なぜ役職別にコンテンツを設計する必要があるのか
意外かもしれませんが、BtoBマーケティングで成果を出すには、経営層・管理職・担当者それぞれの関心事を理解し、役職別にコンテンツを設計・出し分けることが重要です。
BtoBの購買においては、DMU(Decision Making Unit) と呼ばれる意思決定単位が存在します。DMUとは、BtoB購買における意思決定単位のことで、複数の役職・部門が関与し、平均6〜10名で構成されるとされています。つまり、1つの案件に対して複数の意思決定者が関わり、それぞれが異なる視点で検討を行うのです。
コンテンツを作っているのに商談化率が上がらない、CV率が伸び悩んでいるという課題を抱えている場合、役職ごとの関心事の違いを意識できていないことが原因かもしれません。
この記事で分かること
- 経営層・管理職・担当者の関心事と意思決定における役割の違い
- 役職別コンテンツ設計でよくある失敗パターンとその回避策
- 役職別の関心事マトリクス表を使った設計の整理方法
- すぐに使える役職別コンテンツ設計チェックリスト
役職別の関心事と意思決定における役割の違い
BtoB購買では、役職によって関心事と意思決定における役割が明確に異なります。DMUでは、発案者(主に担当者)、決定者(主に経営層)、影響者(主に管理職)といった役割分担があり、それぞれが異なる観点から検討を行います。
BtoB購買の最終局面における調査によると、全体評価上位は「品質(72%)」「信頼性(68%)」「コスト(67%)」となっており、意思決定者(経営層相当)は価格よりもリスク軽減・確実性を優先する傾向があります。
経営層(決定者)の関心事
経営層は最終的な購買決定を行う役割を担います。前述の調査結果が示すように、経営層は価格よりもリスク軽減・確実性を優先する傾向があります。
経営層が重視するポイントは以下の通りです。
- 投資対効果(ROI): 導入によってどの程度のリターンが得られるか
- リスク軽減: 導入後に問題が発生した場合のサポート体制
- 戦略的価値: 自社の経営戦略との整合性
- 競合との差別化: 競合他社との比較優位性
経営層向けのコンテンツでは、具体的なROI試算や導入後サポート品質、業界での実績などを訴求することが効果的です。
管理職(影響者)の関心事
管理職は経営層と担当者の橋渡し役として、意思決定プロセスに影響を与えます。管理職は実現可能性やチームへの影響を重視する傾向があります。
管理職が重視するポイントは以下の通りです。
- チーム・部門への影響: 導入によるチームの業務変更や負担
- 導入負荷: 導入時の工数やリソース確保
- 運用体制: 導入後の運用に必要な体制や人員
- 部門間調整: 他部門との連携や調整の必要性
管理職向けのコンテンツでは、導入ステップの明確化や他社での運用体制事例、チームへのメリットなどを訴求することが効果的です。
担当者(発案者)の関心事
担当者は日々の業務で課題を感じ、解決策を探す発案者の役割を担います。調査によると、BtoBマーケティング担当者の意思決定で客観的データ・調査結果を重視する割合は「非常に重視(27.6%)」「ある程度重視(57.9%)」の合計85.5%に達しています。
担当者が重視するポイントは以下の通りです。
- 機能性: 具体的にどのような機能があるか
- 実務改善: 日々の業務がどう改善されるか
- 具体的な使い方: 実際の操作方法や活用シーン
- 導入事例: 他社での具体的な活用事例
担当者向けのコンテンツでは、具体的な機能説明、導入事例、実務での活用方法など、実用的な情報を提供することが効果的です。
役職別コンテンツ設計のよくある失敗と回避策
よくある失敗パターンとして、全役職に同じコンテンツを一律配信し、「誰に向けたコンテンツか」が曖昧なまま運用してしまうケースがあります。この方法では成果が出ません。
「とりあえず全員に同じ情報を届ければ、誰かには刺さるだろう」という考え方は誤りです。経営層にとって重要な投資ROIの話は担当者には響きにくく、担当者が求める機能の詳細説明は経営層には重要度が低いのです。
回避策として、以下の点を意識してください。
- コンテンツ作成前に「誰に向けたコンテンツか」を明確にする
- 役職ごとに異なる訴求ポイントを設定する
- 同じテーマでも役職別に複数のコンテンツを用意する
- 配信チャネルや導線も役職に合わせて設計する
役職別 関心事マトリクス表で設計を整理する
役職別コンテンツ設計を効率的に進めるには、関心事と刺さるコンテンツを一覧で整理することが有効です。以下のマトリクス表を参考に、自社のコンテンツを整理してみてください。
【比較表】役職別 関心事・刺さるコンテンツ マトリクス表
| 役職 | 主な関心事 | 刺さるコンテンツ例 | 訴求ポイント |
|---|---|---|---|
| 経営層(決定者) | 投資ROI、リスク軽減、戦略的価値 | 経営者向けホワイトペーパー、ROI試算シート、導入後サポート体制資料 | 品質・信頼性・コスト効果 |
| 管理職(影響者) | チームへの影響、導入負荷、運用体制 | 導入ステップガイド、運用体制事例、部門別活用事例 | 実現可能性・運用のしやすさ |
| 担当者(発案者) | 機能性、実務改善、具体的な使い方 | 機能比較表、操作デモ動画、導入事例詳細 | データ・調査結果・実務メリット |
| 情報システム部門 | セキュリティ、システム連携、保守性 | 技術仕様書、セキュリティチェックシート、API連携ガイド | 技術的信頼性・既存システムとの親和性 |
| 財務・経理部門 | 予算、費用対効果、契約条件 | 価格表、TCO(総所有コスト)比較、契約条件一覧 | コスト構造・投資回収の見通し |
このマトリクス表を活用して、自社で作成すべきコンテンツと、各コンテンツの訴求ポイントを整理してみてください。
役職別コンテンツを設計・運用するための実践ステップ
役職別コンテンツを設計し、一貫して運用するためには、体系的なアプローチが必要です。ABM(Account Based Marketing) とは、特定の企業・アカウントをターゲットに絞り、カスタマイズされたマーケティングを行う手法です。
役職を絞ったターゲティングで成果を上げた事例も報告されています。ある事例では、ABMコンテンツ施策で見込み顧客が2倍に増加したとされています(ただし企業の自己申告データであり、第三者検証はされていません)。
MQL(Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング活動で獲得し、営業フォローの対象として認定されたリードを指します。役職別コンテンツ設計によって、より質の高いMQLを獲得することが期待できます。
【チェックリスト】役職別コンテンツ設計チェックリスト
- ターゲットとする役職を明確に定義している
- 各役職の主な関心事を言語化している
- 各役職が意思決定で重視するポイントを整理している
- 役職ごとに訴求ポイントを変えたコンテンツを用意している
- 経営層向けに投資ROIやリスク軽減を訴求するコンテンツがある
- 管理職向けに導入負荷や運用体制を説明するコンテンツがある
- 担当者向けに機能詳細や活用事例を提供するコンテンツがある
- 各コンテンツで「誰に向けたものか」が明確になっている
- 役職に応じた配信チャネルを選定している
- コンテンツ間の導線設計ができている
- 役職別の反応を測定する仕組みがある
- 定期的にコンテンツの効果を振り返っている
- 役職別の関心事マトリクス表を作成・更新している
- チーム内でターゲット役職の認識が統一されている
- 営業チームと役職別アプローチについて連携できている
まとめ:役職別コンテンツ設計で成果を出すために
本記事では、BtoBマーケティングにおける役職別コンテンツ設計の重要性と具体的な方法を解説しました。
主なポイントを整理します。
- BtoB購買のDMUでは平均6〜10名が関与し、役職別に関心事が異なる
- 経営層は価格よりもリスク軽減・確実性を優先し、品質(72%)・信頼性(68%)・コスト(67%)を重視する
- 管理職はチームへの影響や導入負荷、運用体制を重視する
- 担当者は客観的データを重視し(85.5%が重視)、機能性や実務改善を求める
- 全役職に同じコンテンツを一律配信する方法では成果が出にくい
次のアクションとして、以下から始めてみてください。
- 自社のターゲット企業のDMU構成を把握する
- 役職別の関心事マトリクス表を作成する
- 既存コンテンツを役職別に分類し、不足しているものを特定する
- チェックリストを使って設計状況を確認する
BtoBマーケティングで成果を出すには、経営層・管理職・担当者それぞれの関心事を理解し、役職別にコンテンツを設計・出し分けることが重要です。役職別の視点を取り入れることで、より質の高いリード獲得と商談化率の向上につなげることができます。
