400%向上、採用応募数年間2.3倍増加を達成していますが、これは大企業の事例であり、中小SaaS企業への直接適用には注意が必要です。
失敗パターン:PVは増えても商談につながらない原因
PVは増えても商談につながらない原因は、コンテンツとプロダクトの関連性の薄さ、およびリード獲得後の育成導線の不在にあります。
成功事例を見て記事を量産しても、自社プロダクトの価値を理解させるコンテンツ設計がなければ、読者は「役に立つ情報を得た」だけで離脱してしまいます。資料ダウンロードや問い合わせに至らず、仮にリードを獲得しても商談化しないケースが多くなります。
また、運営停止理由の54.3%が「運営担当者の不在・リソース不足」というデータが示すように、継続的な運用体制の構築も課題となっています。担当者任せの属人化した運用では、記事ごとの主張がバラバラになり、一貫性のないメディアになりやすい傾向があります。
プロダクト理解を促進するコンテンツ設計の考え方
SaaSオウンドメディアで成果を出すには、プロダクト理解を促進するコンテンツ設計が不可欠です。成功事例の平均値を参考にしながら、自社に合った設計を検討してください。
BtoB営業関連メディアの成功事例では、1記事あたりCTA数2.2〜4個、平均内部リンク数3.5〜3.9本、平均文字数7400〜7500文字、月間記事作成数12.8〜14.2本という数値が報告されています。
これらの数値はあくまで参考であり、自社のリソースや目標に合わせて調整することが重要です。ただし、CTAや内部リンクの不足は導線設計の弱さを示すため、見直しの指標として活用できます。
検討キーワードを網羅するコンテンツ戦略
SaaSオウンドメディアでは、ファネル中下部(検討段階)のキーワードを網羅するコンテンツ戦略が効果的です。
例えば、SFA(営業支援システム)を提供するSaaS企業であれば、「SFA 比較」「営業管理 ツール」「商談管理 方法」といった検討段階のキーワードで記事を作成し、自社プロダクトの価値を理解してもらうコンテンツへ誘導する設計が有効です。
認知段階のキーワード(「営業とは」など)で流入を増やしても、プロダクト理解につながるコンテンツへの導線がなければ、商談化率は低くなります。記事間の導線設計と、プロダクトとの関連性を意識したコンテンツ戦略が求められます。
SaaSオウンドメディア診断と改善の進め方
自社のオウンドメディアが商談につながる設計になっているか、以下のチェックリストで診断してください。チェックが入らない項目があれば、改善のポイントとして検討する価値があります。
【チェックリスト】SaaSオウンドメディア診断チェックリスト
- オウンドメディアの目標がPV数だけでなく商談化率・受注貢献度で設定されている
- 記事ごとにターゲット読者(ペルソナ)が明確に定義されている
- 記事の主張・メッセージが全体で一貫している
- プロダクト理解を促進するコンテンツが含まれている
- 検討段階のキーワードを網羅するコンテンツ戦略がある
- 1記事あたり2〜4個のCTAが適切に配置されている
- 1記事あたり3〜4本の内部リンクで関連記事への導線がある
- 記事の文字数が7000文字以上で十分な情報量がある
- リード獲得後のナーチャリング導線(メール・ホワイトペーパー等)が設計されている
- 編集長(責任者)+ライター+SEO担当の運用体制が整っている
- 月間の記事作成ペースが一定以上(目安:10本以上)維持されている
- 商談化率・受注への貢献度を定期的に測定・レポートしている
- 成功事例の分析から自社に適用できるポイントを抽出している
- リソース不足による運営停止リスクへの対策がある
運用体制と継続のための仕組みづくり
オウンドメディアを継続的に運用するためには、体制と仕組みの構築が不可欠です。運営停止理由の54.3%が「運営担当者の不在・リソース不足」というデータを踏まえると、属人化を防ぐ体制設計が重要となります。
推奨される体制例として、編集長(全体戦略・品質管理)、外部ライター(執筆)、SEO担当(キーワード選定・効果測定)の役割分担が挙げられます。社内リソースだけで完結させようとすると、担当者の異動や退職でメディアが止まるリスクがあります。
継続のためには、記事のテンプレート化、レビュープロセスの標準化、成果指標の可視化など、仕組みとして運用を回せる状態を目指すことが重要です。
まとめ:商談につながるSaaSオウンドメディアの作り方
SaaSオウンドメディアで商談・受注につなげるためには、記事数やPVを追求するだけでは不十分です。
本記事で紹介した比較表と診断チェックリストを活用し、自社メディアの現状を把握してください。成功事例に共通するのは、プロダクト理解を促進するコンテンツ設計と、リードを商談につなげるナーチャリング導線の一貫性です。
次のアクションとして、まずは診断チェックリストで自社メディアの課題を特定し、CTA設計や内部リンクの見直しから着手することをおすすめします。継続的な運用体制の構築も並行して検討してください。
SaaS企業のオウンドメディア成功は、記事数やPVではなく、プロダクト理解を促進するコンテンツ設計と、リードを商談につなげるナーチャリング導線の一貫性によって実現できます。
