「前へ/次へ」リンクは技術実装ではなく導線設計
多くの方が悩むWordPressでの記事ナビゲーション設計。結論は、記事の「前へ/次へ」リンクは単なる技術実装ではなく、読者を次のアクションに導くコンテンツ戦略の一部として設計すべきです。
WordPressでオウンドメディアを運営していると、「前の記事」「次の記事」へのリンクを実装する機会があります。しかし、この機能を単なる技術的な実装として片付けてしまうと、大きな機会損失につながります。BtoBマーケティングにおける調査では、コンテンツ見直しが受注率向上の最優先施策として50.5%が回答しています(2024年、Web担当者Forum調査)。この数字が示すように、エンゲージメント(ユーザーがコンテンツやサービスに対して示す関与度・反応の度合い)を高めるためには、記事の中身だけでなく、読者を次のアクションに導く導線設計も重要な要素となります。
この記事で分かること
- WordPressの前後記事リンクを実装する基本的な関数と使い方
- 関数別の特徴と用途に応じた使い分け方
- BtoBサイトに適したレスポンシブ対応の考え方
- 技術実装を超えた導線設計の視点とチェックポイント
WordPress前後記事リンクの基本と主要関数
WordPressで前後の記事へのリンクを実装するには、主にprevious_post_link() とnext_post_link() という2つのテンプレートタグを使用します。これらはWordPressに標準で用意されている関数で、rel属性も自動で付与されるため、SEOの観点からも適切な実装が可能です。
この記事では、WordPressの標準投稿タイプを対象とした一般的な実装方法を紹介します。テーマやプラグインによって動作が異なる場合があるため、実装時は使用環境での動作確認を推奨します。
previous_post_link() と next_post_link() の使い方
previous_post_link()は前の投稿へのリンクを、next_post_link()は次の投稿へのリンクを出力する関数です。最もシンプルな使い方は、single.phpなどのテンプレートファイル内でそのまま呼び出す方法です。
基本的な構文は以下のようになります。
previous_post_link( $format, $link, $in_same_term, $excluded_terms, $taxonomy );
next_post_link( $format, $link, $in_same_term, $excluded_terms, $taxonomy );
引数を指定しない場合は、デフォルトの形式でリンクが出力されます。$formatでリンクの前後に付加するHTML、$linkでアンカーテキストの形式を指定できます。
同一カテゴリ内に限定するメリット
前後記事リンクを同一カテゴリ内に限定することで、関連性の高い記事への回遊を促進できます。この設定は第3引数($in_same_term)をtrueにすることで実現できます。
読者が特定のテーマに興味を持って記事を読んでいる場合、同じカテゴリの記事に誘導することで、より深い情報提供が可能になります。一方、サイト全体の回遊を重視する場合は、カテゴリに限定しない設定も有効です。サイトの目的に応じて選択してください。
実装方法の比較と使い分け
前後記事リンクの実装には複数のアプローチがあり、それぞれに特徴があります。以下の比較表を参考に、自サイトの要件に合った方法を選択してください。
【比較表】実装方法比較表(関数別の特徴と用途)
| 関数名 | 出力形式 | カスタマイズ性 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| previous_post_link() | HTMLリンクを直接出力 | 中(引数でフォーマット指定可) | シンプルな前記事リンク |
| next_post_link() | HTMLリンクを直接出力 | 中(引数でフォーマット指定可) | シンプルな次記事リンク |
| get_previous_post() | 投稿オブジェクトを返す | 高(取得後に自由に加工可) | カスタムHTML生成 |
| get_next_post() | 投稿オブジェクトを返す | 高(取得後に自由に加工可) | カスタムHTML生成 |
| get_adjacent_post() | 投稿オブジェクトを返す | 高(方向を引数で指定) | 汎用的な隣接記事取得 |
カスタム投稿タイプで使用する場合は、第5引数でタクソノミーを明示的に指定する必要があります。指定しないと、意図した投稿タイプ内でのリンクが生成されない場合があるため注意が必要です。
標準関数とget_adjacent_post()の違い
previous_post_link()やnext_post_link()は「出力型」の関数で、呼び出すとその場でHTMLが出力されます。一方、get_previous_post()やget_adjacent_post()は「取得型」の関数で、投稿オブジェクトを返します。
取得型の関数は、サムネイル画像を含めたリッチなリンクを作成したい場合や、条件分岐を行いたい場合に適しています。例えば、前の記事が存在するかどうかを判定してから表示を切り替える、といった処理が可能です。
カスタマイズとレスポンシブ対応の実践
前後記事リンクの見た目やレイアウトをカスタマイズすることで、ユーザー体験を向上させることができます。レスポンシブデザイン(画面サイズに応じてレイアウトが自動調整されるWebデザイン手法)への対応も重要な検討事項です。
近年では、AIを活用したレスポンシブデザイン対応により、コーポレートサイトの全ページ対応が3日から半日に短縮されたという事例も報告されています。実装工数の削減手段として、こうした新しいアプローチも検討に値します。
CSSクラスの追加とスタイリング
previous_post_link()やnext_post_link()にCSSクラスを追加するには、functions.phpでフィルターを使用する方法が一般的です。
出力されるリンクのaタグにクラスを追加することで、CSSによるスタイリングが容易になります。ただし、テーマによっては独自のフィルターが用意されている場合もあるため、使用テーマのドキュメントも併せて確認することを推奨します。
BtoBサイトでのデバイス対応の考え方
BtoB企業のスマートフォン利用率は約30〜40%程度と考えられ、BtoC企業と比べて低い傾向にあります。このため、BtoBサイトではデスクトップ優先の設計判断も有効な選択肢となります。
ただし、スマートフォンからのアクセスが一定数存在することも事実です。デスクトップでの体験を最適化しつつ、スマートフォンでも閲覧可能な状態を確保するバランスが求められます。自サイトのアクセス解析データを確認し、デバイス別のアクセス比率に基づいた判断を行ってください。
導線設計としての前後記事リンク活用
前後記事リンクを単なる技術的な機能としてではなく、コンテンツ戦略の一部として位置づけることで、その効果を最大化できます。WordPressのデフォルト機能をそのまま使い、ナビゲーションを「あれば良い」程度に考えてしまうと、結果として回遊率が上がらず、せっかくの記事が単独で終わってしまいます。これはよくある失敗パターンです。
BtoBマーケティングの調査では、コンテンツ見直しが受注率向上の最優先施策として50.5%が回答しています(2024年)。ABM(アカウントベースドマーケティング)(特定の企業アカウントを対象に、パーソナライズされたマーケティング活動を行う手法)の文脈でも、読者の関心に沿った導線設計はエンゲージメント向上に寄与します。
以下のチェックリストを活用して、自サイトの前後記事リンク実装を見直してみてください。
【チェックリスト】前後記事リンク実装チェックリスト
- 前後記事リンクがsingle.phpまたは該当テンプレートに実装されている
- 同一カテゴリ内に限定するかどうかを検討した
- カスタム投稿タイプの場合、タクソノミーを明示的に指定している
- リンクのデザインがサイト全体のトンマナと統一されている
- スマートフォンでの表示を確認した
- 前の記事・次の記事が存在しない場合の表示を確認した
- リンクのクリック率をアクセス解析で追跡できる状態にある
- 読者にとって次に読むべき記事が明確になっている
- ナビゲーションの配置位置が適切である(記事末尾など)
- 導線設計全体の中での役割を明確にしている
回遊率向上につながる設計ポイント
前後記事リンクを効果的に活用するためのポイントをいくつか紹介します。
まず、リンクの配置位置を検討してください。記事を読み終えた読者が次のアクションを取りやすい位置、つまり記事末尾への配置が基本です。ただし、長文記事の場合は記事中にも配置を検討する価値があります。
次に、アンカーテキストの工夫です。単に「前の記事」「次の記事」とするよりも、記事タイトルを表示することで、読者が内容を把握した上でクリックするかどうかを判断できます。
最後に、ビジュアル要素の活用です。サムネイル画像を含めたリンクは、テキストのみのリンクよりもクリック率が高まる傾向があります。get_previous_post()などの取得型関数を使えば、このようなリッチなリンクも実装可能です。
まとめ:次のアクションに導くナビゲーション設計
この記事では、WordPressの前後記事リンクについて、基本的な実装方法から導線設計の視点まで解説しました。
主なポイントを整理すると以下のようになります。
- previous_post_link()とnext_post_link()が基本的な実装方法
- 同一カテゴリ内に限定することで関連性の高い回遊を促進できる
- get_previous_post()などの取得型関数でカスタマイズ性を高められる
- BtoBサイトではデスクトップ優先の設計判断も有効
- 技術実装だけでなく、導線設計として戦略的に捉えることが重要
前後記事リンクは、一見地味な機能に思えるかもしれません。しかし、読者を次のアクションに導くという視点で設計すれば、回遊率向上やエンゲージメント強化につながる重要な要素となります。記事の「前へ/次へ」リンクは単なる技術実装ではなく、読者を次のアクションに導くコンテンツ戦略の一部として設計すべきです。
まずはチェックリストを活用して現状を確認し、改善できるポイントがないか検討してみてください。
