オウンドメディアのCMS選定で迷う理由
自社に合ったCMSを選び、運用まで見据えた判断ができるようになるために必要なのは、機能や価格の比較だけでなく、運用フェーズでの戦略一貫性・品質担保の仕組みまで見据えて選ぶことです。
オウンドメディアの立ち上げやリニューアルを検討する際、「CMSの種類が多すぎて選べない」「WordPressでいいのか不安」「選んだ後に運用が回るか心配」——こうした課題を抱えるBtoB企業のマーケティング担当者は少なくありません。
CMS(コンテンツ管理システム) とは、HTML等の専門知識なしで、ブラウザ上からWebサイトのコンテンツを作成・編集・公開できるシステムです。
日本語サイトにおけるWordPressのCMSシェアは約83%で、世界平均(約61%)より20ポイント以上高い状況にあります(W3Techs 2025年7月時点)。この数値は民間調査機関によるものであり、公的統計ではありません。
この記事で分かること
- CMSの種類(オープンソース・SaaS・ヘッドレス)と特徴
- WordPressのメリット・デメリットと選ぶべきケース
- オウンドメディア向けCMS比較表とチェックリスト
- 機能比較だけでなく運用を見据えた選定ポイント
CMSの種類と特徴を整理する
CMSは大きく「オープンソース型」「SaaS型」「ヘッドレス型」の3タイプに分類され、それぞれ特徴と適した利用シーンが異なります。
日本のCMS市場成長率は、パッケージ型CAGR 5.2%、SaaS型CAGR 8.1%と予測されており、SaaS型の成長が上回っています(2022〜2027年、ITR調査)。また、グローバル調査ではヘッドレスCMS戦略を採用する大企業が約64%に達しているというデータもありますが、日本市場とは傾向が異なる可能性がある点に留意が必要です。
オープンソース型CMSの特徴
オープンソースCMSとは、ソースコードが公開され、ライセンス費用なしで利用できるCMSです。WordPress、Drupal等が代表例として挙げられます。
オープンソース型の最大の特徴は、カスタマイズ自由度の高さです。テーマやプラグインを組み合わせることで、自社の要件に合わせた機能拡張が可能です。一方で、サーバー費用、保守費用、セキュリティ対策は自社(または外注先)の責任で行う必要があります。
SaaS型・ヘッドレス型CMSの特徴
SaaS型CMSとは、ベンダーが提供するクラウド上のサービスを月額・年額で利用するCMS形態です。インフラ運用をベンダーに任せられるため、セキュリティアップデートやサーバー管理の負担が軽減されます。ただし、カスタマイズ自由度は制限されることが多いです。
ヘッドレスCMSとは、コンテンツ管理とフロントエンド表示を分離し、API経由でコンテンツを配信するアーキテクチャです。Webサイトだけでなく、アプリやデジタルサイネージなどマルチチャネル展開に向いていますが、技術要件が高く、フロントエンド開発のリソースが必要になります。
WordPressのメリット・デメリット
WordPressは日本市場で圧倒的なシェアを持ち、制作会社・人材の調達がしやすい点が最大のメリットですが、セキュリティ対策と運用設計は自社責任となる点を理解した上で選定する必要があります。
日本語サイトにおけるWordPressのCMSシェアは約83%で、国内上場企業のCMS導入数でもWordPressが5,319件でトップを占めています(2位ShareWith 202件、3位Drupal 120件、2025年8月時点)。
WordPressのメリット
- テーマ・プラグインが豊富でカスタマイズ自由度が高い
- 制作会社や人材が多く、外注先を見つけやすい
- 情報量が多く、トラブル時の対処法を調べやすい
- ライセンス費用が不要
WordPressのデメリット
- セキュリティ対策・アップデートが自社責任
- プラグイン依存による脆弱性リスク
- 運用設計を怠ると品質がバラつく
- 「WordPressは無料」という認識は誤りで、サーバー・保守コストが必要
WordPressを選ぶべきケース・避けるべきケース
WordPressが適しているケース
- 初期コストを抑えたい
- 独自のカスタマイズ要件がある
- 制作会社や外部パートナーとの連携を前提としている
- 社内にIT担当者またはWeb担当者がいる
WordPressを避けるべきケース
- 社内にIT担当が不在で、保守・セキュリティ対応が困難
- セキュリティ・ガバナンス要件が厳格
- 運用体制を構築するリソースがない
オウンドメディア向けCMS比較
主要なCMSタイプを比較すると、それぞれ初期コスト、ランニングコスト、カスタマイズ自由度、運用負担が異なるため、自社の状況に合わせた選定が重要です。
国内上場企業のCMS導入数はWordPress 5,319件がトップで、2位以下を大きく引き離しています(2025年8月時点)。また、日本の上場企業コーポレートサイトのCMS導入率は2022年2月時点で約4割、グロース市場では約6割と報告されています。
【比較表】オウンドメディア向けCMS比較表
| CMSタイプ | 初期コスト目安 | ランニングコスト目安 | カスタマイズ自由度 | 運用負担 | 向いている企業 |
|---|---|---|---|---|---|
| オープンソース型(WordPress等) | 低〜中 | サーバー・保守費用 | 高い | 高い | カスタマイズ重視、制作会社連携前提 |
| SaaS型(国産CMS等) | 中〜高 | 月額/年額利用料 | 中程度 | 低い | セキュリティ重視、運用負担軽減重視 |
| ヘッドレス型 | 高い | API利用料+開発費 | 非常に高い | 中程度 | マルチチャネル展開、技術力のある企業 |
※費用は要件により大幅に変動するため、目安として参照してください。特定CMSの優劣を断定するものではありません。
CMS選定で見落としがちな視点と選び方
CMS選定では、機能や価格だけで選び、運用体制や品質管理の仕組みを考慮しないまま導入してしまうケースが失敗パターンとして多く見られます。その結果、記事ごとに主張がバラバラになったり、品質管理が属人化して公開が滞ったりする問題が発生します。
日本のCMS市場規模は2022年度に124.6億円、前年比7.8%増加しています(ITR調査)。市場が拡大する中で、CMSを導入したものの運用がうまくいかないケースも増えています。
よくある失敗パターン
「機能が豊富なCMSを選べば成果が出る」「シェアが高いCMSが最適」という考え方は誤りです。CMSはあくまでツールであり、運用する体制や戦略が整っていなければ、どのCMSを選んでも成果は出ません。
【チェックリスト】CMS選定チェックリスト
- 運用担当者のスキルレベルを把握しているか
- セキュリティ要件(業界規制、社内規定)を確認したか
- 保守・アップデート対応の体制を決めているか
- 外注する場合、パートナー候補を検討したか
- 初期費用だけでなくランニングコストを試算したか
- 記事の品質管理体制(承認フロー)を設計したか
- ターゲット・USP・トンマナを言語化しているか
- 複数担当者で更新する場合のルールを決めているか
- カスタマイズ要件を洗い出したか
- 将来的な拡張(多言語化、マルチサイト等)を検討したか
- 既存システム(MA、CRM等)との連携要件を確認したか
- バックアップ・復旧の方針を決めているか
運用フェーズを見据えた選定ポイント
CMS選定時に考慮すべき運用面の要素として、以下の3点が重要です。
誰が更新するか(担当者のスキルレベル)
HTML/CSSの知識がない担当者が更新する場合は、直感的に操作できるUIを持つCMSが適しています。逆に、技術力のある担当者がいる場合は、カスタマイズ自由度の高いCMSを選ぶことで柔軟な運用が可能です。
品質管理の仕組み(承認フロー、チェック体制)
記事公開前のチェック体制を事前に設計しておくことが重要です。CMSの承認フロー機能を活用するか、外部ツールと組み合わせるかを検討します。
戦略の一貫性をどう担保するか
「誰に・何を・なぜ伝えるのか」という戦略を言語化し、全記事で一貫させる仕組みが必要です。CMSの選定以前に、この戦略の言語化ができていなければ、どのCMSを選んでも記事ごとに主張がバラバラになるリスクがあります。
まとめ:機能比較だけでなく運用を見据えて選ぶ
オウンドメディアのCMS選定では、機能や価格の比較だけでなく、運用フェーズでの戦略一貫性・品質担保の仕組みまで見据えて選ぶことで、構築後に成果が出るメディアになります。
本記事のポイントを振り返ります。
- CMSは「オープンソース型」「SaaS型」「ヘッドレス型」に大別され、それぞれ特徴が異なる
- WordPressは日本市場で約83%のシェアを持ち、制作会社・人材の調達がしやすいが、セキュリティ対策は自社責任
- 機能や価格だけで選ぶと、運用フェーズで品質管理が属人化する失敗パターンに陥りやすい
- 選定前に「誰が更新するか」「品質管理の仕組み」「戦略の一貫性」を確認することが重要
まずは本記事のチェックリストで自社の状況を確認し、運用体制まで見据えたCMS選定を進めてください。CMS選定では機能や価格の比較だけでなく、運用フェーズでの戦略一貫性・品質担保の仕組みまで見据えて選ぶことが、成果を出すメディアへの第一歩です。
