なぜセールスとマーケの連携は「形だけ」で終わるのか
セールスとマーケの連携方法の答えは明確で、単にミーティングやツール導入ではなく、「誰に・何を・なぜ」という戦略を両部門で一貫させ、CVR・商談化率・受注率を共通指標として追いかける仕組みを作ることで、成果につながります。
「定期的にミーティングをしている」「MAやSFAを導入している」——そう答える企業は多いものの、実際には営業とマーケの溝が埋まらず、成果につながっていないケースが少なくありません。調査によると、BtoB企業の購買プロセスにおいて、営業面談前に85%の企業が候補を選定済みという結果が報告されています(BtoB購買プロセス白書2025)。つまり、営業が接触する前の段階でマーケティング活動が購買判断に大きな影響を与えているのです。
この現実を踏まえると、営業とマーケが別々の戦略で動いていては、顧客の期待とのズレが生じ、商談化率・受注率の低下につながります。本記事では、形だけの連携から脱却し、成果を出すための具体的な方法を解説します。
この記事で分かること
- セールス・マーケ連携がうまくいかない根本原因と失敗パターン
- 「誰に・何を・なぜ」を両部門で統一する戦略設計の方法
- CVR・商談化率・受注率を共通指標として追いかける仕組み
- 自社の連携状況を診断できるチェックリストと比較表
セールス・マーケ連携が求められる背景と現状の課題
セールス・マーケ連携の重要性は、BtoB購買プロセスの変化と、多くの企業で成果測定が不十分な現状から明らかです。調査によると、マーケティング施策の投資対効果を「受注金額」まで追跡している企業は30.2%のみとされています(BtoBセールス&マーケティングに関する調査2025年度版)。
MA(マーケティングオートメーション) とは、リード獲得・育成・選別を自動化するマーケティングツールです。SFA(営業支援ツール) は、営業活動の進捗管理・顧客情報管理を行うシステムを指します。
これらのツールを導入していても、マーケが獲得したリードがどれだけ受注につながったかを追跡できていない企業が約7割を占めるということは、連携が機能していない証拠と言えます。
また、高額取引では意思決定が部門横断的に行われる「グループ購買」傾向が強まり、購買プロセスが長期化していると報告されています(BtoB購買プロセス白書2025)。複数のステークホルダーが関与する中で、マーケティングと営業が一貫したメッセージを届けなければ、顧客の信頼を得ることは難しくなります。
ツール導入だけでは解決しない理由
MAやSFAを導入すれば連携が進むという考えは誤りです。ツールはあくまで情報共有の「手段」であり、戦略の一貫性がなければ、データがあっても活用されません。
前述のとおり、ITツールを複数導入している企業でも、受注金額まで追跡しているのは30.2%にとどまります。これは、ツール導入と成果測定が別問題であることを示しています。
ツール導入の前に、まず「誰をターゲットにするか」「何を訴求するか」「なぜ自社を選んでもらうか」という戦略を両部門ですり合わせることが先決です。
連携不足の根本原因と「形だけ連携」の失敗パターン
連携がうまくいかない根本原因は、定期ミーティングやツール導入など形だけの連携をしてしまい、戦略(ターゲット・訴求・目的)が各部門で異なったまま施策を進めることにあります。この状態では、リードの質がブレたり、営業が「マーケが持ってくるリードは質が低い」と不満を持ったりして、結局成果につながりません。
リードナーチャリングとは、獲得したリードを育成し、商談可能な状態まで温める活動を指します。マーケがリードナーチャリングを行っても、営業が求めるリードの定義と異なっていれば、営業は対応を後回しにしてしまいます。
調査によると、BtoBマーケティング組織の最大課題は「リソース不足」で、営業がリードを後回しにする事例が多発していると報告されています(BtoBマーケティング失敗事例サミット2025)。営業のリソースが限られている中で、質の低いリードに対応する余裕がないのは当然の反応です。
KPI不一致が招くリードの質問題
マーケはリード獲得数をKPIに置き、営業は受注金額を追いかける——この構造が、両部門の溝を生む原因となっています。
マーケが「今月100件のリードを獲得した」と報告しても、営業から見れば「商談化できるのは数件だけ」という状況が生まれます。営業がリードを後回しにする背景には、このKPIの不一致があります。
解決策は、リード数だけでなく「商談化率」「受注率」「受注金額」を両部門の共通指標とすることです。マーケも営業も同じゴールを見ることで、リードの質に対する意識が統一されます。
戦略の一貫性を軸にした連携設計
成果を出す連携の核心は、「誰に・何を・なぜ」という戦略を両部門で一貫させることです。この戦略の一貫性がなければ、どれだけミーティングを重ねても、ツールを導入しても、根本的な改善にはつながりません。
SSOT(Single Source of Truth) とは、顧客データを一元管理し、営業・マーケ間で共有する仕組みを指します。MA/SFA連携でSSOTを実現することで、顧客情報の齟齬を防ぎ、両部門が同じ情報を基に判断できるようになります。
【チェックリスト】セールス×マーケ連携チェックリスト
- ターゲット企業の定義(業種・規模・課題)が両部門で共有されている
- 訴求メッセージ(自社の強み・差別化ポイント)が統一されている
- リードの定義(MQL/SQLの基準)が明文化されている
- リードの優先順位付け基準が両部門で合意されている
- マーケから営業へのリード引き渡しルールが決まっている
- 営業からマーケへのフィードバック(リードの質・商談結果)が定期的に行われている
- 顧客データが一元管理(SSOT)されている
- CVR(商談化率)が共通指標として設定されている
- 受注率が共通指標として設定されている
- 受注金額まで追跡できる仕組みがある
- 定期ミーティングで戦略の振り返りを行っている
- 成功事例・失敗事例の共有が行われている
- コンテンツ(ホワイトペーパー・事例)を営業が商談で活用している
- 営業が求める「商談化しやすいリード」の条件をマーケが把握している
- 施策の効果検証を両部門で行っている
ターゲット・訴求・目的の統一プロセス
両部門で戦略を統一するには、以下のプロセスが有効です。ただし、企業規模や組織体制によって最適な方法は異なりますので、自社の状況に合わせて調整してください。
- ターゲットの明文化: どの業種・規模・役職の企業を狙うかを文書化する
- 訴求の統一: 顧客に伝える価値(なぜ自社を選ぶべきか)を一文で定義する
- 目的の共有: 最終ゴール(受注金額・件数)を両部門で合意する
- 定期的な振り返り: 月次・四半期で戦略の有効性を検証し、必要に応じて修正する
このプロセスを通じて、マーケが獲得するリードと営業が求めるリードのギャップを埋めることができます。
共通指標の設定と運用で成果を可視化する
連携の成果を可視化するには、CVR・商談化率・受注率を共通指標として設定し、両部門で追いかける仕組みを作ることが重要です。前述のとおり、受注金額まで追跡している企業は30.2%にとどまりますが、ここを改善することで連携の効果を定量的に把握できるようになります。
セールスベロシティとは、商談数・単価・成約率・リードタイムの4要素で営業効率を測定する指標です。この指標を活用することで、連携施策がどの要素に影響を与えているかを把握できます。
【比較表】連携施策×成果への影響の比較表
| 連携施策 | 商談数への影響 | 成約率への影響 | リードタイムへの影響 | 導入難易度 |
|---|---|---|---|---|
| ターゲット定義の統一 | ○ | ◎ | ○ | 低 |
| リード基準の明文化 | ◎ | ○ | ○ | 低 |
| SSOT(データ一元管理) | ○ | ○ | ◎ | 中 |
| 共通KPIの設定 | ○ | ◎ | ○ | 低 |
| 定期フィードバック会議 | ○ | ◎ | ○ | 低 |
| 事例コンテンツの営業活用 | ○ | ◎ | ◎ | 中 |
| MA/SFA連携 | ◎ | ○ | ◎ | 高 |
※ ◎: 大きな影響、○: 一定の影響
この比較表を参考に、自社のリソースや課題に応じて優先すべき施策を検討してください。導入難易度が低い施策から着手し、段階的に連携を強化していくアプローチが現実的です。
セールスベロシティで連携効果を測定する
セールスベロシティは、以下の計算式で算出します。
セールスベロシティ = 商談数 × 平均単価 × 成約率 ÷ リードタイム(日数)
この4要素のうち、連携施策によって改善できるのは主に「商談数」「成約率」「リードタイム」です。
- 商談数: マーケのリード獲得と営業へのスムーズな引き渡しで向上
- 成約率: ターゲット・訴求の統一により、質の高いリードが増えることで向上
- リードタイム: 顧客情報の一元管理と適切なタイミングでのアプローチで短縮
連携施策を実施する前後でセールスベロシティを比較することで、効果を定量的に把握できます。ただし、市場環境や季節要因の影響もあるため、単純な比較には注意が必要です。
まとめ:戦略統一と共通指標で連携を成果につなげる
本記事では、セールスとマーケの連携を成果につなげるための戦略設計と実践方法を解説しました。
ポイントの整理
- 連携がうまくいかない原因は、戦略(ターゲット・訴求・目的)が部門間で異なったまま施策を進めていること
- ツール導入だけでは解決せず、まず「誰に・何を・なぜ」を両部門で統一することが先決
- CVR・商談化率・受注率を共通指標として設定し、成果を可視化する仕組みが必要
- セールスベロシティを活用することで、連携施策の効果を定量的に把握できる
本記事で紹介したチェックリストと比較表を活用し、自社の連携状況を診断してみてください。まずは導入難易度の低い施策(ターゲット定義の統一、リード基準の明文化、共通KPIの設定)から着手し、段階的に連携を強化していくことをお勧めします。
セールスとマーケの連携は、単にミーティングやツール導入ではなく、「誰に・何を・なぜ」という戦略を両部門で一貫させ、CVR・商談化率・受注率を共通指標として追いかける仕組みを作ることで、成果につながります。
