MQL/SQLの育成で成果が出ない原因と本記事の目的
MQLとSQLの違いを理解し、効果的な育成方法を実践するための答えは明確で、MQLとSQLの育成で成果を出すには、定義を理解するだけでなく、自社のターゲット・商材・営業プロセスに合わせた基準を設計し、マーケティングと営業が同じ定義で運用する仕組みを整えることが重要です。
「MQLを創出しても営業に放置される」「SQLの質が悪いと言われる」「部門間連携がうまくいかない」——こうした課題を抱えるBtoB企業のマーケティング担当者は少なくありません。2025年の調査では、BtoB企業で営業専門家の20%(5人に1人)が「営業チームとマーケティングチームがあまり連携していない、またはまったく連携していない」と回答しています(ただしグローバル寄りの統計であり、日本市場では異なる可能性があります)。
この記事で分かること
- MQLとSQLの定義・違いと、MQL→SQL→受注までの流れ
- MQLからSQLへの育成プロセスとリードスコアリングの設計方法
- マーケティングと営業の連携を成功させるSLA設定のポイント
- 自社に合ったMQL/SQL基準を設計するためのチェックリスト
MQLとSQLの定義と違い|基本概念を整理する
MQLとSQLは、どちらも見込み客(リード)を分類する概念ですが、判定する部門と基準が異なります。この違いを正確に理解することが、効果的な育成プロセスの出発点となります。
MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング部門がスコアリングで「育成対象の見込みの高いリード」と判定した見込み客を指します。Webサイトへの訪問、資料ダウンロード、ウェビナー参加などの行動履歴に基づいて判定されます。
SQL(Sales Qualified Lead) とは、営業部門がBANT基準でヒアリングし「商談化可能なリード」と認定した見込み客を指します。実際の商談を経て、購買意欲や導入可能性が確認されたリードです。
BANTとは、Budget(予算)、Authority(決裁権)、Need(必要性)、Timeframe(導入時期)の頭文字で、SQL判定に用いる基準として広く活用されています。
【比較表】MQLとSQLの定義・基準比較表
| 項目 | MQL | SQL |
|---|---|---|
| 定義 | マーケティング部門が育成対象と判定した見込み客 | 営業部門が商談化可能と認定した見込み客 |
| 判定部門 | マーケティング部門 | 営業部門 |
| 判定基準 | リードスコアリング(行動履歴・属性) | BANT基準(予算・決裁権・必要性・導入時期) |
| 判定方法 | 自動化(MAツール)またはルールベース | ヒアリング・商談を通じた評価 |
| 次のステップ | 営業への引き渡し(SQL化) | 商談・提案・受注 |
| 典型的な行動 | 資料DL、ウェビナー参加、問い合わせ | 見積もり依頼、デモ要望、導入相談 |
MQL→SQL→受注までの流れ
リード獲得からMQL認定、SQL化、そして受注に至るまでには、段階的なプロセスがあります。日本市場のBtoBリード育成において、MQL→SQL転換率の業界平均は10-30%程度とされています(2024年時点、民間調査ベース)。ただし、この数値はサンプル企業規模や業種により大きく変動するため、あくまで目安として捉えてください。
リードスコアリングとは、見込み客の行動履歴・属性に点数を付け、優先度を判定するMAツールの機能です。スコアが一定の閾値を超えたリードをMQLとして認定します。
全体の流れは以下のとおりです。
- リード獲得: Webサイト、広告、展示会などで見込み客情報を取得
- リードナーチャリング: メール配信やコンテンツ提供で関心度を高める
- MQL認定: スコアリング基準を満たしたリードをMQLとして認定
- 営業への引き渡し: MQLを営業部門に通知・共有
- SQL化: 営業がヒアリングを行い、BANT基準でSQL認定
- 商談・受注: 提案、見積もり、契約締結
MQLからSQLへの育成プロセス
MQLからSQLへの育成は、単にリードを営業に渡すだけでは成功しません。継続的なナーチャリングと、適切なタイミングでの引き渡しが重要です。
ある事例では、MAツールを活用した企業でMQL→SQL化率が25%上昇したと報告されています。この事例では、行動履歴に基づくスコアリングと、適切なタイミングでのコンテンツ配信が成果につながったとされています。
育成プロセスの基本ステップは以下のとおりです。
- 行動履歴の蓄積: ページ閲覧、資料ダウンロード、メール開封などを記録
- スコアリング: 行動ごとにポイントを付与し、総合スコアを算出
- セグメント分け: スコアや属性に応じて、配信コンテンツを最適化
- 閾値到達: スコアが基準値を超えたら、MQLとして営業に通知
- 引き渡し情報の整備: 営業が優先度判断できるよう、属性・行動履歴・スコアを共有
リードスコアリングの設計と運用
スコアリングの設計は、自社のターゲットや商材に合わせて調整することが重要です。一般的な設定例として、「合計50点以上」をMQL認定の閾値とするケースがあります。
スコアリング項目例
行動スコア
- 資料ダウンロード: 5点
- 製品ページ閲覧: 2点
- 価格ページ閲覧: 10点
- 問い合わせフォーム到達: 15点
- ウェビナー参加: 8点
- メール開封: 1点
- メールリンククリック: 3点
属性スコア
- ターゲット業種: 10点
- 従業員規模500名以上: 5点
- 決裁権のある役職: 10点
スコアリングの運用では、定期的な閾値の見直しと、営業からのフィードバック収集が欠かせません。「MQLの質が低い」という声があれば、閾値を上げるか、スコアリング項目を見直す必要があります。
マーケティングと営業の連携がMQL/SQL育成の成否を分ける
部門間連携の良し悪しが、MQL/SQL育成の成果を大きく左右します。前述の2025年調査では、BtoB企業で営業専門家の20%が部門間連携に課題を感じていると回答しています。
「MQL/SQLの定義を学んで用語を社内共有すれば部門連携が改善する」という考え方は誤りです。これはよくある失敗パターンです。用語の共有だけでは、実際の運用ルールや基準が曖昧なまま残り、「マーケが送ってくるリードは使えない」「営業がMQLを放置する」という状況が改善されません。
成果を出すには、基準設計と運用ルールの合意形成が不可欠です。特に高額商材を扱う企業では、この連携がより重要になります。BtoB購買プロセス白書2025によると、高額取引(高価格帯)では平均18.3人が関与し、検討から契約まで54%が半年以上かかるとされています(ただしサンプル規模は限定的)。複数の意思決定者に対応するためにも、マーケティングと営業の一貫した連携が求められます。
SLAの設定と運用ルールの合意形成
SLA(Service Level Agreement) とは、マーケティングと営業間で取り決める対応時間・質の合意事項です。例えば「SQL通知後24時間以内に初回コンタクト」といったルールを明文化します。
SLA設定のポイントは以下のとおりです。
- 対応時間の明文化: SQL通知後の初回コンタクト期限を設定(例: 24時間以内)
- 共有情報の標準化: MQL/SQL引き渡し時に共有する情報項目を定義
- フィードバックルールの設定: 営業からMQL品質に関するフィードバックを定期収集
- 定例ミーティングの実施: 週次または月次で基準の見直しと成果確認を実施
対応時間を明文化することで、営業のMQL放置を防止できます。また、フィードバックを通じてスコアリング基準を継続的に改善することが、長期的な成果につながります。
自社に合ったMQL/SQL基準を設計する方法
自社のターゲット・商材・営業プロセスに合わせた基準設計が、成果を出すための鍵です。成功事例では、広告データ連携で顕在キーワードを最適化し、MQL数の大幅な増加と有効商談率1.35倍を達成した企業があります。また、ABMコンテンツ施策でメールURLクリック後にインサイドセールスがフォローする体制を構築し、案件創出額を大きく伸ばした事例も報告されています(いずれも企業自己申告ベースのため、成功バイアスがある点に留意)。
【チェックリスト】MQL/SQL基準設計チェックリスト
- ターゲット顧客の定義(業種・規模・役職・課題)が明確になっている
- MQL認定のスコアリング基準(行動スコア・属性スコア)が設定されている
- MQL閾値(例: 50点以上)が決まっている
- SQL判定のBANT基準(予算・決裁権・必要性・導入時期)が定義されている
- MQL→SQL引き渡し時の共有情報項目が標準化されている
- SQL通知後の対応時間SLAが設定されている(例: 24時間以内に初回コンタクト)
- 営業からマーケティングへのフィードバックルールが決まっている
- 定例ミーティング(週次または月次)の実施体制がある
- スコアリング基準の見直しサイクルが設定されている
- MQL/SQL定義についてマーケティング・営業間で合意形成ができている
- MAツール・SFA/CRMでのデータ連携方法が決まっている
- MQL→SQL転換率のKPIが設定されている
- SQL→商談化率のKPIが設定されている
- 失注リードの再育成ルールが定義されている
- インサイドセールスの役割分担が明確になっている
基準設計で陥りやすい失敗パターン
基準設計でよくある失敗パターンを把握し、回避策を講じることが重要です。
失敗パターン1: MQLを全件営業にパスする
スコアリング基準を設けず、獲得したリードをすべて営業に渡すと、営業の工数が増大し、転換率が極端に低下します。この場合、営業は「マーケからのリードは質が低い」と判断し、次第にMQLを無視するようになります。
失敗パターン2: MQL基準が曖昧
「なんとなく興味がありそう」という曖昧な基準でMQL認定すると、営業との認識にズレが生じます。結果として、「商談化しにくい」と営業に無視され、競合に流出するリスクが高まります。
失敗パターン3: 一度設定した基準を見直さない
市場環境や商材の変化に応じて、基準は継続的に見直す必要があります。設定したまま放置すると、実態と乖離した基準になり、成果が低下します。
まとめ:基準設計と部門連携でMQL/SQL育成を成果につなげる
この記事では、MQLとSQLの違いから、育成プロセス、部門間連携のポイント、そして自社に合った基準設計の方法まで解説しました。
重要なポイントを振り返ります。
- MQLはマーケティング部門がスコアリングで判定、SQLは営業部門がBANT基準で認定する見込み客
- MQL→SQL転換率は業界平均10-30%程度だが、業種・規模により大きく変動する
- 部門間連携には、用語の共有だけでなく、SLA設定と運用ルールの合意形成が必要
- 自社のターゲット・商材に合わせた基準設計と、定期的な見直しが成果の鍵
今日から始められるアクション
- 現在のMQL/SQL定義と基準を、マーケティング・営業の両部門で確認する
- 本記事のチェックリストで、自社の基準設計状況を点検する
- SLA(対応時間・共有情報)について、営業部門と合意形成を行う
- 定例ミーティングを設定し、基準の見直しサイクルを構築する
改めて強調しますが、MQLとSQLの育成で成果を出すには、定義を理解するだけでなく、自社のターゲット・商材・営業プロセスに合わせた基準を設計し、マーケティングと営業が同じ定義で運用する仕組みを整えることが重要です。
