スタートアップにとってオウンドメディアが重要な理由
先に答えを言うと、スタートアップのオウンドメディアは、記事数を追うのではなく、自社の強み・ターゲット・差別化ポイントを明確にした戦略を全記事に一貫して反映させることで、少人数でも採用・商談獲得に貢献する資産になります。
「オウンドメディアを始めたいが、少人数で運営できるか不安」「記事を書いても成果につながるか分からない」——こうした課題を抱えるスタートアップの経営者やマーケティング担当者は少なくありません。
オウンドメディアとは、企業が所有・管理・運営するメディアを指します。自由に情報発信でき、長期的な顧客関係構築に適しています。インバウンドマーケティングは、有益なコンテンツで顧客を引き寄せる手法であり、プッシュ型広告と対比されます。
2025年の調査によると、広告・マーケティング予算を増加予定の企業は32.3%(前年42.0%から減少)であり、オウンドメディア充実・強化が注力施策の上位に位置づけられています。一方で、予算維持を選択する企業は59.8%に達しており、低リソース運用が主流となっています。
この記事では、限られたリソースで始められ、採用やマーケティングに実際に貢献するオウンドメディアの運営方法を解説します。
この記事で分かること
- スタートアップがオウンドメディアを運営する目的とメリット
- 少人数でも成果を出した成功事例
- 限られたリソースでの始め方・運営方法
- 採用・マーケティング両面での活用戦略
オウンドメディアの目的と活用方法
オウンドメディアは、採用・リード獲得・ブランディングなど複数の目的に活用でき、スタートアップでは特に採用とリード獲得を同時に狙える点がメリットです。
リードジェネレーションとは、見込み顧客の情報を獲得するマーケティング活動を指します。広告・SEO・展示会などで実施されます。CVR(コンバージョン率) は、サイト訪問者のうち、問い合わせや資料請求などの成果行動に至った割合です。
【比較表】オウンドメディアの目的別活用方法比較表
| 目的 | 主なコンテンツ | KPI例 | スタートアップ向け適性 |
|---|---|---|---|
| リード獲得 | ホワイトペーパー、事例紹介、比較記事 | 問い合わせ数、資料DL数、CVR | 高(商談につながりやすい) |
| 採用 | 社員インタビュー、カルチャー紹介、働き方記事 | 応募数、採用単価削減 | 高(採用コスト削減に効果的) |
| ブランディング | 経営者メッセージ、ビジョン発信、業界分析 | 認知度、メディア露出 | 中(長期的な効果) |
| SEO/集客 | ノウハウ記事、用語解説、トレンド分析 | PV、検索順位、流入キーワード数 | 中(リソースが必要) |
| 顧客育成 | 活用事例、FAQ、導入ガイド | 既存顧客のLTV、アップセル率 | 中(既存顧客がいる場合に有効) |
スタートアップにとっては、リード獲得と採用の両方を狙える設計が効果的です。限られたリソースで複数の成果を出せるためです。
採用とマーケティングを両立するメディア設計
スタートアップの強みは、カルチャー発信と専門性発信を両立できる点にあります。
例えば、技術ブログを運営する場合、エンジニアの採用候補者と技術的な課題を持つ見込み顧客の両方にアプローチできます。社員が執筆することで、専門性とカルチャーの両方を伝えられるためです。
ポイントは、ターゲットを明確にしたうえで、両方のニーズに応えられるコンテンツを設計することです。
スタートアップのオウンドメディア成功事例
限られたリソースでも成果を出しているスタートアップの事例を紹介します。各事例は企業の自社発表に基づくものであり、第三者検証はされていない点にご留意ください。
ある企業では、広告費ゼロで毎月200件超の新規リード獲得を実現しています。SEOを軸にした専門性の高いコンテンツ発信が成功要因とされています。
イルグルム(アドエビス)の事例では、半年で問い合わせ数が10倍に増加したと発表されています。ターゲットを絞った専門性の高いコンテンツが効果を発揮したケースです。
グッドパッチ(UI/UXデザイン)は、実践ノウハウの発信により年間新規取引先100社超を獲得したと発表しています。デザインに関する専門性の高い情報発信が、リード獲得と採用の両面で成果を上げています。
BtoBオウンドメディアの成功事例として、過去3年間で資料DL数34倍、受注額9倍を達成したケースも報告されています(PV1.2倍、セッション1.3倍)。PVの増加は緩やかでも、コンバージョンに直結するコンテンツを重視した結果です。
レバレジーズの事例では、CRM・オウンドメディア運用でCVR150%向上、売上年3,000万円増、返信率200%UPを達成したと発表されています。
大企業の事例として、ZOZO NEXTの「fashion tech news」は直近1年でPV300%増、UU130%増を達成しています(自社発表)。読者目線の設計と対面取材を重視した点が成功要因とされていますが、大規模なリソースを投入した事例のため、スタートアップへの直接適用は難しい場合があります。
成功事例に共通するポイント
成功事例に共通するのは、以下の3点です。
- ニッチな専門性:自社の強みを活かした専門性の高いコンテンツ
- 読者目線の設計:自社の宣伝ではなく、読者の課題解決を優先
- 一貫したメッセージ:記事ごとにブレないメディアの方向性
特に「読者目線の設計」は重要です。自社情報ばかり発信していると、読者のニーズと乖離してPVが伸び悩む傾向があります。
少人数で成果を出すための運営戦略
少人数のスタートアップでも成果を出すためには、量より質・一貫性を重視した運営戦略が重要です。
よくある失敗パターンとして、大企業のように記事を量産しようとして、少人数では継続できずに挫折するケースがあります。また、戦略なく思いつきで記事を書いて、方向性がバラバラになり誰にも刺さらないメディアになってしまうパターンも多く見られます。
これらの失敗パターンを避けるためには、以下の考え方が重要です。
- 月に数本でも、戦略に沿った記事を継続することに価値がある
- PV数より、商談・採用への貢献度を重視する
- 自社の強みとターゲットを明確にし、全記事で一貫させる
2025年時点で予算維持を選択する企業は59.8%に達しており、低リソース運用は珍しいことではありません。少人数でも継続できる仕組みを最初から設計することが成功の鍵です。
記事の一貫性を保つための仕組み
戦略を全記事に反映させるためには、以下の3点を明文化して共有する仕組みが有効です。
1. ターゲットの明確化: 誰に向けて書くのかを具体的に定義し、全員で共有します。
2. 差別化ポイントの明確化: 自社だからこそ伝えられる価値を明確にし、記事ごとにブレないようにします。
3. トーン&マナーの統一: 文体、表現、デザインのルールを決め、一貫したブランドイメージを維持します。
これらを「編集ガイドライン」として文書化しておくと、担当者が変わっても一貫性を保てます。
スタートアップがオウンドメディアを始める手順
オウンドメディアを始める際は、最初から完璧を目指さず、小さく始めて改善していく姿勢が重要です。
ノーコードCMSとは、プログラミング不要でWebサイト・メディアを構築できるコンテンツ管理システムを指します。初期投資を抑えて始めたい場合に有効な選択肢です。
【チェックリスト】スタートアップ向けオウンドメディア運営開始チェックリスト
- オウンドメディアの目的を明確にした(リード獲得/採用/ブランディング等)
- ターゲット読者を具体的に定義した(業種、職種、課題等)
- 自社の強み・差別化ポイントを整理した
- 競合メディアを調査した
- コンテンツの方向性・テーマを決定した
- トーン&マナー(文体、表現ルール)を決定した
- 運営体制を決定した(担当者、役割分担)
- 更新頻度の目標を設定した(無理のない範囲で)
- CMSを選定した(無料/有料、機能要件)
- KPIを設定した(問い合わせ数、PV等)
- 最初に公開する記事を企画した
- 社内での承認フローを決定した
- SNS連携の方針を決定した
- 効果測定の方法を決定した(GA等のツール設定)
低コストで始めるためのツール選定
初期投資を抑えてオウンドメディアを始める場合、無料または低コストで利用できるCMSを活用する方法があります。
ツール選定の基準としては、以下の点を検討してください。
- 初期費用・月額費用: 予算に見合うか
- 操作性: 専門知識なしで更新できるか
- デザインの自由度: ブランドイメージに合わせられるか
- SEO対応: 検索エンジン最適化の機能があるか
- 拡張性: 将来的な機能追加に対応できるか
最初は無料ツールでテスト的に始め、成果が見えてきたら本格的なCMSに移行するアプローチも有効です。
まとめ:戦略を軸にした運営でスタートアップの資産を築く
本記事で解説したポイントを整理します。
- 目的の明確化: 採用・リード獲得・ブランディングなど、目的に応じたコンテンツ設計が重要
- 成功事例の共通点: ニッチな専門性、読者目線の設計、一貫したメッセージ
- 少人数での運営: 量より質・一貫性を重視し、月数本でも戦略に沿った記事を継続
- 始め方: 小さく始めて改善する姿勢で、チェックリストを活用して準備
スタートアップのオウンドメディアは、記事数を追うのではなく、自社の強み・ターゲット・差別化ポイントを明確にした戦略を全記事に一貫して反映させることで、少人数でも採用・商談獲得に貢献する資産になります。
最初のステップとして、まず目的とターゲットを明確にすることから始めてみてください。限られたリソースでも、戦略を軸にした運営を継続することで、スタートアップにとって価値ある資産を築くことができます。
