コンテンツ承認が「差し戻しの繰り返し」になる企業が見落としていること
最も重要なのは、コンテンツ承認をスムーズに通すには、役割分担の明確化と承認基準の言語化が不可欠であり、特にAI活用時代は「戦略の事前共有」と「ファクトチェック体制」が成否を分けるということです。
「コンテンツを作ったのに承認でストップしてしまう」「上司や他部署との調整に時間がかかり、公開が遅れる」——BtoB企業のマーケティング担当者から、このような声を聞くことは少なくありません。
2025年の調査によると、BtoBマーケティングで生成AI活用率は63.6%に達し、コンテンツ作成での活用も27.1%と増加しています(SyncAD 2025年調査)。AI活用が進む一方で、BtoB企業のリード獲得課題として「コンテンツの質が低い」が28.8%(2024年比+11.7pt)、「施策がターゲットに刺さっていない」が38.5%という調査結果もあります(同調査、n=107)。これは、コンテンツの量産が進んでも品質管理の仕組みが追いついていないことを示唆しています。
この記事で分かること
- コンテンツ承認における役割(制作者・レビュアー・承認者)の定義
- 承認が滞る原因と「感覚頼み」の落とし穴
- AI原稿を承認可能にするための事前準備
- 役割別・承認フロー設計表とチェックリスト
コンテンツ承認における役割の定義と承認フローの基本
コンテンツ承認を円滑に進めるには、まず「誰が何を担当するか」を明確に定義することが重要です。
承認フローとは、コンテンツ公開前に担当者→上長→法務など複数階層で確認・承認を行うプロセスを指します。企業規模やコンテンツの重要度によって、承認フローの複雑さは大きく異なります。大企業では法務や事業部を含む多段階の承認が必要な場合が多く、数週間から数ヶ月かかることもあります。一方、中小企業では制作→責任者承認の2段階で即日対応可能なケースも一般的です。
承認者が確認すべき品質基準としては、E-E-A-T(Experience:経験、Expertise:専門性、Authoritativeness:権威性、Trustworthiness:信頼性)の観点が参考になります。これはGoogleの品質評価基準として知られていますが、コンテンツ承認においても「この記事は信頼に値するか」を判断する際の指針となります。
制作者・レビュアー・承認者それぞれの責任範囲
承認フローにおける各役割の責任範囲を明確にすることで、誰も責任を持たない状態を防ぐことができます。
制作者は、原稿の作成と事実確認の一次チェックを担当します。AIを活用する場合も、生成された内容の初期確認は制作者の責任です。
レビュアーは、品質チェック、表記統一、ファクトチェックを担当します。制作者とは別の視点で内容を確認し、誤りや不整合を指摘する役割を担います。
承認者は、戦略との整合性、ブランドトーン、公開判断を担当します。最終的に「この記事を公開してよいか」を判断する責任を持ちます。
役割が曖昧なままだと、「誰かがチェックしているだろう」という状態になり、結果として品質問題が見落とされるリスクが高まります。
承認が滞る原因と「感覚頼み」の落とし穴
承認が滞る最大の原因は、承認基準が曖昧なまま運用されていることです。
承認フローを形式的に設けるだけで、何をチェックすべきかが曖昧なまま運用し、承認者の感覚頼みで通す・差し戻すを繰り返してしまう——この考え方では成果が出ません。
2024年の調査によると、BtoBマーケティング課題として「発信コンテンツ・ネタがない」が42.1%でトップ、「スキル・人材不足」が33.8%で次点となっています(リンクアンドパートナーズ調査、n=1,002)。また、BtoB企業のリード質の理想未達は48.6%(2024年比+7.6pt)に悪化しています(SyncAD 2025年調査)。
承認基準が曖昧な状態で運用すると、以下の問題が起きます。
- 差し戻しの繰り返し: 承認者の「なんとなく違う」という感覚で差し戻され、修正しても再び差し戻されるループに陥る
- 担当者の疲弊: 明確な基準がないため、何を修正すればよいか分からず、担当者のモチベーションが低下する
- 公開スピードの低下: 承認に時間がかかり、タイムリーなコンテンツ発信ができなくなる
AI原稿が承認を通らない理由と対策
AI活用時代において、AI原稿が承認を通りにくい理由は主に3つあります。
- ブランドトーンとの不一致: AIが生成した文章は、自社らしい文体や雰囲気が反映されていないことが多い
- 事実誤認リスク: AIが生成した数値や事実関係に誤りが含まれている可能性がある
- 戦略との整合性が不明確: AIはターゲットやUSPを理解していないため、戦略に沿ったコンテンツになっていないことがある
参考事例として、ある製造業企業では生成AI活用でコンテンツ作成時間が22時間から6.4時間に短縮(約71%削減)し、年間コンテンツ本数が4本から11本に増加した事例があります(2022-2023年度)。ただし、これは単一企業の事例であり、業界平均として一般化する際は注意が必要です。
対策としては、事前に戦略情報(ターゲット/USP)を共有すること、ファクトチェック体制を整備すること、承認基準を明文化することが有効です。
役割別・承認フローの設計方法
承認フローを設計する際は、各役割の担当タスクと承認基準を明確にすることが重要です。
コンテンツの規模や重要度に応じて承認レイヤーを分岐させる考え方も有効です。簡易なコンテンツは担当者裁量で公開可能とし、重要なコンテンツは多層承認を経るというルールを設けることで、効率性と品質のバランスを取ることができます。
【比較表】役割別・承認フロー設計表
| 役割 | 担当タスク | 承認基準 | 判断ポイント |
|---|---|---|---|
| 制作者 | 原稿作成、一次ファクトチェック | 構成案どおりに執筆されているか | 依頼内容との整合性 |
| レビュアー | 品質チェック、表記統一、ファクトチェック | 誤字脱字・事実誤認がないか | 正確性・読みやすさ |
| 承認者(マーケ責任者) | 戦略整合性確認、ブランドトーン確認 | ターゲット/USPと整合しているか | 戦略との一致 |
| 法務(必要に応じて) | 法的リスク確認 | 景表法・薬機法等の違反がないか | コンプライアンス |
| 事業部責任者(必要に応じて) | 最終公開判断 | 事業方針との整合性 | 経営判断 |
企業規模別の承認フロー設計例
企業規模によって、適切な承認フローは異なります。以下は参考例です。
大企業の場合 制作 → レビュー → 法務確認 → 事業部承認 → 公開 (所要期間:数週間〜数ヶ月)
中小企業の場合 制作 → 責任者承認 → 公開 (所要期間:即日〜数日)
重要なのは、承認段階の数ではなく、各段階で何をチェックするかの基準を明確にすることです。
承認者が見るべきチェックポイントとチェックリスト
承認者は、限られた時間の中で効率的に品質を判断する必要があります。チェックリストを標準化することで、属人化を防ぎ、一貫した品質基準を維持できます。
参考事例として、ある大手メーカーではコンテンツ施策の改善により、メール開封率が18.4%から30.2%に、クリック率が1.7%から15.2%に向上した事例があります(2023年)。ただし、これも単一企業の事例であり、一般化には注意が必要です。この事例では、コンテンツの品質管理を徹底したことが成果につながったとされています。
【チェックリスト】コンテンツ承認チェックリスト(承認者向け)
- ターゲットペルソナの課題に応える内容になっているか
- 自社のUSP(独自の強み)が記事に反映されているか
- 競合との差別化ポイントが明確になっているか
- 他の公開済み記事と主張が矛盾していないか
- ブランドトーン(文体・雰囲気)が自社らしいか
- 誤字脱字・表記ゆれがないか
- 事実関係・数値データの根拠が明示されているか
- 引用元が正確に記載されているか
- 景表法・薬機法等の法的リスク表現がないか
- 「必ず」「確実に」等の過度な断定表現がないか
- E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)の観点で信頼できるか
- 著作権侵害のリスクがないか
- 古い情報や陳腐化した内容がないか
- タイトル・メタディスクリプションが適切か
- AI生成の場合、ファクトチェックが完了しているか
ファクトチェックと法的リスク確認の実務
承認者が特に注意すべきポイントとして、ファクトチェックと法的リスク確認があります。
ファクトチェックのポイント
- 数値の出典が明示されているか確認する
- 引用元が信頼できる情報源かどうか確認する
- 情報が最新かどうか(古いデータでないか)確認する
- AI生成の場合、特に事実関係を重点的に確認する
法的リスク確認のポイント
- 景表法に抵触する優良誤認・有利誤認表現がないか
- 薬機法に抵触する効能表現がないか
- 著作権侵害(無断引用・転載)がないか
- 競合他社を不当に貶める表現がないか
「この項目がNGなら差し戻し」という基準を明確にしておくことで、承認者の判断が属人化することを防げます。
まとめ:承認をボトルネックから戦略実行の要に変える
本記事では、コンテンツの社内承認をスムーズに通すための役割分担と承認基準の設計方法について解説しました。
要点の整理
- 承認フローにおける役割(制作者・レビュアー・承認者)の責任範囲を明確にする
- 承認基準を言語化し、「感覚頼み」の運用を脱却する
- AI原稿の承認には、事前の戦略共有とファクトチェック体制が不可欠
- チェックリストを標準化し、属人化を防ぐ
- 企業規模に応じた承認フローを設計する
次のアクション
- 本記事のチェックリストをチームで共有し、承認基準を言語化する
- 役割別・承認フロー設計表を参考に、自社の承認フローを整備する
- 承認プロセスの課題を特定し、改善策を検討する
承認プロセスは、ボトルネックではなく、品質と戦略を担保する仕組みとして機能させることが重要です。コンテンツ承認をスムーズに通すには、役割分担の明確化と承認基準の言語化が不可欠であり、特にAI活用時代は「戦略の事前共有」と「ファクトチェック体制」が成否を分けるのです。
