オウンドメディアのレポートが「PV報告」で終わる問題
意外かもしれませんが、オウンドメディアのレポートは、PVや記事数の報告で終わらせず、「どの記事が商談につながったか」「CVRはどう変化したか」という成果指標を軸に設計することで、経営判断に活用できる価値あるレポートになります。
「先月のPVは10万でした」「今月は記事を5本公開しました」——こうした報告を続けていても、経営層から「で、成果は?売上にどう貢献しているの?」と問われ、答えに窮した経験はないでしょうか。実際、マーケティング施策の投資対効果を「受注金額」まで追跡している企業は30.2%のみという調査結果もあります(BtoBセールス&マーケティングに関する調査2025年度版)。つまり、多くの企業がPVや記事数といった表面的な数値だけを報告し、成果との紐づけができていないのが現状です。
PVだけの報告では、オウンドメディアの真の価値が経営層に伝わらず、予算縮小や撤退判断につながってしまうリスクがあります。本記事では、こうした「PV報告」から脱却し、成果が見えるレポート設計の方法を解説します。
この記事で分かること
- レポートに必要な基本指標(KGI/KPI/CVR)の整理
- 認知・興味・比較検討・商談化のフェーズ別指標設計
- GA4やLooker Studioを使ったレポート作成の手順
- 経営層に伝わるレポート構成とチェックリスト
レポートに必要な基本指標と用語整理
レポート作成の前提として、成果を測定するための基本指標と用語を整理しておくことが重要です。KGI・KPI・CVRの関係を理解することで、何を報告すべきかが明確になります。
KGI(Key Goal Indicator) とは、最終目標指標のことです。オウンドメディアでは月間売上や問い合わせ数など、ビジネス成果を直接測る指標を設定します。BtoB中小企業のKGI例として、月間問い合わせ数30件、月間売上500万円といった数値が挙げられています(中小企業のオウンドメディア運用ガイド)。
KPI(Key Performance Indicator) とは、中間目標指標です。KGI達成に向けた進捗を測る指標で、PV数やCV数などを設定します。KGIだけを追っていると、「問い合わせが減った」という結果しか分からず、原因の特定ができません。KPIを設定することで、どの段階で改善が必要かを把握できます。
CVR(Conversion Rate) とは、コンバージョン率のことで、訪問者のうちコンバージョン(資料DL、問い合わせ等)に至った割合を指します。
KGIとKPIの関係
KGIとKPIは階層関係にあり、KGIを達成するためにKPIを設定するという考え方が基本です。
例えば、KGIを「月間問い合わせ30件」と設定した場合、それを達成するために必要なKPIを逆算します。CVRが2%であれば、月間1,500件のサイト訪問が必要です。さらに、そのサイト訪問を実現するために、自然検索流入数や記事公開数といったKPIを設定していきます。
この階層関係を理解することで、「PVが増えた」という報告が「だから何?」と言われる理由も明確になります。PVはKPIの一つに過ぎず、KGI(ビジネス成果)との因果関係を示さなければ、経営判断には使えないのです。
BtoBオウンドメディアのCVR目安
BtoBオウンドメディアのCVR(コンバージョン率)は1〜3%が一般的な目安とされています(オウンドメディアKPI設定ガイド)。商材によっては1%未満も珍しくありません。
ただし、この数値はあくまで業界相場であり、業種や商材単価によって大きく異なります。高単価の商材ではCVRが低く出やすく、0.5%以下でも珍しくないケースもあります。自社のCVRを業界相場と比較する際は、この点を考慮してください。
成果指標を軸にしたレポート設計
PV偏重から脱却するには、認知→興味→比較検討→商談化というファネル別に指標を整理し、各フェーズで何を見るべきかを明確にすることが有効です。
以下の表は、オウンドメディアの成長フェーズと、各フェーズで追跡すべき主な指標をまとめたものです。
【比較表】レポート指標の目的別整理表
| フェーズ | 主な指標 | 目安値(BtoB中小企業) | 確認方法 |
|---|---|---|---|
| 認知(立ち上げ期) | 月間PV数、自然検索流入数 | 月間PV1万〜5万、自然検索3,000〜1万 | GA4 > レポート > 集客 |
| 興味(成長期) | リピートユーザー率、読了率 | リピートユーザー率20〜30% | GA4 > 探索 |
| 比較検討 | 検索順位、指名検索数 | 検索順位10位以内30KW | Search Console |
| 商談化(成熟期) | CV数、商談化率 | CV数50〜100件以上 | GA4 > コンバージョン |
| 最終成果 | 受注率、売上貢献額 | KGIに基づき設定 | SFA/CRM連携 |
※ 目安値は2026年時点の業界相場です。業種・商材により大きく異なるため、自社データで検証してください。
フェーズ別の指標設計
立ち上げ期・成長期・成熟期で見るべき指標は異なります。
立ち上げ期では、まずコンテンツの認知拡大を優先します。BtoB中小企業の立ち上げ期オウンドメディアでは、月間PV数1万〜5万PV、自然検索流入数3,000〜1万が目安とされています(オウンドメディアKPI設定ガイド)。この段階でCV数を追い求めすぎると、短期成果が出ないことに焦り、方針がブレてしまうリスクがあります。
成長期では、月間PV数5万〜20万PV、リピートユーザー率20〜30%が目安となります。リピートユーザー率が低いままPVだけが増えている場合は、一度読んで終わりのコンテンツになっている可能性があります。
成熟期では、CV数50〜100件以上を目標とし、商談化率や受注率といった最終成果に近い指標を本格的に追跡します。検索順位10位以内のキーワード数30個を目安として追跡することで、E-E-A-T(専門性・権威性・信頼性)を定量的に評価することも有効です(中小企業のオウンドメディア運用ガイド)。
レポート作成の手順とツール活用
レポート作成には、GA4(Google Analytics 4)とLooker Studioの活用が一般的です。両ツールを連携することで、定点観測の工数を削減しながら、経営層が見やすいダッシュボードを作成できます。
なお、GA4は頻繁にUI更新されるため、本記事で紹介する操作手順は執筆時点(2026年1月)の情報です。最新のUIとは異なる場合がありますので、ご了承ください。
GA4での指標確認方法
GA4では、「レポート」と「探索」の2つの機能でオウンドメディアの指標を確認できます。
基本的なPVやユーザー数は「レポート > 集客」から確認できます。より詳細な分析(読了率、特定ページの遷移など)は「探索」機能を使います。
ただし、GA4のサンプリング発生時には10-20%の精度低下が起こる可能性があります(GA4レポート作成ガイド)。大規模サイト(月間数十万PV以上)では、この点を意識し、重要な意思決定の際は自社GA4での検証を推奨します。サンプリングが発生しているかどうかは、探索レポートの右上に表示されるマークで確認できます。
Looker Studioでのダッシュボード作成
Looker Studioは、Googleが提供する無料BIツールです。GA4やSearch Consoleと連携し、ダッシュボードを作成できます。
Looker Studioを活用するメリットは、日/週/月単位の推移グラフを自動更新できる点です。毎回GA4を開いてデータを集計する手間が省け、定点観測の工数を削減できます。
基本的なダッシュボード作成の流れは以下のとおりです。
- Looker Studioにアクセスし、新規レポートを作成
- データソースとしてGA4を接続
- ユーザー数・PV・CV数の推移グラフを配置
- Search Consoleを追加し、検索クエリ・表示回数・CTRを追加
- 期間フィルターを設定し、月次/週次で切り替え可能にする
経営層に伝わるレポート構成
経営判断に活用できるレポートを作るには、PVだけでなく、KGIに紐づく成果指標を必ず含めることが重要です。経営層が見たいのは「売上にどう貢献しているか」であり、PVの増減ではありません。
以下のチェックリストを使って、自社のレポートに必要な項目が含まれているか確認してください。
【チェックリスト】オウンドメディアレポート項目チェックリスト
- 月間PV数・UU数(前月比・前年同月比)
- 自然検索流入数・流入割合
- 主要流入キーワードと検索順位の変化
- 検索順位10位以内のキーワード数
- リピートユーザー率
- 記事別PVランキング(上位10記事)
- CVR(コンバージョン率)
- CV数(資料DL、問い合わせ等)の内訳
- CV→商談化した案件数
- 商談化率(CV数に対する商談化の割合)
- 受注につながった案件数・金額
- コンテンツ施策(公開記事数、リライト数)
- 成果記事の特定(商談につながった記事)
- 低成果記事の特定(改善候補リスト)
- KGI達成状況(月間問い合わせ数、売上目標との比較)
- 次月のアクションプラン
成果を可視化する報告のポイント
経営層に伝わるレポートを作るには、「どの記事が商談につながったか」を追跡する仕組みが必要です。
GA4でCV計測を設定するだけでは、「CV数は増えたが、売上にはつながっていない」という状況を把握できません。SFA(営業支援ツール)やCRMと連携し、CVからの商談化率・受注率を追跡することで、オウンドメディアの売上貢献を可視化できます。
報告の際は、PV→CV→商談→受注というファネルを図示し、各段階の数値を示すことで、経営層が全体像を把握しやすくなります。「PVが増えました」ではなく、「PVが増えた結果、CVが○件増え、うち○件が商談化しました」という報告ができれば、オウンドメディアの価値を経営層に伝えることができます。
まとめ|PV報告から成果報告へ変える
本記事では、オウンドメディアのレポート作成において、PV報告から脱却し、成果指標を軸にした設計方法を解説しました。
要点を3点にまとめます。
- KGI/KPI/CVRの階層を理解する: PVはKPIの一つに過ぎず、KGI(売上・問い合わせ)との因果関係を示すことが重要
- フェーズ別に見るべき指標を変える: 立ち上げ期はPV・流入数、成長期はリピート率、成熟期はCV・商談化率を重視
- 経営層が見たい数字を含める: PVだけでなく、商談化率・受注貢献額をレポートに含め、売上への貢献を可視化する
まずは、自社の現在のレポートを振り返り、チェックリストの項目がどれだけ含まれているかを確認してみてください。足りない指標があれば、GA4やLooker Studioで計測設定を追加し、次回のレポートから成果指標を加えていくことをお勧めします。
オウンドメディアのレポートは、PVや記事数の報告で終わらせず、「どの記事が商談につながったか」「CVRはどう変化したか」という成果指標を軸に設計することで、経営判断に活用できる価値あるレポートになります。
