BtoB意思決定の特徴を理解しないとコンテンツが刺さらない理由
意外かもしれませんが、BtoBの意思決定では「複数の関与者がいる」という理解だけでなく、各役割(現場担当者・検討推進者・決裁者)が求める情報の違いを把握し、フェーズごとに適切なコンテンツを設計することで、商談化率・受注率を高められます。
DMU(Decision Making Unit) とは、BtoB取引における購買や意思決定プロセスに複数関与する関係者の総称です。決定者・影響者・使用者などを含み、各役割が求める情報は大きく異なります。
ある民間調査によると、BtoB購買の関与人数は低価格帯(300万円未満)で5.6人、中価格帯で14.4人、高価格帯で18.3人にのぼります(インターネット調査のため回答者の自己申告に依存)。さらに、購買担当者の85%が営業面談前に候補を絞り込み済みというデータもあり、Web上での早期情報提供がますます重要になっています。
この記事で分かること
- BtoB意思決定の基本構造とBtoCとの違い
- DMUの把握方法とチェックリスト
- 決裁者だけでなく現場・検討推進者へアプローチする重要性
- 役割別・フェーズ別のコンテンツ設計表
「コンテンツは作っているが商談につながらない」という課題を抱えている場合、各関与者に刺さるコンテンツ設計ができていない可能性があります。本記事では、BtoB意思決定の特徴を踏まえた実践的なアプローチを解説します。
BtoB意思決定の基本構造とBtoCとの違い
BtoB意思決定は、BtoCと比較して「関与者の多さ」「検討期間の長さ」「論理的・組織的な判断プロセス」という特徴があります。
先述の調査では、高価格帯の商材において54%の企業が検討から契約まで半年以上を要しています。また、発注・導入した商材の81.4%が比較対象を3つ以内に絞り込んでおり、これは2022年の68.1%から上昇しています。早期に比較検討の候補に入ることがより重要になっていると言えます。
BtoCとBtoBの意思決定の違いは以下の通りです。
| 観点 | BtoC | BtoB |
|---|---|---|
| 意思決定者 | 個人(本人) | 複数(DMU) |
| 判断基準 | 感情・好み重視 | 論理・費用対効果重視 |
| 検討期間 | 短期(即日〜数週間) | 長期(数ヶ月〜1年以上) |
| 購買単価 | 比較的低額 | 高額になりやすい |
Buying Centerは、Kotler/Kellerの定義に基づく購買意思決定グループで、部門ごとのミッションと役割を紐づけて分析する概念です。DMUとほぼ同義で使われることが多いです。
意思決定に時間がかかる理由と稟議プロセス
稟議プロセスとは、日本企業特有の社内承認手続きで、複数階層の承認を経て最終決裁に至る意思決定方式です。
日本企業では「失敗回避文化」が根強く、新しいサービスや製品の導入には慎重な姿勢が取られることが多いです。そのため、導入前に製品・サービスの有効性を検証するPoC(概念実証) 期間が長期化する傾向があります。
稟議を通すためには、現場担当者だけでなく、検討推進者(上長や関係部門)、最終決裁者それぞれが納得できる情報を準備する必要があります。
決裁者だけにアプローチしても商談が進まない理由
「決裁者にアプローチすれば決まる」という考え方は誤りです。これはよくある失敗パターンであり、現場担当者や検討推進者へのコンテンツを軽視した結果、検討が途中で止まってしまうケースが多く見られます。
KBF(Key Buying Factor) とは、購買決定における主要な評価基準です。各DMUの役割によって重視する要素が異なるため、決裁者だけに情報を提供しても、現場の支持が得られなければ稟議は通りません。
ある調査によると、BtoB企業の80%以上が導入事例の意思決定への影響を実感しており、意思決定者の46.1%が「非常に影響する」と回答しています。導入事例は現場担当者が情報収集する段階で特に重要な役割を果たします。
また、中小企業(売上1億〜50億円未満)の選定重視事項は「課題解決」が33.8%、「予算内」が30.0%、「提案マッチ」が28.0%となっています。特に現場視点では「課題解決」が最も重視されており、現場の課題に寄り添ったコンテンツが不可欠です。
決裁者だけに集中してアプローチしても、現場担当者が「この製品で自分たちの課題が解決できる」と確信できなければ、社内での推進力が生まれません。結果として、検討が途中で止まってしまうのです。
DMUを把握して役割別にアプローチする方法
効果的なBtoBマーケティングを行うには、まずDMUの構成を正確に把握することが重要です。以下のチェックリストを活用して、ターゲット企業のDMUを整理してみてください。
【チェックリスト】DMU把握チェックリスト
- 最終決裁者は誰か(役職・部門)
- 検討推進者(キーマン)は誰か
- 現場で実際に使用するユーザーは誰か
- 予算管理・承認は誰が行うか
- 技術的な評価・検証を行う担当者は誰か
- 法務・コンプライアンス確認が必要か
- 情報システム部門の承認が必要か
- 外部コンサルタントやアドバイザーの関与はあるか
- 各関与者の課題・関心事は何か
- 各関与者が重視するKBFは何か
- 過去の類似導入で誰が反対したか
- 稟議の承認フローは何階層か
- PoC・トライアルの要否と担当者は誰か
- 導入後のサポート窓口は誰が担当するか
- 競合製品を推している関与者はいるか
価格帯によって関与者数は大きく異なります。低価格帯(300万円未満)で5.6人、中価格帯で14.4人、高価格帯で18.3人という調査結果からも、高額商材ほど多くの関与者への対応が必要になることがわかります。
ある調査では、BtoBマーケ担当者の85.5%が客観的データを意思決定で重視すると回答しています。各役割が求める情報は異なりますが、いずれの役割に対しても「客観的なデータ」「根拠のある情報」が重要視される傾向にあります。
- 経営層・決裁者:ROI、リスク低減、導入後の安心感
- 検討推進者:社内説得材料、比較検討資料、他社事例
- 現場担当者:課題解決、使いやすさ、サポート体制
購買フェーズ別のコンテンツ設計と実践
購買担当者の85%が営業面談前に候補を絞り込み済みというデータを踏まえると、営業面談前の段階で適切なコンテンツを届けることが極めて重要です。以下の表を参考に、役割別・フェーズ別のコンテンツを設計してください。
【比較表】意思決定者の役割別コンテンツ設計表
| 役割 | 求める情報 | 効果的なコンテンツ | 提供タイミング |
|---|---|---|---|
| 現場担当者 | 課題解決方法、使いやすさ | ハウツー記事、製品デモ動画、無料トライアル | 認知〜興味フェーズ |
| 検討推進者 | 社内説得材料、競合比較 | 比較資料、ROI試算シート、ホワイトペーパー | 興味〜比較検討フェーズ |
| 技術担当者 | 技術仕様、セキュリティ | 技術資料、API仕様書、セキュリティチェックシート | 比較検討フェーズ |
| 経営層・決裁者 | ROI、リスク、実績 | 経営者向け事例、導入効果レポート、業界動向 | 比較検討〜決定フェーズ |
| 情報システム部門 | 既存システム連携、運用負荷 | 連携仕様書、導入事例(同業種) | 比較検討フェーズ |
各役割が異なるフェーズで異なる情報を求めているため、「誰に・何を・いつ届けるか」を明確にしたコンテンツ設計が必要です。
導入事例の効果的な活用方法
ある調査によると、BtoB企業の80%以上が導入事例の意思決定への影響を実感しており、意思決定者の46.1%が「非常に影響する」と回答しています(調査対象は限定的なため一般化には注意が必要です)。
導入事例を効果的に活用するポイントは以下の通りです。
- 同業種・同規模の事例を優先:自社に近い事例ほど説得力が高まる
- 定量的な効果を明示:導入前後の比較数値があると説得力が増す
- 課題と解決策を具体的に:導入企業が抱えていた課題と解決プロセスを詳細に記載
- 複数の役割向けに用意:現場向け、経営者向けなど複数バージョンを準備
導入事例は、現場担当者の情報収集段階から、検討推進者の社内説得、決裁者の最終判断まで、あらゆるフェーズで活用できる重要なコンテンツです。
まとめ|役割別コンテンツ設計で商談化率を高める
BtoB意思決定の特徴を理解し、適切なコンテンツ設計を行うことで、商談化率を高めることができます。
本記事のポイント
- DMUの構成を把握する:低価格帯で5.6人、高価格帯で18.3人と、価格帯によって関与者数が大きく異なる
- 決裁者だけにアプローチしない:現場担当者や検討推進者の支持がなければ稟議は通らない
- 役割別・フェーズ別にコンテンツを設計する:誰に・何を・いつ届けるかを明確にする
- 導入事例を効果的に活用する:80%以上の企業が意思決定への影響を実感
まずは本記事で紹介したDMU把握チェックリストを活用して、ターゲット企業の意思決定構造を整理することから始めてみてください。その上で、役割別コンテンツ設計表を参考に、各関与者に刺さるコンテンツを準備していくことが重要です。
各役割(現場担当者・検討推進者・決裁者)が求める情報の違いを把握し、フェーズごとに適切なコンテンツを設計することで、商談化率・受注率を高められます。「誰に・何を・いつ届けるか」を意識したコンテンツ運用を実践してください。
