カスタマーサクセスでコンテンツを整備しても活用されない問題
オンボーディングや顧客支援をハイタッチで行っているがスケールしない、という課題を解決したいなら、カスタマーサクセスのコンテンツは顧客ライフサイクル(導入期・活用期・更新期)に応じて設計することで、ハイタッチに頼らないスケーラブルな顧客支援を実現できます。
カスタマーサクセス白書2025によると、共通の課題として「リソース不足」「メンバーの採用・育成」が上位に挙がっています。カスタマーサクセスに取り組む企業のうち「この3年で取り組みが進んだ」と回答した人は84.9%(2025年調査)に上る一方で、コンテンツを整備しても期待した効果が得られないケースが少なくありません。
テックタッチとは、デジタル(プロダクト内ガイド、メール、オンラインコンテンツ等)でスケーラブルに顧客を支援するカスタマーサクセスのタッチモデルです。しかし、テックタッチ向けコンテンツを闇雲に整備しても、顧客に活用されなければCS担当者の工数削減にはつながりません。
この記事で分かること
- カスタマーサクセスにおけるコンテンツの役割とタッチモデル
- 「とりあえずFAQ」で失敗する理由
- 顧客ライフサイクル別コンテンツの設計方法
- コンテンツ整備の優先順位と実践チェックリスト
カスタマーサクセスにおけるコンテンツの役割とタッチモデル
カスタマーサクセスのコンテンツは、顧客が自己解決できる仕組みを作り、限られたリソースでもスケーラブルな支援を実現するための重要な手段です。
SaaS企業の約8割がカスタマーサクセスに取り組んでいる一方、非SaaS企業では約半数にとどまります(カスタマーサクセス白書2025)。日本企業で「カスタマーサクセスという言葉を聞いたことがある」は21.9%、内容まで理解している人は2.8%にとどまる(2025年調査、64,138人対象)という現状もあり、CSの基本概念を正しく理解することが重要です。
ハイタッチとは、専任担当者が個別に顧客を支援する高接触型のタッチモデルです。エンタープライズ顧客向けに多く採用されています。
ロータッチとは、セミナーや1対多のコミュニケーションで効率的に顧客を支援するタッチモデルで、ハイタッチとテックタッチの中間に位置します。
オンボーディングとは、顧客がサービスを使い始めてから価値を実感するまでの導入支援プロセスです。初期定着がチャーン防止の鍵となります。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
カスタマーサクセスとカスタマーサポートは異なる概念です。
カスタマーサポートは、顧客からの問い合わせに対応するリアクティブ(受動的)な活動です。一方、カスタマーサクセスは顧客の成功を支援するプロアクティブ(能動的)な活動であり、顧客が課題を感じる前に先回りして支援を行います。
「カスタマーサクセス=カスタマーサポート」という誤解は多いですが、CSは「成功支援」であり、顧客の事業成果に貢献することを目的としています。
「とりあえずFAQ」では成果が出ない——場当たり的なコンテンツ整備の問題
「とりあえずFAQを作る」「問い合わせが多い内容をマニュアル化する」という場当たり的なコンテンツ整備では成果が出ません。顧客のライフサイクルや課題に紐づかないコンテンツは活用されず、CS担当者の工数削減にもつながりません。
SaaS企業でカスタマーサクセスに取り組む企業のうち89.2%が「解約率低減・継続率向上」を重視と回答しています(カスタマーサクセス白書2025)。しかし、場当たり的にコンテンツを整備しても、この目的を達成することは困難です。
チャーンレート(解約率) とは、一定期間内にサービスを解約した顧客の割合です。カスタマーサクセスの最重要KPIの一つであり、この数値を改善するためには、顧客のライフサイクルに応じた計画的なコンテンツ設計が必要です。
失敗パターンとしては、以下のようなケースが挙げられます。
- 問い合わせが来るたびにFAQを追加するが、体系化されておらず顧客が見つけられない
- 機能説明のマニュアルは充実しているが、「なぜその機能を使うべきか」が伝わらない
- コンテンツは作ったものの、顧客がどのタイミングでどのコンテンツを見るべきかの導線がない
顧客ライフサイクル別コンテンツの設計方法
顧客ライフサイクル(導入期・活用期・更新期)に応じてコンテンツを設計することで、各段階で顧客が必要とする情報を適切に届けることができます。
カスタマーサクセス取り組み1年未満の企業で59.6%が効果を実感(前年比+4.8pt)、1年以上2年未満では70.1%が効果を実感(+3.2pt)しています(2025年調査)。継続的な取り組みが効果につながることを示すデータです。
NRR(Net Revenue Retention) とは、既存顧客からの売上継続率です。アップセル・クロスセルを含み、100%超が成長の目安とされています。ライフサイクル別のコンテンツ設計は、NRR向上にも寄与します。
以下に、顧客ライフサイクル別のコンテンツ設計表を示します。
【比較表】顧客ライフサイクル別コンテンツ設計表
| ライフサイクル | 目的 | コンテンツ例 | KPI例 |
|---|---|---|---|
| 導入期(オンボーディング) | 初期定着・価値実感 | スタートガイド、ウォークスルー、初期設定動画 | アクティベーション率、初期設定完了率 |
| 活用期 | 活用促進・深化 | 機能紹介メール、活用事例、Tips記事 | 機能利用率、ログイン頻度 |
| 更新期 | 継続利用・アップセル | 成果レポート、新機能案内、プラン比較 | 更新率、アップセル率 |
※業種やプロダクト特性によって最適なコンテンツは異なります。自社の顧客の課題に合わせて調整してください。
導入期(オンボーディング)のコンテンツ
オンボーディング用コンテンツ(スタートガイド・ウォークスルー・動画)から着手するのが一般的です。顧客が最初につまずきやすいポイントを解消することで、初期定着とチャーン防止に効果があります。
導入期のコンテンツとしては、以下が有効です。
- 初期設定のステップバイステップガイド
- 基本操作を説明する動画
- よくあるつまずきポイントのFAQ
- 最初に達成すべきゴールの明示
活用期・更新期のコンテンツ
活用期には、顧客がサービスをより深く活用するためのコンテンツが必要です。更新期には、継続利用のメリットを伝えるコンテンツが重要になります。
活用期のコンテンツ例:
- 利用状況に応じた機能紹介メール
- 低利用者向けのリアクティベーションメール
- 活用事例・成功事例の紹介
更新期のコンテンツ例:
- 利用実績レポート(成果の可視化)
- 新機能・アップデート情報
- 上位プランのメリット説明
カスタマーサクセスコンテンツ整備の優先順位と実践ステップ
リソース不足が課題である中、すべてのコンテンツを一度に整備することは現実的ではありません。優先順位をつけて段階的に整備することが重要です。
カスタマーサクセスでAI活用を行っている企業の74.5%が効果を実感し、6割以上が「新規売上増加」で業績向上を実感しています(2025年調査)。AI活用によるテックタッチ高度化も選択肢の一つです。
以下のチェックリストで、自社のコンテンツ整備状況を確認し、優先度の高いものから着手してください。
【チェックリスト】カスタマーサクセスコンテンツ整備チェックリスト
- 初期設定のステップガイドを用意している
- 基本操作の説明動画を用意している
- オンボーディング完了の定義(ゴール)を明確にしている
- 初期設定でつまずきやすいポイントのFAQを整備している
- 顧客が最初に達成すべきアクションを明示している
- 利用状況に応じた自動メール配信を設定している
- 低利用者向けのリアクティベーション施策がある
- 機能紹介・Tipsコンテンツを定期的に配信している
- 活用事例・成功事例を公開している
- 更新時期に合わせた案内メールを配信している
- 利用実績レポートを顧客に提供している
- 新機能・アップデート情報の案内フローがある
- コンテンツの閲覧状況を計測している
- 顧客からのフィードバックを収集する仕組みがある
- コンテンツの更新・改善サイクルが回っている
まとめ——顧客ライフサイクル別のコンテンツ設計でスケーラブルなCSを実現する
カスタマーサクセスのコンテンツは、顧客ライフサイクルに応じて計画的に設計することで、ハイタッチに頼らないスケーラブルな顧客支援を実現できます。
要点の整理:
- カスタマーサクセスとカスタマーサポートは異なる概念であり、CSはプロアクティブな「成功支援」活動
- 「とりあえずFAQ」という場当たり的な整備では成果が出ない
- 顧客ライフサイクル(導入期・活用期・更新期)に応じたコンテンツ設計が重要
- リソース不足を補うため、オンボーディングコンテンツから優先的に整備する
- AI活用によるテックタッチ高度化も選択肢の一つ
カスタマーサクセスに取り組む企業の84.9%が「この3年で取り組みが進んだ」と回答している一方、リソース不足は依然として課題です。本記事で紹介した設計表とチェックリストを活用し、限られたリソースでもスケーラブルなカスタマーサクセス活動を実現してください。
重要なのは、カスタマーサクセスのコンテンツを顧客ライフサイクル(導入期・活用期・更新期)に応じて設計することで、ハイタッチに頼らないスケーラブルな顧客支援を実現することです。
