BtoBマーケティングツールを導入しても成果が出ない理由
実はBtoBマーケティングツールで成果を出すには、ツール選定だけでなく、自社の戦略(ターゲット・USP・競合)をツール運用に反映させる設計が不可欠です。
「MAツールを導入したが、リード獲得数が思うように増えない」「CRMを入れたのに商談化率が上がらない」——こうした悩みを抱えるBtoB企業のマーケティング担当者は少なくありません。
BtoBマーケティング支援市場全体は2026年度に210億円規模へ成長すると予測されています。また、BtoB向けMAツール市場は2027年度に220億円(2022-2027年CAGR 12.0%)に達する見込みです。市場が拡大し、導入企業が増加している一方で、「ツールを入れたが使いこなせていない」という声も多く聞かれます。
よくある誤解として、MAツールやCRMを導入すれば自動的に成果が出ると期待してしまうケースがあります。 しかし、戦略設計や運用設計を後回しにしたままツールを導入しても、成果にはつながりません。ツールはあくまで「手段」であり、「誰に・何を・どう届けるか」という戦略が明確でなければ、機能を活かしきれないのです。
この記事で分かること
- BtoBマーケティングツール(MA/SFA/CRM)の種類と役割
- ツール選定の前にやるべき戦略設計のポイント
- 主要MAツールの比較と企業規模別の選び方
- 導入後に成果を出すための運用設計の考え方
BtoBマーケティングツールの種類と役割
BtoBマーケティングツールは、主にMA(マーケティングオートメーション)、SFA(セールスフォースオートメーション)、CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)の3種類に分類されます。それぞれ役割が異なり、マーケティングから営業、顧客管理までのプロセスをカバーしています。
これらのツールは単独で使うこともありますが、多くの企業ではMA→SFA→CRMと連携させて活用するのが一般的です。自社のマーケティング・営業プロセスのどこに課題があるかを把握し、適切なツールを選ぶことが重要です。
MA(マーケティングオートメーション)
MA(Marketing Automation) とは、見込み客の情報管理・育成を自動化し、商談創出を効率化するツール・仕組みです。
MAの主な機能は、リード(見込み客)の獲得・管理、メール配信の自動化、Webサイト訪問者の行動追跡などです。スコアリングと呼ばれる機能では、見込み客の行動や属性に点数を付け、商談化確度の高いリードを優先してアプローチできます。
MAツールを活用することで、マーケティング担当者は手作業で行っていたリードの選別や育成を効率化し、営業部門に「温まったリード」を渡せるようになります。
SFA・CRM
SFA(Sales Force Automation) とは、営業活動の可視化・効率化を支援するツールです。商談管理や活動記録が主な機能で、営業担当者の行動を見える化し、マネジメントに活かします。
CRM(Customer Relationship Management) とは、顧客データを一元管理し、関係構築・LTV(顧客生涯価値)最大化を図るツール・戦略です。顧客の購買履歴、問い合わせ履歴、契約情報などを統合管理し、適切なタイミングでのフォローアップを可能にします。
SFAは主に「商談中」のプロセス、CRMは「顧客化後」のプロセスで活用されることが多いですが、両方の機能を備えた統合型ツールも存在します。
ツール選定の前にやるべき戦略設計
ツール選定で最も重要なのは、導入前に「自社の戦略」を明確にすることです。ターゲット顧客は誰か、どのような価値を提供するのか、競合とどう差別化するのか——これらが曖昧なままツールを導入しても、設定や運用の軸が定まりません。
ABM(Account Based Marketing) という手法では、ターゲット企業を絞り込み、企業単位でアプローチします。このようなBtoB特有の戦略をツールに反映させるには、事前の戦略設計が欠かせません。
以下のチェックリストで、ツール選定前の準備状況を確認してください。
【チェックリスト】BtoBマーケティングツール選定チェックリスト
- ターゲット顧客(業種・企業規模・役職)が明確になっている
- 自社のUSP(独自の強み)が言語化されている
- 競合との差別化ポイントが整理されている
- マーケティングの目標KPI(リード数・商談化率など)が設定されている
- 営業部門との連携フロー(リードの引き渡し基準)が決まっている
- 既存のSFA/CRMとの連携要件が確認されている
- 導入後の運用担当者がアサインされている
- 月額予算・初期費用の上限が設定されている
- 無料トライアル期間中の検証項目が決まっている
- 導入後の効果検証の頻度・方法が決まっている
ターゲットとKPIの明確化
ツール導入前に、ターゲット顧客と成果指標(KPI)を明確にしておくことが重要です。「誰に」「何を」届けるのかが曖昧なままでは、ツールの設定(スコアリング条件、メール配信シナリオなど)を最適化できません。
(例)ターゲットとKPIの設定例
- ターゲット: 従業員100-500名の製造業、経営企画部門の課長クラス
- KPI: 月間リード獲得数、リードから商談への転換率、商談から受注への転換率 ※ 具体的な数値目標は、自社の過去実績や業界平均を参考に設定してください
既存システムとの連携確認
現在、MA/SFA/CRMの統合運用が業界標準となっており、既存システムとの連携可否は重要な選定ポイントです。
すでにSFAやCRMを導入している場合、新たに導入するMAツールとデータ連携できるかを事前に確認してください。連携がスムーズでないと、二重入力や情報の分断が発生し、運用負荷が増大します。
主要MAツールの比較と選び方
国内のMAツール市場では、BowNow、HubSpot、Pardot(現Marketing Cloud Account Engagement)、Marketo、List Finderなどが高いシェアを占めています。企業規模や目的によって最適なツールは異なるため、以下の比較表を参考に選定してください。
【比較表】主要MAツール比較(2026年国内シェア)
| ツール名 | 国内シェア | 導入社数 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| BowNow | 23.0% | 14,000社 | 国産、無料プランあり、中小企業に人気 |
| HubSpot | 20.3% | 258,000社以上(グローバル) | 無料プランあり、CRM連携が強み |
| Pardot | 13.4% | - | Salesforce連携、大企業向け |
| Marketo | 7.5% | 5,000社以上 | 高度機能、大企業向け |
| List Finder | 5.0% | - | 国産、BtoB特化 |
※シェア・導入社数は調査会社の自社調査に基づくデータであり、公的統計ではありません。選定時は各ベンダーに最新情報を確認してください。
中小企業向け:低コストでスモールスタート
中小企業がMAツールを導入する場合、まずは無料プランや低価格プランからスモールスタートし、効果検証後に有料化・機能拡張するアプローチが一般的です。
BowNowは14,000社に導入されており、国内シェア1位を獲得しています。また、Kairos3 Marketingは2,000アカウント以上の導入実績があり、継続率99%と報告されています(ベンダー発表値)。これらのツールは、専任担当者がいない中小企業でも比較的導入しやすいとされています。
大企業向け:高度機能と拡張性重視
大企業では、高度なスコアリング機能、複雑なシナリオ設計、大規模なデータ処理能力が求められます。
Adobe Marketo Engageは5,000社以上に導入されており、大企業向けの高度機能でシェア7.5%を占めています。ただし、高機能ツールは操作が複雑になる傾向があり、中小企業が導入すると「機能を使いこなせない」という状況に陥るリスクもあります。自社のリソースと照らし合わせて選定してください。
ツール導入後に成果を出すための運用設計
ツール導入後に成果を出すためには、導入時の設定だけでなく、継続的な運用設計が重要です。戦略をツールの設定に落とし込み、効果を検証しながら改善を続けることで、初めて成果につながります。
ある物流会社では、MAツール導入後に受注件数が前年比264%増加したという事例が報告されています(ベンダーの自社発表であり、第三者検証はされていません)。この事例では、デジタルとアナログのマーケティング活動を統合管理し、リードナーチャリングを体系化したことが成功要因とされています。
戦略とツール運用の連動
ツールの設定は、自社の戦略を反映したものにする必要があります。たとえば、スコアリングの条件設定では、「どのような行動をしたリードを優先するか」を戦略に基づいて決定します。
(例)スコアリング設定の考え方
- 資料ダウンロード: +10点
- 価格ページ閲覧: +15点
- セミナー参加: +20点
- 一定スコア(例: 50点)に達したら営業に引き渡し ※ 点数や閾値は自社の商談化実績を分析して設定してください
効果検証と改善サイクル
ツール導入後は、設定したKPIに基づいて効果を検証し、継続的に改善することが重要です。
PDCAサイクルを回すにあたっては、月次や四半期ごとに以下の項目を確認します。
- 目標KPIの達成状況(リード数、商談化率など)
- スコアリング条件の妥当性(高スコアリードが実際に商談化しているか)
- メール配信の効果(開封率、クリック率、配信停止率)
- 営業部門からのフィードバック(リードの質、引き渡しタイミング)
検証結果を踏まえて設定を見直し、改善を続けることで、ツールの効果を最大化できます。
まとめ|ツール選びより戦略設計が成果を分ける
BtoBマーケティングツールは、MA/SFA/CRMなど複数の種類があり、それぞれ役割が異なります。自社の課題やプロセスに合ったツールを選ぶことが重要ですが、それ以上に大切なのは「ツール選定の前の戦略設計」です。
本記事で紹介したチェックリストを活用し、以下のステップで導入を進めてください。
- 自社の戦略(ターゲット・USP・KPI)を明確化する
- 既存システムとの連携要件を確認する
- 企業規模・目的に合ったツールを比較検討する
- 無料トライアルで運用イメージを検証する
- 導入後も効果検証と改善を継続する
BtoBマーケティングツールで成果を出すには、ツール選定だけでなく、自社の戦略をツール運用に反映させる設計が不可欠です。 ツールは「入れて終わり」ではなく、戦略と連動させて運用することで、初めてリード獲得・商談化という成果につながります。
