BtoBマーケティングのキャリアに悩む人が増えている背景
先に答えを言うと、BtoBマーケターとしてキャリアを伸ばすには、ツール操作や部分的なスキルだけでなく、戦略思考と実務の両面を経験し、全体最適でマーケティングを設計できるプロフェッショナルを目指すことが重要です。
BtoBマーケティングの現場では、「ツール操作はできるようになったが、この先どうキャリアを伸ばせばいいのかわからない」という悩みを抱える方が増えています。MA(マーケティングオートメーション) とは、リードの行動ログを可視化し、スコアリング・ナーチャリングを自動化するツールです。Marketo、HubSpot、Pardotなどが代表例として挙げられます。こうしたMAツールの操作スキルやSEOの知識は身についたものの、キャリアの天井を感じている方も少なくありません。
BtoBマーケティング支援市場は成長を続けており、2026年度予測で約210億円規模と、同時期のBtoC市場(152億円)を上回る見通しとされています。市場が拡大する中でマーケターの需要も高まっていますが、単なるオペレーターではなく、戦略を理解し実行できる人材が求められるようになっています。
この記事で分かること
- BtoBマーケターに求められるスキルの全体像
- 典型的なキャリアパスと選択肢の比較
- 部分最適のオペレーターで終わらないためのキャリア設計
- AI時代に求められる変化への対応
BtoBマーケターに求められるスキルの全体像
BtoBマーケターに必要なスキルは、「戦略」「施策」「データ」「AI」の4つの観点で体系的に整理できます。すべてを一人で網羅するのは困難であり、キャリアステージや役割によって重点を置くスキルは異なります。
デマンドジェネレーションとは、見込み顧客を創出し、商談機会を生み出すマーケティング活動です。リード獲得からナーチャリング、商談化までの一連のプロセスを担います。BtoBマーケターは、このデマンドジェネレーションを成功させるために、幅広いスキルを身につける必要があります。
KGI/KPIも理解しておくべき重要な概念です。KGI(Key Goal Indicator) は最終目標指標、KPI(Key Performance Indicator) は目標達成に向けた重要業績指標を指します。事業貢献度を可視化し、マーケティング施策の効果を経営層に説明するために必須の知識です。
キャリアステージ別に見ると、初級者は施策実行とツール操作が中心となり、中級者はMA構築や施策設計に携わるようになります。上級者になると、戦略立案や組織マネジメントが求められます。自分が今どのステージにいるかを把握することが、キャリア設計の第一歩です。
戦略思考と施策実行の両輪
戦略思考と施策実行は、BtoBマーケターのキャリアを支える両輪です。どちらか一方だけでは、成果を出し続けることは難しいでしょう。
カスタマージャーニーとは、顧客が認知から購買までに辿るプロセスを可視化したものです。各ステージに合わせた施策設計に活用します。ただし、カスタマージャーニーを描くだけでは不十分です。「自社が勝負できる領域を見極める力」という戦略的思考能力が根本的に必要です。
施策実行力があっても、戦略がなければ方向性を見失います。逆に、戦略だけを描いても、実行力がなければ絵に描いた餅で終わってしまいます。両方の経験を積むことで、はじめて全体最適でマーケティングを設計できるようになります。
BtoBマーケティングのキャリアパスと選択肢
BtoBマーケターのキャリアパスは、大きく「専門職トラック」と「総合職トラック」に分かれます。どちらが正解ということはなく、自分の志向や強みに合わせて選択することが大切です。
専門職トラックは、SEO、MA運用、データ分析などの特定領域で専門性を深めていくキャリアです。スペシャリストとして市場価値を高め、コンサルタントやフリーランスとして独立する道もあります。
総合職トラックは、マネージャーからCMO(最高マーケティング責任者)、さらには事業責任者へと進むキャリアです。戦略立案と組織マネジメントの両方が求められ、経営に近いポジションを目指します。
SDR/BDRという役割も理解しておきましょう。SDR(Sales Development Representative) は主にインバウンドリードを商談化する役割、BDR(Business Development Representative) はアウトバウンドで新規開拓を担う役割です。インサイドセールスからマーケティングやセールスの両方に広がるキャリアパスも一般化しつつあります。
【比較表】BtoBマーケティングキャリアパス比較表
| キャリアパス | 主な役割 | 求められるスキル | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 専門職(SEOスペシャリスト) | SEO戦略立案・実行 | キーワード分析、コンテンツ設計、テクニカルSEO | 特定領域を深く追求したい人 |
| 専門職(MA/CRMスペシャリスト) | MA設計・運用、リードナーチャリング | ツール設定、シナリオ設計、データ連携 | システム構築と運用が好きな人 |
| 専門職(データアナリスト) | マーケティングデータ分析、レポーティング | SQL、BIツール、統計分析 | 数値で物事を判断したい人 |
| 総合職(マーケティングマネージャー) | 施策の統括、チームマネジメント | 戦略立案、プロジェクト管理、メンバー育成 | チームで成果を出したい人 |
| 総合職(CMO/事業責任者) | マーケティング戦略の最終責任者 | 経営視点、P/L管理、組織設計 | 経営に関わりたい人 |
| 事業会社内転身(営業→マーケ) | 営業企画からマーケへの役割拡大 | 顧客理解、提案力、マーケ基礎知識 | 顧客接点の経験を活かしたい人 |
営業からマーケターへのキャリアチェンジ
営業からBtoBマーケターへのキャリアチェンジは十分に可能です。日本企業では、営業企画・営業推進からマーケティング部門に役割を切り出す形で社内転身するパターンが多く見られます。
営業経験者の強みは、顧客理解と商談経験です。「どんな情報があれば顧客は意思決定できるのか」「どんな課題を抱えているのか」を肌感覚で知っていることは、マーケティング施策を設計する上で大きなアドバンテージになります。
BtoB企業でマーケティング部門・担当者を新設する動きが増えており、「全社的にマーケを勉強中」という企業も多いのが実態です。このタイミングでマーケティングに関わる機会を得られれば、社内でのキャリアチェンジはスムーズに進む可能性があります。
部分最適のオペレーターで終わらないためのキャリア設計
部分最適のオペレーターで終わらないためには、意識的に経験の幅を広げることが必要です。SEOやMAツールの操作スキルなど部分的なスキルだけを磨いてしまい、商材ごとに全体最適でマーケティングを設計・実行できるプロフェッショナルになれないというのは、よくある失敗パターンです。結果としてキャリアの天井が低くなってしまいます。
この失敗パターンを避けるためには、自分の現在地を客観的に把握し、不足している領域の経験を意識的に積むことが重要です。以下のチェックリストで、自分のスキル状況を確認してみてください。
【チェックリスト】BtoBマーケタースキル確認チェックリスト
- ターゲット顧客のペルソナを定義できる
- 競合分析を行い、自社のポジショニングを説明できる
- カスタマージャーニーを描き、各ステージに必要な施策を設計できる
- KGI/KPIを設定し、施策の効果を測定できる
- SEOの基本(キーワード選定、コンテンツ設計)を理解している
- MAツールの設定・運用ができる
- リードスコアリングのロジックを設計できる
- ナーチャリングシナリオを構築できる
- 広告運用(リスティング、SNS)の基礎を理解している
- コンテンツ制作のディレクションができる
- データ分析ツール(GA、BIツール)を活用できる
- 施策の効果を経営層に説明できる
- 営業部門と連携し、リードの質を改善できる
- 外部パートナー(制作会社、代理店)をマネジメントできる
- 予算管理とROI計算ができる
- 新しいツールや手法を自ら学び、取り入れられる
経験すべき業務領域と優先順位
キャリアを伸ばすために経験すべき業務は、デマンドジェネレーションの一連のプロセスです。リード獲得からナーチャリング、商談化までを一通り経験することで、マーケティング全体を俯瞰できるようになります。
優先順位としては、まず自分が担当している領域で成果を出すことが前提です。その上で、隣接する領域に手を広げていきます。たとえば、SEO担当であれば、獲得したリードがその後どのように育成され、商談化されているかを追いかけてみましょう。MAを担当していれば、リードの獲得元であるコンテンツやチャネルの状況を理解することが次のステップになります。
AI時代のBtoBマーケターに求められる変化
AI時代においては、生成AIなど最新ツールをキャッチアップし活用する力が求められています。ChatGPTをはじめとする生成AIは、コンテンツ制作やデータ分析の効率化に大きく貢献します。
一方で、AIで代替されない能力も明確になっています。それは戦略思考です。「どの市場で、誰に、何を訴求するか」という戦略を設計する力は、AIがデータを分析しても人間が判断する領域です。むしろAIの登場により、オペレーション業務は効率化され、戦略思考の価値が相対的に高まっているとも言えます。
少人数体制でマーケティングを回さなければならない企業も多い中、AIを活用して業務効率を上げながら、戦略を描けるプロフェッショナルになることが、これからのキャリア構築の鍵になります。
まとめ:戦略と実務の両立でキャリアを拓く
BtoBマーケターのキャリアを伸ばすためのポイントを整理します。
まず、自分の現在地を把握することから始めましょう。チェックリストを使って、自分が強い領域と不足している領域を客観的に確認してください。キャリアパス比較表を参考に、自分がどの方向に進みたいのかを考えてみましょう。
次に、不足領域の経験を意識的に積むことです。今の担当業務に加えて、隣接する領域に関わる機会を作りましょう。リード獲得からナーチャリング、商談化までの一連のプロセスを経験することで、全体最適でマーケティングを設計できる力が身につきます。
そして、AIを活用しながらも、戦略思考を磨き続けることです。ツール操作はAIで効率化できますが、「誰に何をどう訴求するか」を設計する力は人間にしかできません。
繰り返しになりますが、BtoBマーケターとしてキャリアを伸ばすには、ツール操作や部分的なスキルだけでなく、戦略思考と実務の両面を経験し、全体最適でマーケティングを設計できるプロフェッショナルを目指すことが重要です。今日からできる一歩として、まず自分の現在地を把握し、不足領域の経験を意識的に積むことから始めてみてください。
