SaaSのリード獲得で成果が出ない根本原因
ずばり、SaaSのリード獲得で成果を出すには、施策を増やすことより、ターゲット・提供価値・メッセージを明確にした戦略を全施策に一貫反映させることが重要です。
「施策を増やしているのに、商談につながるリードが増えない」という悩みを抱えるSaaS企業は少なくありません。海外データによると、B2B SaaS企業のリード獲得コスト(CPL)は、有料リード1件あたり平均310ドル、オーガニックリード1件あたり平均164ドルとされています(First Page Sage、2025年推定。日本市場とは相場感が異なる可能性があります)。
このデータが示すのは、コストの問題だけではありません。施策の選び方や投資配分以前に、「誰に・何を・なぜ伝えるか」という戦略が曖昧なまま施策を乱発すると、コストをかけても質の低いリードを量産してしまうという構造的な課題です。
この記事で分かること
- リード獲得で成果が出ない根本原因と解決の考え方
- SaaS企業の主要リード獲得施策と特徴の比較
- 戦略を全施策に一貫反映させる具体的な方法
- 自社の施策を診断できるチェックリスト
SaaSリード獲得の基本概念とファネル設計
リード獲得の成果を正しく評価するには、ファネルの各段階を理解し、適切な指標で測定することが重要です。
MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング活動を通じて一定の関心度に達したリードを指します。資料ダウンロードやウェビナー参加など、何らかのアクションを起こした見込み客がMQLとして分類されます。
SQL(Sales Qualified Lead) は、営業部門が実際に対応する見込み客です。MQLの中から、予算・決裁権・ニーズ・導入時期などの条件を満たし、商談に進む可能性が高いと判断されたリードがSQLとなります。
TOFU/MOFU/BOFUはマーケティングファネルの3段階を表します。TOFUはTop of Funnel(認知段階)、MOFUはMiddle of Funnel(検討段階)、BOFUはBottom of Funnel(購買段階)です。各段階で必要な施策やコンテンツは異なり、TOFUでは認知拡大、MOFUではリード育成、BOFUでは商談化・受注が主な目的となります。
リード数だけを追うのではなく、MQL→SQL転換率を把握することで、施策の質を評価できます。
施策を増やすだけでは成果が出ない理由
「施策を増やせばリードが増える」「リード数が増えれば商談も増える」という考え方は、よくある誤解です。この思考で戦略なき施策の乱発を続けると、質の低いリードを量産してしまいます。
具体的な失敗パターンとして、以下のようなケースがあります。
- ターゲットが曖昧なまま広告を出稿し、関心の薄いユーザーからのリードが増える
- 施策ごとにメッセージが異なり、一貫性のない印象を与えてしまう
- リード数をKPIにしているため、質より量を追ってしまう
これらの問題の根本原因は、施策を実行する前に「誰に・何を・なぜ」という戦略を明確にしていないことにあります。
SaaS企業の主要リード獲得施策と特徴
SaaS企業が活用できるリード獲得施策は多岐にわたります。各施策の特徴を理解し、自社の戦略に合った施策を選択することが重要です。
海外データによると、オーガニックリードは有料リードの約半分のCPLで獲得可能とされています。また、2024年の調査では、お役立ち資料(ホワイトペーパー等)の効果として「新規獲得リードの質の向上」63.6%、「新規獲得リードの増加」48.9%、「商談件数の向上」47.7%という結果が報告されています(BtoBマーケター回答ベース。自己申告データのため実績との乖離可能性があります)。
【比較表】SaaS企業向け主要リード獲得施策比較表
| 施策 | コスト | 即効性 | リード質 | 適したファネル段階 |
|---|---|---|---|---|
| コンテンツSEO | 低〜中 | 低い | 高い | TOFU〜MOFU |
| ホワイトペーパー | 低〜中 | 中程度 | 高い | MOFU |
| ウェビナー | 中 | 中程度 | 中〜高 | MOFU〜BOFU |
| リスティング広告 | 高 | 高い | 中程度 | MOFU〜BOFU |
| SNS広告 | 中〜高 | 高い | 低〜中 | TOFU |
| 展示会・イベント | 高 | 中程度 | 中〜高 | MOFU |
| メールマーケティング | 低 | 中程度 | 中〜高 | MOFU〜BOFU |
コンテンツSEOとお役立ち資料の活用
コンテンツSEOとお役立ち資料は、低コストで質の高いリードを獲得できる施策です。
前述の調査結果が示すように、ホワイトペーパー等のお役立ち資料は、リードの質向上に効果があるとされています。SEOは即効性は低いものの、長期的に見ると費用対効果が高い傾向があります。
ただし、資料ダウンロードだけで終わらず、次のアクションへの導線設計が重要です。ダウンロード後のフォローメール、関連コンテンツへの誘導、セミナー案内など、MQL→SQL転換を意識した設計が求められます。
ウェビナー施策の効果とフォローの重要性
ウェビナーは、リード獲得と育成を同時に行える施策ですが、期待通りの成果を得るにはフォロー体制の構築が不可欠です。
ON24の調査(2024-2025ベンチマーク)によると、ウェビナーの登録から参加への変換率は約57%とされています。一方、参加者のうち商談やデモ予約などの次のアクションに進む割合は、平均では10-20%程度とされていますが、B2B SaaS領域では商談化率が約1.2%と低い傾向があります(業界・テーマ・ターゲットにより大きく変動します)。
重要なのはフォローの速度です。ウェビナー参加から5日以内にアプローチできたリードの商談化率は平均の2.5倍になるというデータがあり、参加後の迅速なフォローが成果を左右します。
戦略を全施策に一貫反映させる方法
リード獲得で成果を出すには、個別の施策を最適化する前に、全施策に共通する戦略を明確にすることが重要です。
「誰に・何を・なぜ」を明確にするとは、具体的には以下の要素を定義することを指します。
- 誰に(ターゲット): どの業種・企業規模・役職の人に届けたいか
- 何を(提供価値): 自社のサービスでどのような課題を解決できるか
- なぜ(差別化): 競合ではなく自社を選ぶべき理由は何か
この3点が曖昧なまま施策を展開すると、広告・コンテンツ・ウェビナーでそれぞれ異なるメッセージを発信してしまい、一貫性のないブランド体験を提供することになります。結果として、自社のサービスに本当にフィットする見込み客を逃し、質の低いリードを集めてしまいます。
ターゲット設定とペルソナ設計
質の高いリードを獲得するための第一歩は、ターゲットを具体的に定義することです。
以下の軸でターゲットを明確化することをお勧めします。
- 業種・業界: どの業界の企業が最もサービスの価値を感じるか
- 企業規模: 従業員数・売上規模の目安
- 役職・部門: 意思決定者か、情報収集者か
- 課題: どのような課題を抱えている企業か
- 導入段階: 情報収集段階か、比較検討段階か、導入直前か
ターゲットを絞り込むことで、コンテンツやメッセージの方向性が明確になり、施策間の一貫性が生まれます。
リード獲得施策の戦略一貫性を確認するチェックリスト
自社のリード獲得施策が戦略と一貫しているかを確認するためのチェックリストを用意しました。
【チェックリスト】リード獲得施策の戦略一貫性チェックリスト
- ターゲット(業種・企業規模・役職)が明文化されている
- 自社サービスの提供価値が1文で説明できる
- 競合と比較した際の差別化ポイントが明確になっている
- 全施策で同じターゲットに向けたメッセージになっている
- 広告のコピーとLPの内容に一貫性がある
- ホワイトペーパーの内容がターゲットの課題に対応している
- ウェビナーのテーマがターゲットの関心事に合っている
- フォームの項目がターゲット判別に必要な情報を取得できている
- リード獲得後のフォロー手順が定義されている
- MQL→SQL転換率を測定する仕組みがある
- リード数だけでなく質の指標(商談化率等)をKPIにしている
- 各施策の役割(TOFU/MOFU/BOFU)が明確になっている
- 施策間の導線設計ができている
- 定期的に施策の効果を振り返る機会がある
- 質の低いリードが多い施策を特定・改善する仕組みがある
リードナーチャリングと商談化への流れ
リードを獲得した後、商談・受注につなげるプロセスも重要です。
前述の通り、ウェビナー参加から5日以内にアプローチできたリードの商談化率は平均の2.5倍になるとされています。フォローの速度は成果を大きく左右します。
また、海外データでは、SaaS企業における優れた顧客維持率は約90%とされる一方、初期段階での不十分なオンボーディング体験により年間13%の顧客を失っているという報告もあります(日本市場との差異に注意)。これは、リード獲得だけでなく、獲得後の対応も成果に影響することを示しています。
MQL→SQLへの転換を高めるには、以下の点を意識することが効果的です。
- 迅速なフォロー(参加・ダウンロード後の早期アプローチ)
- 段階的な情報提供(いきなり商談ではなく、段階を踏む)
- スコアリングによる優先順位付け(関心度の高いリードを優先)
まとめ:施策より戦略でリード獲得の質を高める
SaaSのリード獲得で成果を出すには、施策を増やすことより、ターゲット・提供価値・メッセージを明確にした戦略を全施策に一貫反映させることが重要です。
「施策を増やせばリードが増える」「リード数が増えれば商談も増える」という考え方では、コストをかけても質の低いリードを量産してしまいます。まずは「誰に・何を・なぜ」を明確にし、その戦略を全施策に反映させることが、商談につながる質の高いリードを獲得するための第一歩です。
本記事で紹介したチェックリストを活用し、自社の現状を診断してみてください。戦略の一貫性を整えた上で施策を展開することで、リード獲得の成果は大きく変わる可能性があります。
