経営層の説得がうまくいかない本当の理由
結論から言えば、経営層を説得するには、PV・アクセス数ではなくCVR・商談化率・受注への貢献を経営の言葉で示し、同時にリスク対策も先回りで提示することが重要です——本記事ではこの結論を詳しく解説します。
コンテンツマーケティングの必要性は理解しているものの、経営層や上長を説得できず予算が取れないという悩みを抱えるマーケティング担当者は多いのではないでしょうか。
2024年のContent Marketing Academy調査によると、55%の企業がコンテンツマーケティングで成果を実感している一方、残り45%は成果が出ていないと感じています。約半数の企業が成果に不満を持っているという現実があります。
この記事で分かること
- 経営層説得がうまくいかない本当の理由と構造的な課題
- CVR・商談化率で成果を語る経営視点でのアプローチ
- 経営者が気にする「リスク」への先回り説明の方法
- 稟議を通すための説得資料の作り方とテンプレート
「PVが増えます」では経営層に響かない
よくある失敗パターンとして、「PVが増えます」「認知が上がります」といったマーケティング指標だけで説得しようとするアプローチがあります。これでは経営層の心に響きません。
経営層が知りたいのは、売上・商談への貢献です。マーケティング担当者がPVやアクセス数の増加を熱心に説明しても、経営者の頭には「それで売上はいくら増えるのか」「投資に見合うリターンはあるのか」という疑問が浮かんでいます。
CVR(コンバージョン率) とは、サイト訪問者のうち問い合わせや資料請求などの成果行動に至った割合を指します。商談化率は、獲得したリード(見込み客)が営業商談に至った割合であり、経営層が重視する指標です。
これらの指標で成果を語ることで、初めて経営層との共通言語が生まれます。
経営層説得が難しい構造的理由
コンテンツマーケティングの経営説得が難しいのは、成果が見えるまでに時間がかかり、即時のROIが見えにくいという構造的な理由があります。
2025年の調査によると、中小企業の58.5%が年間マーケティング予算100万円未満で運用しています。一方で、同調査ではSEO・コンテンツマーケティングの費用対効果満足度が1位という結果も出ています。限られた予算でも効果を実感している企業が多いという事実は、説得材料として活用できます。
また、コンテンツ1本の適正予算は5〜30万円が6割超という調査結果があり、予算設定・専門知識不足が課題の4割以上を占めています。予算相場を把握せずに説得に臨むと、経営層から「高すぎる」「費用対効果が不明」と判断されやすくなります。
ROI(投資対効果) とは、(収益 - 費用)÷ 費用 × 100で算出される指標で、コンテンツマーケティングでは中長期で回収される傾向があります。
成果が見えるまでに時間がかかる
コンテンツマーケティングは短期施策ではなく、中長期の資産構築型施策です。検索エンジンでの評価が上がるまでに一定の期間が必要であり、すぐに成果が出るものではありません。
リードナーチャリングとは、見込み客を育成し、購買意欲を高めていくマーケティング活動を指します。コンテンツマーケティングでは、記事公開から検索流入、リード獲得、ナーチャリング、商談化という一連のプロセスに時間がかかります。
この中長期的な性質と、短期売上を求める経営層の期待にギャップが生じることが、説得を難しくしている一因です。説得の際には、この時間軸を事前に説明し、期待値を適切に設定することが重要です。
「SEO施策」と矮小化されがちな誤解
コンテンツマーケティング=SEO施策という認識は、大きな誤解です。SEOは検索エンジン最適化に過ぎず、コンテンツマーケティングはリード獲得から育成、商談化まで含む包括的な中長期戦略です。
この矮小化された認識を持ったまま経営層と会話すると、「SEOなら安く外注できるのでは」「検索順位が上がれば売上が増えるのか」といった的外れな議論に発展しがちです。
説得に臨む前に、コンテンツマーケティングの本質的な役割——見込み客との信頼関係構築、ナーチャリング、商談化支援——を経営層に理解してもらう土台を整える必要があります。
費用対効果を経営視点で示す方法
費用対効果を経営視点で示すには、マーケティング指標をビジネス指標に変換して提示することが重要です。
前述の調査で、中小企業でもSEO・コンテンツマーケティングの費用対効果満足度が1位という結果が出ていることは、経営層への説得材料になります。また、2024年12月の調査(n=311)では、2025年度BtoB Web広告予算を増額予定の企業が約6割に上り、注力施策としてWeb広告運用強化が26.2%を占めています。市場全体がデジタル投資を拡大している傾向を示すことで、経営層の理解を得やすくなります。
CVR・商談化率で成果を語る
経営層に刺さる説得をするには、PVではなくCVR・商談化率で成果を語ることが不可欠です。
具体的には、Excelで「費用÷問い合わせ数」を算出し、問い合わせ1件あたりのコストを可視化します。例えば、月額30万円のコンテンツ施策で10件の問い合わせが獲得できれば、問い合わせ単価は3万円となります。この数字を、他施策(Web広告、展示会など)の問い合わせ単価と比較することで、経営視点での費用対効果が明確になります。
(例)月額30万円のコンテンツ施策で運用した場合
- 想定問い合わせ数: 10件/月
- 問い合わせ単価: 30,000円/件
- 商談化率30%の場合: 商談単価100,000円/件 ※実際の成果は業種・単価・運用体制により大きく変動します
Web広告との比較で持続効果を示す
コンテンツ施策と広告施策の構造的な違いを示すことも有効です。
Web広告は出稿を停止すると流入がゼロになりますが、コンテンツは一度作成すれば、追加費用なしで継続的に効果を発揮します。時間が経つほど記事が蓄積され、複利的に流入が増える可能性があります。
ただし、具体的なROI数値を断定的に提示することは避けるべきです。「広告は短期集中、コンテンツは中長期資産」という構造的なメリットとして説明することで、経営層の理解を得やすくなります。
経営層説得前に準備すべきこと
経営層説得の前に、適切な準備を行うことで成功確率が大きく変わります。
2025年の調査(n=107)によると、BtoB企業経営者のリード獲得施策実施率はSNS 36.4%、広告 29.0%、展示会 27.1%となっており、広告は前年比-10ポイント減少しています。経営者が現在何に投資し、何を重視しているかを把握した上で説得資料を作成することが重要です。
また、同調査ではBtoB経営者の生成AI活用率が63.6%に上り、そのうちコンテンツ作成での活用が27.1%で最多となっています。経営者自身がAI活用のトレンドを認識していることを踏まえ、生成AIを活用した効率的なコンテンツ運用の可能性も説得材料に含められます。
【チェックリスト】経営層説得前の準備チェックリスト
- 自社の現状の問い合わせ数・商談数を把握している
- 現在の問い合わせ単価・商談単価を算出している
- 競合他社のコンテンツ施策状況を調査している
- 業界相場(コンテンツ1本5〜30万円が6割超)を把握している
- 目標とするCVR・商談化率の目安を設定している
- 成果が出るまでの期間を説明できる準備がある
- 失敗した場合の撤退基準・軌道修正基準を設定している
- 品質管理体制(ファクトチェック、承認フロー)を説明できる
- 生成AI活用時のリスク対策を説明できる
- 3ヶ月・6ヶ月・12ヶ月時点の中間KPIを設定している
- ROIシミュレーションをExcelで作成している
- 経営層が重視する指標(売上、商談数)に紐づけた説明ができる
- 他施策(広告、展示会)との費用対効果比較ができる
- 想定質問への回答を準備している
経営者が気にする「リスク」への先回り説明
経営層はメリットだけでなく、リスクも重視します。特に品質リスク、ブランド毀損リスクへの対策を事前に準備しておくことが重要です。
生成AIを活用する場合は、ファクトチェック体制や承認フローを説明できるようにしておきます。「AI原稿をそのまま公開することはなく、人間によるチェック・承認を経て公開する」という品質担保の仕組みを示すことで、経営層の不安を軽減できます。
また、撤退・軌道修正基準を事前に設定しておくことも有効です。「6ヶ月経過しても問い合わせ数に変化がない場合は施策を見直す」といった基準を示すことで、「失敗しても取り返しがつかない投資」という懸念を払拭できます。
稟議を通す説得資料の作り方
具体的な稟議資料を作成する際は、経営層が意思決定に必要な情報を過不足なく盛り込むことが重要です。
前述のとおり、コンテンツ1本の適正予算は5〜30万円が6割超という調査結果があります。この相場感を踏まえた予算計画を作成し、シミュレーションとともに提示します。
(例)月額25万円の予算で12ヶ月運用した場合
- 年間予算: 300万円
- 想定記事数: 10本/月 × 12ヶ月 = 120本
- 想定年間問い合わせ数: 120件(月10件想定)
- 問い合わせ単価: 25,000円/件 ※実際の成果は業種・競合状況・コンテンツ品質により大きく変動します
【テンプレート】稟議資料の構成テンプレート
件名: コンテンツマーケティング施策の予算承認申請
- 背景・課題 {{現状の課題を記載}}
- 現在の問い合わせ数: 月間{{数値}}件
- 現在の問い合わせ単価: {{数値}}円/件
- 競合他社のコンテンツ施策状況: {{調査結果}}
- 提案内容
- 施策概要: {{具体的な施策内容}}
- 目的: CVR・商談化率の向上による売上貢献
- 実施期間: {{開始日}}〜{{終了日}}({{期間}}ヶ月)
- 予算計画
- 初期費用: {{金額}}円
- 月額費用: {{金額}}円
- 年間総額: {{金額}}円
- 業界相場との比較: コンテンツ1本5〜30万円が相場(調査結果より)
- 期待効果
- 目標問い合わせ数: 月間{{数値}}件(現状比+{{数値}}件)
- 目標問い合わせ単価: {{数値}}円/件
- 目標商談化率: {{数値}}%
- 期待売上貢献: {{算出根拠とともに記載}}
- リスク対策
- 品質管理体制: {{ファクトチェック・承認フローの説明}}
- 撤退基準: {{具体的な基準}}
- 軌道修正基準: {{具体的な基準}}
- 中間評価指標
- 3ヶ月時点: {{KPI}}
- 6ヶ月時点: {{KPI}}
- 12ヶ月時点: {{KPI}}
差し込み変数:
- {{現状の課題}}: 自社の課題を具体的に記載
- {{数値}}: 実際の数値データを挿入
- {{調査結果}}: 競合調査の結果を記載
- {{具体的な施策内容}}: 提案する施策の詳細
- {{金額}}: 具体的な予算金額
- {{KPI}}: 各時点での評価指標
他社事例の効果的な引用方法
他社事例を説得材料として活用する際は、自社と類似した業界・規模の事例を選ぶことが重要です。
事例を引用する際は、「業界平均値との比較」で提示することで、より説得力が増します。ただし、成功事例だけでなく、「当初想定通りにいかなかったが、軌道修正して成果が出た」といったリアルな事例も含めると、経営層からの信頼を得やすくなります。
事例の出典は明確にし、可能であれば調査レポートや公開されているデータを参照することで、説得力を高められます。
まとめ:経営の言葉で語り、リスク対策も示す
本記事では、コンテンツマーケティングの経営説得を成功させるための方法を解説しました。
ポイントを整理すると:
- 「PVが増えます」ではなく、CVR・商談化率・受注貢献で成果を語る
- 経営層が知りたい「売上への貢献」「リスク対策」に先回りで答える
- 撤退・軌道修正基準を含めた現実的な提案をする
- 業界相場(コンテンツ1本5〜30万円が6割超)を把握した上で予算計画を立てる
- シミュレーションと中間KPIで進捗を可視化する体制を示す
経営層を説得するには、PV・アクセス数ではなくCVR・商談化率・受注への貢献を経営の言葉で示し、同時にリスク対策も先回りで提示することが重要です。
次のアクションとして、まず自社の現状数値(問い合わせ数、商談数、各施策のコスト)を把握し、本記事のチェックリストとテンプレートを活用して説得資料を作成してみてください。
