コンテンツを拡散しても成果が出ないBtoB企業の課題
先に答えを言うと、BtoBのコンテンツ拡散は、SNSテクニックの前に「誰に・何を・なぜ」という戦略を整え、ターゲットが共有したくなる一貫したメッセージを設計することで初めて成果につながります。
コンテンツを公開しSNSで発信しているが拡散されない、または拡散されてもPVだけで商談につながらない——こうした課題を抱えるBtoB企業のマーケティング担当者は少なくありません。
総務省の令和6年版情報通信白書によると、日本国内SNS利用者数は2023年の1億580万人から2028年には1億1,360万人へ増加が見込まれています。グローバル調査ではソーシャルメディア導入企業の80%以上が「効果的」と回答し、63%が予算増額を予定しているとの報告もあります(ただしグローバル調査のため日本市場との乖離に注意が必要です)。
SNS市場は拡大し、企業の期待も高まっています。しかし、多くのBtoB企業がコンテンツ拡散に取り組んでいるにもかかわらず、成果に結びついていないのが現状です。
この記事で分かること
- ユーザーがコンテンツを拡散・シェアする心理と動機
- BtoBで拡散されやすいコンテンツの特徴
- SNSプラットフォーム別の活用方法と比較
- BtoBコンテンツ拡散施策の設計方法とチェックリスト
なぜユーザーはコンテンツを拡散・シェアするのか
ユーザーがコンテンツをシェアする動機を理解することが、拡散施策設計の第一歩です。シェアの動機は主に「有益性」「自己表現」「共感」「話題性」の4つに分類されます。
UGC(User Generated Content) とは、ユーザーが作成したコンテンツを指します。口コミや投稿など、企業発信ではない自発的なコンテンツがこれに該当します。ユーザーにシェアされることでUGCが生まれ、さらなる拡散につながる好循環が生まれます。
BtoBとBtoCでシェアされる理由の違い
BtoBとBtoCでは、ユーザーがコンテンツをシェアする理由が大きく異なります。この違いを理解しないと、BtoC向けの拡散手法をそのまま適用して失敗するケースが多いです。
BtoCでシェアされる理由:
- 感情を揺さぶられた(面白い、感動した、驚いた)
- お得な情報を共有したい
- 話題に乗りたい、友人と共有したい
BtoBでシェアされる理由:
- 自分の専門性を示したい(この情報を知っている=業界に精通している)
- 業界に貢献したい(有益な情報を広めたい)
- 実務に役立つ情報を保存・共有したい
BtoBでは「感情」より「専門性」「実用性」がシェアの動機になりやすい傾向があります。BtoC向けの「バズ狙い」コンテンツをそのまま転用しても、BtoBでは効果が限定的です。
拡散されやすいコンテンツの特徴
拡散されやすいコンテンツには共通の特徴があります。しかし、その特徴を理解する前に、多くのBtoB企業が陥りがちな失敗パターンを知っておく必要があります。
エンゲージメント率とは、SNS投稿に対するいいね・コメント・シェアなどの反応数をフォロワー数や表示回数で割った割合です。拡散施策の成果を測る重要な指標の一つです。
日本のコンテンツ市場規模は2024年に15兆2,602億円(前年比3.9%増、過去最大)に達しています(ヒューマンメディア調査)。市場は活況ですが、だからこそ「ただコンテンツを出すだけ」では埋もれてしまいます。
SNSの投稿テクニック(投稿時間、ハッシュタグ、画像)だけに注力し、コンテンツ自体の戦略やターゲット設計が曖昧なまま拡散施策を実行してしまう——これはよくある失敗パターンです。 バズっても商談につながらない原因の多くは、「誰に・何を・なぜ」が不明確なまま拡散施策を始めてしまうことにあります。
BtoBで拡散されやすいコンテンツの要素
BtoBで拡散されやすいコンテンツには、以下の要素が含まれています。
データ・調査結果: 業界の専門家が「この情報を知っている」とシェアしたくなる独自データや調査結果は拡散されやすい傾向があります。
実務ノウハウ: 現場で使える具体的な情報は「保存して後で見返したい」「同僚に共有したい」という動機を生みます。
課題解決: ターゲットの課題に直結する内容は「まさに今困っていた」という共感を呼び、シェアにつながりやすいです。
一次情報・独自見解: 他のメディアでは得られない独自の視点や一次情報は、業界関係者がシェアしたくなる要素です。
BtoB向けSNSプラットフォーム別の活用方法
BtoBでコンテンツを拡散する際、どのSNSプラットフォームを選ぶかは重要な判断です。各プラットフォームには特徴があり、ターゲット層によって最適な選択が異なります。
MAU(月間アクティブユーザー) とは、1ヶ月間にサービスを利用したユーザー数を指します。SNSの規模や活発度を示す指標として使われます。
ショート動画とは、60秒以下の短尺縦型動画コンテンツです。TikTok、YouTube Shorts、Instagramリールなどで活用されています。
AIレコメンドとは、AIがユーザーの行動履歴を分析し、興味関心に合ったコンテンツを自動推薦する機能です。
【比較表】BtoB向けSNSプラットフォーム比較表
| プラットフォーム | 利用率/規模 | エンゲージメント率 | BtoB向け活用ポイント | 適したコンテンツ |
|---|---|---|---|---|
| YouTube | 全世代利用率87.9% | - | 30-50代ビジネスパーソンにリーチしやすい | 解説動画、ノウハウ、事例紹介 |
| TikTok | 利用率25.1% | 最大7.5% | 若年層ターゲット向け、AIレコメンドで新規リーチ | ショート動画、トレンド活用 |
| YouTube Shorts | YouTube内 | 約5.9% | YouTube利用者へのショート動画訴求 | 短尺ノウハウ、ティザー動画 |
| X(旧Twitter) | - | - | リアルタイム性、業界の話題に乗りやすい | 速報、意見発信、記事シェア |
| - | - | ビジネス特化、BtoB意思決定者にリーチ | 専門記事、実績、採用情報 |
※利用率データ出典: Hottolink調査(2025年)、エンゲージメント率データ出典: Thunderbit調査(2025年、グローバルデータ中心のため日本市場では異なる可能性があります)
プラットフォーム選択のポイント
プラットフォーム選択で最も重要なのは「ターゲットがいる場所で発信する」ことです。
2025年のHottolink調査によると、YouTube全世代利用率は87.9%、TikTok利用率は25.1%とされています(利用率は自己申告ベースのため、過大評価の可能性があります)。
30-50代のビジネスパーソンをターゲットにする場合、利用率の高いYouTubeを優先するのが合理的です。一方、若年層のビジネスパーソンにリーチしたい場合は、TikTokも選択肢になります。TikTokはエンゲージメント率が最大7.5%とInstagramの数倍という報告もあり(グローバルデータ)、新規リーチを獲得しやすいプラットフォームです。
BtoBコンテンツ拡散施策の設計方法とチェックリスト
BtoBコンテンツの拡散施策は、「戦略設計→コンテンツ制作→拡散実行→効果測定」の順序で進めることが重要です。拡散テクニックから入るのではなく、まず戦略を固めることが成功の鍵です。
グローバル調査ではソーシャルメディア導入企業の63%が予算増額を予定しているとの報告があります。予算を投じる前に戦略を固めておかないと、投資対効果が見えないまま施策を続けることになります。
【チェックリスト】BtoBコンテンツ拡散前チェックリスト
- ターゲットペルソナ(業種・役職・課題)が明確に定義されているか
- ターゲットがシェアしたくなる動機(専門性証明、業界貢献等)を設計しているか
- コンテンツのメッセージが一貫しているか(記事ごとに主張がブレていないか)
- 「誰に・何を・なぜ」が1文で説明できるか
- ターゲットが利用しているSNSプラットフォームを特定しているか
- 各プラットフォームに合わせたコンテンツフォーマットを用意しているか
- 拡散後の導線(CTA、資料DL、問い合わせフォーム)が設計されているか
- 拡散KPI(シェア数、リーチ数)とビジネスKPI(流入数、問い合わせ数)を分けて設定しているか
- 効果測定の方法と頻度を決めているか
- 拡散施策の予算と期間を設定しているか
- 炎上リスクへの対応方針を決めているか
- 定期的な振り返りと改善のサイクルを設計しているか
拡散後の導線設計
拡散されてPVが増えても、そこで終わっては商談にはつながりません。拡散後の導線設計が不足していることが、「バズったのに成果が出ない」原因です。
CTA設置: 記事内に資料ダウンロードや問い合わせへの導線を設置します。拡散経由で流入したユーザーが次のアクションを取れるようにしておくことが重要です。
拡散KPIとビジネスKPIの分離: 拡散KPI(シェア数、リーチ数、エンゲージメント率)とビジネスKPI(サイト流入数、資料DL数、問い合わせ数)は分けて追跡します。拡散は手段であり、目的はビジネス成果です。
流入後のナーチャリング: 拡散経由で流入したユーザーは、すぐに商談化するとは限りません。メルマガ登録やホワイトペーパーダウンロードなど、次のタッチポイントを用意しておくことで、長期的な商談化につなげられます。
まとめ:戦略設計から始めるBtoBコンテンツ拡散
本記事では、BtoBコンテンツの拡散戦略について解説しました。
- BtoBとBtoCでは、ユーザーがコンテンツをシェアする動機が異なる(BtoBは専門性・実用性)
- SNS投稿テクニックだけに注力し、コンテンツの戦略が曖昧なまま拡散施策を実行するのは失敗パターン
- 拡散されやすいBtoBコンテンツは、データ・実務ノウハウ・課題解決・一次情報の要素を持つ
- プラットフォーム選択はターゲット層に応じて判断する(30-50代はYouTube、若年層はTikTokも選択肢)
- 拡散後の導線設計がなければ、バズっても商談にはつながらない
- 拡散KPIとビジネスKPIを分けて追跡することが重要
BtoBのコンテンツ拡散は、SNSテクニックの前に「誰に・何を・なぜ」という戦略を整え、ターゲットが共有したくなる一貫したメッセージを設計することで初めて成果につながります。
本記事で紹介したチェックリストを活用し、自社のコンテンツ拡散施策を見直してみてください。戦略が整っているかを確認することで、拡散施策の成果を高められます。
