記事ごとにメッセージがバラバラでブランドの一貫性が損なわれる問題
最も重要なのは、コンテンツのメッセージとトーンを統一するには、デザインや文体のルールだけでなく、「誰に・何を・なぜ」という戦略を明文化し、全コンテンツに構造的に反映させる仕組みを構築することが不可欠であるということです。
「ライターが変わると記事の雰囲気も変わってしまう」「読者から見ると、同じメディアなのに記事ごとに言っていることが違う印象を受ける」——複数のライターや担当者と協業してオウンドメディアを運営しているBtoB企業では、こうした課題に直面することが少なくありません。
記事ごとにメッセージやトーンがバラバラになると、ブランドとしての一貫性が損なわれ、読者からの信頼構築が難しくなります。この問題を解決するには、見た目のルールを揃えるだけでは不十分であり、戦略レベルでの統一が必要です。
この記事で分かること
- トンマナ(トーン&マナー)の基本概念と構成要素
- デザインだけでなく「戦略」レベルでの統一が必要な理由
- メッセージ・トーン統一がもたらす具体的なメリットと事例
- トンマナ設定で押さえるべき項目一覧(デザイン・文章・戦略)
- 複数ライター体制でも一貫性を保つ運用のコツ
トンマナ(トーン&マナー)とは|基本概念と構成要素
トンマナ(トーン&マナー) とは、言語・色使い・写真スタイル・UIなどを含む包括的なブランド表現の一貫性を指す概念です。デザインだけでなく、文章のトーンやメッセージの方向性も含まれます。
トンマナを「デザインガイドライン」や「文体ルール」だけで完結させてしまうという考え方は誤りです。見た目は統一されていても、記事ごとにターゲットや訴求ポイントがバラバラでは、読者に一貫した価値を届けられません。これがよくある失敗パターンです。
BtoBコンテンツにおけるトンマナの重要性は、単なるビジュアルの統一にとどまりません。ブランドボイスとは、ブランドが発信する際の言語・言葉遣いの一貫性を指し、トンマナの言語的側面を担います。複数のタッチポイントで顧客と接触するBtoBビジネスでは、このブランドボイスの一貫性が信頼構築の基盤となります。
デザインだけでなく「戦略」レベルでの統一が必要な理由
戦略レベルでの統一とは、「誰に・何を・なぜ」という根本的な方向性を全コンテンツに反映させることを意味します。
デザインや文体が統一されていても、記事Aでは「コスト削減」を訴求し、記事Bでは「業務効率化」を訴求し、記事Cでは「売上向上」を訴求するというように、ターゲットや訴求軸がバラバラでは、読者は「この会社は結局何を提供してくれるのか」が分からなくなります。
戦略を全コンテンツに構造的に反映させる仕組みがあれば、誰がコンテンツを作成しても、一貫したメッセージとトーンで発信できる状態を実現できます。
メッセージ統一・トーン統一がもたらすメリットと効果
メッセージとトーンの統一は、ブランドの一貫性を高め、読者・顧客からの信頼構築につながります。具体的な効果を示す事例として、いくつかの報告があります。
Kaizen Platform社では、コンテンツとメールのトンマナを統一することで商談数が約2倍に向上し、受注率も大幅に改善したという報告があります(2025年事例)。また、ある企業ではターゲット再定義とマーケティングメッセージの統一により、LPのCV数が約2倍に向上した事例も報告されています。
これらの事例は企業の自己報告が多く、第三者検証はされていない点に注意が必要です。また、トンマナ統一だけでなく、LP改善やMAツール導入など他施策との複合効果である場合が多く、単独効果の切り分けは困難です。
BtoBコンテンツにおける統一感の重要性
カスタマージャーニーとは、顧客が認知から購買・利用に至るまでの行動・心理の流れを可視化したものです。BtoBビジネスでは検討期間が長く、複数の担当者が関わるため、各タッチポイントでの一貫性がより重要になります。
関東製作所では、ニーズ別ポップアップ配信のトンマナ設計により、問い合わせが100件から350件超に増加したという報告があります(リリース1年後、2024年頃)。
また、採用領域の事例ですが、全メディアでトーン統一した採用ブランディングにより、採用効率が1.4倍向上した報告もあります(2022年導入、2025年現在継続)。ただし、対象企業名は非公開でサンプル数も不明であり、採用領域の事例のためマーケティング全般への一般化には注意が必要です。
複数のタッチポイントでメッセージとトーンが一貫していることで、読者は「このブランドはこういう価値を提供してくれる」という認識を形成しやすくなり、信頼構築につながります。
トンマナ設定で押さえるべき項目一覧
トンマナを設計する際は、デザイン・文章・戦略の3つの観点を網羅することが推奨されます。以下の一覧表で、各カテゴリの設定項目を整理します。
【比較表】トンマナ設定項目一覧(デザイン・文章・戦略)
| カテゴリ | 設定項目 | 設定内容の例 |
|---|---|---|
| デザイン | ブランドカラー | メインカラー、サブカラー、アクセントカラーの定義 |
| デザイン | フォント | 見出し用フォント、本文用フォント、サイズ規定 |
| デザイン | レイアウト | 余白の取り方、グリッドシステム |
| デザイン | 画像スタイル | 写真のトーン、イラストのタッチ、アイコンスタイル |
| デザイン | ロゴ使用規定 | 最小サイズ、余白、背景色との組み合わせ |
| 文章 | 文体 | です・ます調、である調、敬語レベル |
| 文章 | 専門用語の扱い | 初出時の定義記載ルール、言い換え表現リスト |
| 文章 | 表記統一 | 数字表記、英語表記、句読点ルール |
| 文章 | 禁止表現 | 最上級表現、競合批判表現、断定過多の回避 |
| 文章 | 人称・呼称 | 自社の呼び方、読者の呼び方 |
| 戦略 | ターゲット定義 | ペルソナ、業種、役職、課題 |
| 戦略 | USP(独自価値) | 競合との差別化ポイント |
| 戦略 | 訴求軸 | 主要なベネフィット、優先順位 |
| 戦略 | メッセージ体系 | タグライン、キーメッセージ |
| 戦略 | 禁止テーマ | 言及しない話題、避けるべき比較 |
E-E-A-Tとは、Experience(経験)・Expertise(専門性)・Authoritativeness(権威性)・Trustworthiness(信頼性)の略で、Googleの品質評価基準です。戦略項目を明確にすることで、E-E-A-Tを高めるコンテンツを継続的に生み出す基盤が整います。
デザイン・ビジュアル面の設定項目
デザイン面では、色・フォント・レイアウト・画像スタイルの4つが主要な設定項目です。
例えば、ブランドカラーを「信頼性を表す青系をメイン、アクセントに活力を示すオレンジ」と定義し、すべてのコンテンツでこの配色を使用することで、読者は無意識のうちに「このブランドのコンテンツだ」と認識できるようになります。
画像スタイルについても、「人物写真は自然光で撮影した明るいトーン」「図解はフラットデザインで統一」などのルールを設けることで、視覚的な一貫性が保たれます。
文章・言語面の設定項目
文章面では、文体・敬語レベル・専門用語の扱いが重要な設定項目です。
BtoBコンテンツでは、「です・ます調」で丁寧さを保ちながらも、過度に堅くならない文体が一般的です。専門用語については、ターゲット読者の知識レベルに合わせて、初出時に定義を記載するルールを設けることが効果的です。
ブランドボイスを明確にすることで、誰が書いても「この会社らしい」文章になります。例えば、「専門性を感じさせつつも、親しみやすく解説する」「断定を避け、読者の状況に寄り添う表現を使う」といった方針を決めておくことで、ライターによる文体のブレを防げます。
トンマナガイドラインの作り方と運用方法
トンマナガイドラインを作成するには、まず現状分析から始めます。既存コンテンツのトーン・メッセージを棚卸しし、一貫している点とバラバラな点を明確にします。
次に、戦略項目(ターゲット・USP・訴求軸)を定義し、それを基にデザイン項目・文章項目を設計します。戦略が明確でないままデザインや文体だけを決めても、根本的な解決にはなりません。
ガイドライン作成後は、共有→レビュー→改善のサイクルを回すことが重要です。ガイドラインは一度作って終わりではなく、実際の運用を通じて継続的にブラッシュアップしていくものです。
【チェックリスト】メッセージ・トーン統一セルフチェックリスト
- ターゲット(誰に向けて書くか)が明文化されている
- ターゲットの課題・ニーズが具体的に言語化されている
- 自社のUSP(独自価値)が明確に定義されている
- 訴求軸の優先順位が決まっている
- キーメッセージ・タグラインが設定されている
- 文体(です・ます調/である調)が統一されている
- 敬語レベルが定義されている
- 専門用語の扱いルールがある
- 禁止表現リストが作成されている
- 表記統一ルール(数字・英語・句読点)がある
- ブランドカラーが定義されている
- フォント規定がある
- 画像スタイルが統一されている
- ガイドラインが全担当者に共有されている
- 新規コンテンツのレビュー体制がある
- ガイドラインからの逸脱を指摘するフィードバックの仕組みがある
- 定期的なガイドライン見直しの機会がある
- ライター・担当者へのオンボーディングプロセスがある
複数ライター体制でも一貫性を保つ運用のコツ
複数のライターや担当者が関わる場合、ガイドラインを作るだけでは不十分です。実際の運用で一貫性を保つには、レビュー体制とフィードバックの仕組みが欠かせません。
株式会社ステマンでは、Xで社員本音発信の統一トーンを維持することにより、応募者が前年比150%増となり、ミスマッチも防止できたという報告があります(2025年)。
運用のコツとしては、以下のポイントが挙げられます。
- オンボーディング: 新規ライターには必ずガイドラインの読み合わせを実施
- レビュー体制: 公開前に必ず戦略との整合性をチェック
- フィードバック蓄積: 逸脱事例とその修正内容をナレッジとして蓄積
- 定期見直し: 四半期に一度など、ガイドラインの有効性を検証
これらの仕組みを整備することで、担当者が変わっても一貫したメッセージとトーンを維持できます。
まとめ:戦略レベルでの統一がコンテンツの成果を左右する
コンテンツのメッセージとトーンを統一するには、デザインや文体のルールだけでなく、「誰に・何を・なぜ」という戦略を明文化し、全コンテンツに構造的に反映させる仕組みを構築することが不可欠です。
トンマナを「デザインガイドライン」や「文体ルール」だけで完結させるのではなく、戦略項目(ターゲット・USP・訴求軸)を含めた包括的なガイドラインを作成し、レビュー体制とフィードバックの仕組みで継続的に運用していくことが成功の鍵となります。
本記事で紹介したセルフチェックリストを活用して、自社のメッセージ・トーン統一の状況を確認してみてください。チェックが付かない項目があれば、そこから優先的に取り組むことで、ブランドとしての一貫性を高めていくことができます。
