マーケティング施策の費用対効果を正しく測れていますか?
費用対効果シミュレーションとは何か。マーケティング施策の費用対効果シミュレーションは、PVや流入数ではなく商談化率・受注率を起点に逆算することで、投資判断の精度が上がり、成果につながる施策選定ができるようになります。
2025年度のBtoB Web広告で重視する指標を見ると、費用対効果(ROAS)が57.0%、CVRが41.0%、CTRが39.0%と、費用対効果への関心が最も高いことがわかります。一方で、BtoB Web広告運用の課題としては「費用対効果の向上」が47.2%、「質の高いリード獲得」が46.2%、「リード獲得単価低下」が30.5%と続いており、多くの企業がROI改善に苦慮している状況です。
この記事で分かること
- ROIとROASの違いと正しい計算式
- PVではなく商談・受注から逆算するシミュレーション設計の考え方
- 費用対効果シミュレーションの具体的な計算例
- シミュレーション実施前に確認すべきチェックリスト
費用対効果の基本|ROIとROASの違いと計算式
費用対効果を測る代表的な指標には、ROI(投資収益率)とROAS(広告費用対効果)があります。どちらも投資効率を測る指標ですが、計算方法と用途が異なります。
ROI(投資収益率) とは、マーケティング投資全体の効率を測る指標です。施策全体の収益性を把握したい場合に使用します。
ROAS(広告費用対効果) とは、売上÷広告費で算出される、広告投資に対する売上回収効率を示す指標です。広告キャンペーン単位の効率を評価する際に用います。
LTV(顧客生涯価値) は、顧客が取引期間全体でもたらす総利益を示す指標で、1回購入額×年間購入回数×継続年数で算出します。ROASが高くてもLTVが低い顧客ばかりでは、長期的な収益性は低下します。
ROI(投資収益率)の計算方法
ROIの計算式は以下の通りです。
ROI(%)=(利益 − 投資額)÷ 投資額 × 100
ROIはマーケティング施策全体の効率を測定するのに適しています。広告費だけでなく、人件費や制作費なども含めた総投資額に対する利益率を把握できます。
ROIがプラスであれば投資を回収できていることを意味し、マイナスであれば投資額を回収できていない状態です。
ROAS(広告費用対効果)の計算方法
ROASの計算式は以下の通りです。
ROAS(%)= 売上 ÷ 広告費 × 100
ROASは広告キャンペーン単位での効率評価に適しています。たとえばROASが300%であれば、広告費1円あたり3円の売上が得られていることを意味します。
ただし、ROASが高くても注意が必要です。初回購入のみでリピートがない場合、顧客獲得コストを回収できないケースもあります。ROASはLTVと併せて評価することが重要です。
PVではなく商談・受注から逆算するシミュレーション設計
費用対効果シミュレーションで成果を出すためには、商談化率・受注率を起点とした設計が必要です。PVやセッション数などの上ファネル指標だけで費用対効果を測ろうとするのは、よくある失敗パターンです。
よくある失敗パターン: 費用対効果をPVやセッション数などの上ファネル指標だけで測ろうとすること。結果として「PVは増えたが商談につながらない」という状態に陥り、正しい投資判断ができなくなります。
調査によると、BtoBマーケティング投資対効果で「受注金額」まで追跡している企業は30.2%のみです。多くの企業がPVやリード数の段階で測定を止めており、商談・受注との紐付けができていません。
また、Web広告予算増の理由として「新規リード獲得容易」が53.8%と最多である一方、「商談化率が高い」は13.8%にとどまっています。リード獲得の容易さだけでなく、商談化率も含めた評価が求められます。
商談化率とは、リードから商談に転換した割合で、リード数÷商談数で算出します。CVR(コンバージョン率) は、サイト訪問者のうち目標アクションを達成した割合で、CV数÷訪問数×100で算出します。
受注から逆算する費用対効果の考え方
効果的なシミュレーションは、受注から逆算して設計します。具体的には以下の流れで考えます。
- 目標受注金額の設定: まず期間内の目標受注金額を決定
- 受注率の把握: 商談から受注への転換率を確認
- 必要商談数の算出: 目標受注金額÷平均受注単価÷受注率
- 商談化率の把握: リードから商談への転換率を確認
- 必要リード数の算出: 必要商談数÷商談化率
- CVRの把握: 流入から問い合わせへの転換率を確認
- 必要流入数の算出: 必要リード数÷CVR
このように受注から逆算することで、「どの程度の流入が必要か」「その流入を得るためにいくら投資すべきか」が明確になります。
費用対効果シミュレーションの計算式と計算例
費用対効果シミュレーションでは、複数の計算式を組み合わせて投資判断を行います。以下に基本的な計算式と計算例を示します。
【計算式】費用対効果シミュレーションの基本式
計算式:
ROI(%)=(利益 − 投資額)÷ 投資額 × 100
ROAS(%)= 売上 ÷ 広告費 × 100
LTV = 1回購入額 × 年間購入回数 × 継続年数
必要流入数 = 目標受注件数 ÷ 受注率 ÷ 商談化率 ÷ CVR
投資上限額 = 目標受注金額 × 許容ROI ÷ 100
変数の説明:
- 利益: 施策による売上から原価を引いた金額
- 投資額: 広告費、人件費、制作費などの総コスト
- 売上: 施策から得られた売上金額
- 広告費: 広告出稿にかかった費用
- 受注率: 商談から受注への転換率(%)
- 商談化率: リードから商談への転換率(%)
- CVR: 流入からコンバージョンへの転換率(%)
(例)以下の条件でシミュレーションを行う場合:
- 目標受注件数: 10件/月
- 平均受注単価: 100万円
- 受注率: 30%
- 商談化率: 20%
- CVR: 2%
- CPC(クリック単価): 500円
必要流入数 = 10 ÷ 0.3 ÷ 0.2 ÷ 0.02 = 約8,333セッション
必要広告費 = 8,333 × 500円 = 約416万円
目標売上 = 10件 × 100万円 = 1,000万円
ROAS = 1,000万円 ÷ 416万円 × 100 = 約240%
※実際の成果は業種・単価・運用体制により大きく変動します。上記はあくまで計算例であり、各指標は自社の実績データに基づいて設定してください。
シミュレーション実施のためのチェックリスト
費用対効果シミュレーションを実施する前に、必要な情報が揃っているか確認することが重要です。2025年度はBtoB企業の約59.4%がWeb広告予算を増額予定(大幅増16.1%+やや増43.3%)とされており、投資判断の精度向上がますます求められています。
【チェックリスト】費用対効果シミュレーション実施チェックリスト
- 目標受注金額(または受注件数)が明確になっている
- 平均受注単価を把握している
- 自社の受注率(商談→受注)を計測している
- 自社の商談化率(リード→商談)を計測している
- 自社のCVR(流入→CV)を計測している
- 計測に必要なツール(MA、SFA、GA等)が導入されている
- 過去の広告データ(CPC、CTR等)が取得できる
- 評価期間を設定している(月次、四半期等)
- ROIとROASのどちらを主指標とするか決定している
- LTVを考慮した評価設計になっている
- 投資上限額(許容CPA等)を設定している
- シミュレーション結果の報告先・承認フローが明確になっている
- 施策間の比較基準を統一している
- 外部要因(季節変動、競合動向等)を考慮している
- 定期的な見直しスケジュールを設定している
まとめ|商談・受注起点の費用対効果シミュレーションで投資判断の精度を上げる
本記事では、BtoBマーケティングにおける費用対効果シミュレーションの方法を解説しました。要点を整理します。
- ROIとROASの違いを理解する: ROIは投資全体の効率、ROASは広告単体の効率を測定する指標
- PVではなく商談・受注から逆算する: 上ファネル指標だけでなく、受注金額まで追跡する設計が重要
- 計算式を活用する: ROI、ROAS、LTVの計算式を組み合わせてシミュレーションを実施
- チェックリストで準備を確認する: 必要なデータや評価基準が揃っているか事前に確認
マーケティング施策の費用対効果シミュレーションは、PVや流入数ではなく商談化率・受注率を起点に逆算することで、投資判断の精度が上がり、成果につながる施策選定ができるようになります。
まずは本記事のチェックリストを活用して、自社の計測体制を確認することから始めてみてください。
