提案書が採用されない本当の原因とは
意外かもしれませんが、提案書が採用されるかどうかは、書き方のテクニック以前に「相手の課題をどれだけ正確に把握できているか」で決まります。相手理解を深める準備工程を整備すれば、構成・デザインは自然と決まり、採用率の高い提案書を効率的に作成できます。
「提案書は作っているが、なかなか採用されない」「作成に時間がかかりすぎる」「相手に刺さるポイントがわからない」——BtoB企業の営業担当者やマーケティング担当者が抱えるこうした悩みは少なくありません。
2025年のBtoBマーケティング調査によると、リード獲得が理想通りでない原因として「施策がターゲットに刺さっていない」が40.9%と最多でした(サンプル数44〜52と限定的なため傾向把握の参考値)。この結果は、提案書にも当てはまります。デザインやテンプレートに注力しても、相手の課題を正確に把握していなければ、提案は刺さらない——これが提案書が採用されない本当の原因です。
この記事で分かること
- 提案書の基本構成要素と各パートの役割
- 提案書作成前に行うべき情報収集と相手理解の方法
- 相手に刺さる提案書の書き方ポイント
- 提案書作成を効率化するテクニック
提案書の基本構成要素と各パートの役割
提案書には、読み手を説得し、次のアクションにつなげるための基本的な構成要素があります。まずは各パートの役割を理解し、過不足のない構成を設計することが重要です。
提案書は、情報を詰め込みすぎると要点が伝わりにくくなります。一般的には、全体で適度な枚数にまとめ、1スライド1メッセージを意識して作成することが推奨されています。
【比較表】提案書の基本構成要素と役割
| 構成要素 | 役割 | 作成のポイント |
|---|---|---|
| 表紙 | 第一印象を決める | 提案のタイトル、提案先企業名、日付を明記 |
| 目次 | 全体像を示す | 提案書が長い場合は必須、短い場合は省略可 |
| 課題提起 | 相手の課題を言語化 | 相手が「わかってくれている」と感じる表現を使う |
| 提案内容 | 課題に対する解決策 | 課題解決視点で構成、自社アピールだけにしない |
| 導入効果 | 採用後のメリット | 可能な範囲で数値化、Before/After形式が効果的 |
| 費用・スケジュール | 意思決定の判断材料 | 概算でも金額感を示す、段階的な選択肢があるとよい |
| 実績・事例 | 信頼性の担保 | 提案先と類似の業界・規模の事例が有効 |
| CTA | 次のアクションへ誘導 | 問い合わせ先、商談予約方法を明記 |
CTA(Call to Action) とは、提案書や資料の最後に設置する「次のアクション」への誘導です。問い合わせ・商談予約など具体的行動を促すパートであり、これがないと提案書を見ても「で、どうすればいいの?」という状態になりかねません。
構成要素ごとの役割と作成ポイント
各構成要素の中でも、特に重要なのは「課題提起」と「提案内容」の2つです。
課題提起では、相手が抱えている課題を正確に言語化します。ここで相手の課題を的確に捉えていれば、「この人は自社のことをわかってくれている」という信頼感が生まれます。逆に、課題認識がズレていると、その後の提案内容がどれだけ優れていても響きません。
提案内容は、課題に対する解決策を示すパートです。よくある失敗は、自社の製品・サービスの機能をひたすらアピールしてしまうこと。重要なのは「相手の課題がどう解決されるか」という視点で構成することです。
提案書作成前に行うべき情報収集と相手理解
提案書の採用率を高めるには、作成前の「情報収集」と「相手理解」が不可欠です。この準備工程を疎かにすると、どれだけデザインや構成を整えても「刺さらない」提案書になってしまいます。
2024年のBtoBマーケティング調査によると、マーケターの68.4%が「受注率管理が必要」と回答しています(回答者190人)。受注につなげるためには、提案の前段階での準備が重要であることを多くの実務担当者が認識しているといえます。
【チェックリスト】提案書作成前の情報収集チェックリスト
- 提案先企業の事業内容・業界動向を調査した
- 提案先企業の直近の決算・プレスリリースを確認した
- 提案先企業が抱える課題を仮説として整理した
- 提案のきっかけ(問い合わせ経緯、紹介元)を確認した
- 担当者の役職・部署・権限範囲を把握した
- 最終意思決定者が誰かを確認した
- 検討に関わる他の部署・担当者を把握した
- 予算感(概算でも)をヒアリングした
- 導入希望時期・スケジュールを確認した
- 競合他社の提案有無を確認した
- 過去の類似導入経験の有無を確認した
- 提案に期待していること(課題・ゴール)をヒアリングした
- 導入の障壁になりそうな懸念点を確認した
- 提案書の提出期限・形式を確認した
ヒアリングで押さえるべき情報
ヒアリングでは、表面的な要望だけでなく「なぜその要望が生まれたのか」という背景まで掘り下げることが重要です。
例えば「コスト削減をしたい」という要望があった場合、なぜコスト削減が必要なのか、どの程度の削減を目指しているのか、削減できた場合に何を実現したいのかまで確認します。背景を理解することで、より本質的な課題解決につながる提案が可能になります。
FABE分析は、提案コンセプトを整理するフレームワークです。Feature(特徴)・Advantage(優位性)・Benefit(便益)・Evidence(証拠)の4つの観点で整理することで、相手にとっての価値を明確に伝えられます。
意思決定者のニーズを把握する
提案先には「情報収集者」と「最終意思決定者」がいることが多く、それぞれのニーズは異なります。
情報収集者(担当者レベル)は、機能や使い勝手、導入のしやすさなど実務的な観点を重視する傾向があります。一方、最終意思決定者(経営層や部門責任者)は、投資対効果やリスク、経営課題への貢献度など、より上位の視点で判断します。
提案書には、両者のニーズに応える内容を盛り込む必要があります。担当者向けの詳細情報だけでなく、意思決定者が判断しやすいサマリーや投資対効果の説明も含めましょう。
相手に刺さる提案書の書き方ポイント
相手理解を踏まえた上で、実際に提案書を書く際のポイントを解説します。重要なのは「自社のアピール」ではなく「相手の課題解決」という視点で構成することです。
PREP法とは、結論→理由→例→まとめの順で構成する文章作成手法です。提案書では、この構成を活用することで論理的な説得力を高められます。
課題解決視点で構成する
提案書でよくある失敗パターンは、自社製品・サービスの機能や強みを並べるだけの構成です。これでは「で、私たちの課題はどう解決されるの?」という疑問が残ります。
課題解決視点で構成するには、以下の流れを意識します。
- 相手の課題を言語化する(課題提起)
- その課題が解決されない場合のリスク・影響を示す
- 課題を解決する方法として自社の提案を位置づける
- 提案を採用した場合の効果・変化を示す
この流れで構成すれば、読み手は「自分たちの課題が解決される」というストーリーとして提案を受け取れます。
数値・データで説得力を高める
提案内容に説得力を持たせるには、可能な範囲で数値やデータを活用します。
ただし、根拠のない数値や、過度に楽観的な予測は逆効果です。数値を使う際は、その根拠(過去実績、他社事例、業界データなど)を明示し、前提条件も併記することが重要です。
導入効果を示す際は、Before/After形式で変化を可視化すると伝わりやすくなります。現状の課題がどう改善されるか、具体的なイメージを持ってもらうことが目的です。
提案書作成を効率化するテクニック
提案書の作成には時間がかかります。2025年のBtoBマーケティング調査では、課題のトップが「人手不足」で34.3%でした。限られたリソースの中で、効率的に提案書を作成するテクニックを紹介します。
テンプレート活用と再利用パーツの管理
提案書を毎回ゼロから作成するのは非効率です。以下のようなパーツを再利用可能な形で管理しておくと、作成時間を短縮できます。
再利用しやすいパーツ例
- 会社紹介スライド
- サービス概要スライド
- 導入実績・事例スライド
- 料金体系スライド
- CTAスライド(問い合わせ先)
これらのパーツをベースに、提案先に合わせて「課題提起」「提案内容」「導入効果」をカスタマイズする形にすれば、効率的に質の高い提案書を作成できます。
また、過去に採用された提案書を分析し、何が刺さったのかを振り返ることも重要です。成功パターンを蓄積することで、チーム全体の提案力向上にもつながります。
まとめ:相手理解が提案書の採用率を決める
提案書の作成において最も重要なのは、デザインや構成テクニックではなく「相手の課題をどれだけ正確に把握できているか」です。
本記事で紹介した内容を振り返ります。
- 提案書の基本構成要素を押さえ、各パートの役割を理解する
- 作成前の情報収集と相手理解を徹底する(チェックリスト活用)
- 自社アピールではなく、課題解決視点で構成する
- テンプレートと再利用パーツで効率化を図る
相手理解を深める準備工程を整備すれば、構成・デザインは自然と決まり、採用率の高い提案書を効率的に作成できます。まずは本記事のチェックリストを活用し、次の提案書作成前に情報収集から始めてみてください。
